4月19日(火)13:00

 昼休み。今日も四月一日くんは唯一仲の良い例の男子とご飯を食べている。そして私は今日もどこのグループにも入れず、一人で母の手作り弁当を食べている。このクラスは意外とノリがいいし、私もそれなりに話せる相手は増えてきたのだが、やはり一緒にお昼を食べる相手となると話は別なのだ。小中学校のときのように自分の席で食べなければいけないわけではないし、教室で食べようが中庭で食べようがどこに行こうが自由ともなれば、だいたいの人間は友だちと食べる。私にだって友だちがいないわけではないけれど、別のクラスになってしまった友だちのところにわざわざ行くのはだいぶハードルが高い。そしてこのクラスで私は完全にグループに入り損ねた。


 まあ、私はもともとグループ外にいるような人間なので、この状況は普通といえば普通なのだけれど。いや、別にいじめられているとかではなくて。単純にスクールカーストに感心が無いというだけだ。前のクラスで特別仲の良い友だちができたのは本当に偶然のことだった。相手の方が私を気に入ってくれて、積極的に絡んできてくれたのだ。そしてその子もどちらかというとグループに入る感じではなかったので、似たもの同士カースト外で仲良くやっていたというわけである。




 学校とは閉鎖された空間であり、クラスには一つの社会ができあがる。クラスメイトの間で自然とグループに分かれ、上位下位といった序列が無意識にできあがっていく。幸いこのクラスは上位下位にそんなに差は無く、私としてもこのクラスは当たりだと思っているが、それでもグループが存在しないということはあり得ない。そして残念ながら、今回は去年のように私と同じ属性の女の子はクラスにいないようだ。これは一年間ぼっちかもしれない。


 でもまあいいか。昼ご飯を一緒に食べる相手がいないというだけで、クラスからハブられているというわけでもないし。グループに入らないからって別に、いじめとかも全く受けたことないし。しかしどうでもいいけどさっきから、隣でご飯を食べている男子二人は何でこっちをちらちら見ているんだろうか。別に私がぼっちだからって今まで気にしてなかったじゃん。どうしたの。何か用なの。




「ほら四月一日。向こうもこっちを気にしてる今がチャンスだぞ」

「いや、でも」

「いいからさっさと話しかけろって」

「いや、でも」

「毎日毎日話したい話したいって、ずっと聞いてやってる俺の身にもなれよ」

「いや、でも」




 ちょ、やめて。わざと聞こえるように話さないで。何なの。どうしろっていうの?






 隣の席の四月一日くんはどうやら私に話しかけたいらしい。

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