謎の襲撃

 ゲルガンドの率いる皇軍は、東方の小国ルードウの領内に入った。


 ルードウの王都は、湧き水を中心とする大規模な集落といった程度の街だが、近年帝国領に入ったことで交易が盛んとなり、徐々に繁栄しかけているところだった。


 そこに蛮族が目を付け、押し寄せて来てはは目ぼしい金品を強奪していく。ルードウの国主が「どうか帝国軍じきじきに討伐していただきたい」と訴え、それが遠征のきっかけとなったのだった。


 ここルードウの外れの景色は、ティードリーアにとっては奇観としかいいようがない。太陽の光の強さが尋常ではなく、天空はくっきりと青い。その紺碧と言ってよいほどの青に挑むかのように、強い陽射しの照り付く大地にある色といったら赤一色なのだ。


 見渡す限り、鉄分を多く含む岩場が広がっており、草木の一本も生えていない。ところどころに風に蝕まれて頭がテーブルのように平らになった、山ほどの巨岩がある。隊列はその岩山を迂回しながら王都を目指している。


 赤い大地を一歩踏みしめるたびに足の裏で、小さな土くれがぼろぼろと崩れていく。そんな初めての感覚に、ティードリーアは自分が本当に見知らぬ土地に来たことを実感した。


 ルードウ領内に入ったため、皇軍はやや警戒を緩めながら進んでいた。ゲルガンド元帥を総指揮とする兵の総勢約一万。


 まずゲルガンドが上級将軍として六千の兵を率いて先頭に立つ。内、半数が騎馬でこれを前にして、半数の歩兵が後に続く。


 その後を医療隊や輜重隊、そしてジガリを隊長とする訓練兵部隊が徒歩で従う。後ろを守るのは、ガイディという名の経験の浅い中級将軍が率いる四千の軍勢だ。


 ガイディの軍列は、先頭のゲルガンド軍とは逆に、半数の歩兵が先で半数の騎馬隊がその後につく。しかしこの騎馬隊は、別に後方からの敵襲に備えているのではない。敵との戦闘がまだ先の話である今、彼らは皇軍の最後尾にあって、皇軍から脱走を図る者を捉えるためにいるのだ。


 訓練隊の隊長ジガリは物思いに耽っていた。彼は隊長として騎乗を許されており、徒歩で従う訓練兵たちを、その隣で馬上から見守りながら進む。


 彼は「土の国」出身だが、鼻はそこそこ高くそれなりに彫が深いが、目が些か細めで、そのためいつも軽く微笑んでいるように見える。実際彼は、二十歳過ぎの若者と思えないほど思慮深く温厚な性質で、その顔立ちは真面目で善良な人柄に似合ったものだと言える。


 とはいえ彼は一兵卒から叩き上げで、中級将軍の配下で千人隊長を勤めるに至った人物だ。千人隊長が百人隊長格の訓練部隊長になるのは、降格のように見える。けれども、千人隊長が次に下級将軍に昇進するのに相応しい力量を持っているかどうか、それを量るために一度訓練部隊長に任じられるのが慣例だった。


 つまりジガリは好人物であるだけでなく、昇進ルートにのったなかなか有能な人材である。そして、有能な者の常として、手の空いている時間は思索に宛てているのだった。


 彼は首を捻りながら考えていた。蛮族が攻撃するのは、ルードウの中でも、湧き水のお陰で栄えている王都一帯に限られる。そこに差し掛かるのにあと三日は掛かるだろう。だから、王都から距離のあるここで敵に出くわすことはありえない。それは分かる。が、しかし……。



 ――それでも、昨夜の幕僚会議は何かがおかしくなかったか……。


 そんなことを思いながら、ジガリは、いつの間にか自分が一人の訓練兵を見つめていることに気付いた。小麦色の肌に艶やかな群青の髪、そして見るものを惹き付ける緑宝石のような大きな瞳、この間十五歳になったばかりの少女。ジガリは軽く首を振って視線をそらした。


 ――いけない。昨夜の幕僚会議の時も思ったじゃないか。彼女に関心を向けてはならないのだ、と。



 この前夜、ジガリは、将軍とその副将二名、高級軍吏、そして医療・輜重・訓練兵の特別部隊の隊長を出席者とする会議に参加し、発言を求めた。


「今回の訓練部隊ですが……。習熟度から見ますと、訓練兵だけで一隊となって行軍するのは、敵が襲って来た時に不安があります。ですから、彼らを各隊の中に分散させていただけないでしょうか」


 これに強硬に反対したのが軍吏のホイガだった。


「責任逃れをするつもりですかな? ジガリ隊長。敵が来ても闘えるように鍛えるのが貴方の責任でしょう?」

「責任、ですか」


 相手を不快にさせることで機先を制したつもりのホイガに対して、ジガリはあくまで冷静さを保ち、思うところを述べた。


「確かに、新参兵の訓練が現時点で遅れているのは私の責任です。それは認めますし、責任を逃れるつもりも毛頭ありません。私はただ、今の時点で訓練兵の命を守る責任を果たすために、暫くは隊列の変更を願い出ているだけです」

「黙れッ」


 ホイガの怒声に、他の出席者が意外そうな顔を向けた。ホイガが相手を高圧的に怒鳴りつけることは珍しいことではない。ただ、この陰険な軍吏はたいてい、その前に嫌味と皮肉を駆使してさんざん相手をなぶった後、最後の仕上げに怒鳴りつけるのだ。


 いわば怒鳴り声に至るまで全て、ホイガの繰り出す技巧であり、怒鳴っている最中でも、その瞳は冷ややかな光を湛え、自分の攻撃の効果を観測しているようなところがあるのである。


 ところが今回は、どうもホイガの中の何かが暴発でもしたかのようだ。後に起こった変事を考えれば、この時のホイガの度を失った怒声には焦りや苛立ちが多分に含まれていたのかもしれない。


「黙れ黙れ。隊列を変更しろなどと……。己の指導力不足を妙な正論にすり替えよって……」

「ホイガ殿」


 興奮のあまり立ち上がりそうなホイガをゲルガンドは制した。


 部下であるにも関わらず「殿」を付けて呼ぶのは、ホイガがただの軍吏ではなく、皇帝の推薦状を携えてきたからである。つまり、彼は皇帝から直々に下賜された人間なのだ。


 従ってホイガはゲルガンドの私生活を監視するための卑しい間諜であると分かっていても、ゲルガンドはそれなりに丁寧に扱っている。


「ホイガ殿。訓練兵が未だ十分な戦闘力を身に着けていない場合には、訓練兵を各隊に分散させて熟練兵に守らせることもある。必ずしも珍しいことではない」


 ホイガはゲルガンドを睨め付けた。


「今お話しているのは前例のことではございません。今回のこの行軍について、です。一体何故訓練が遅れたというのです? ジガリ隊長」

「現時点では遅れているのは確かですが、訓練兵はこのところ尻上がりに力をつけてきております。今、短期的に見て遅れてはおりますけれども、全体として、実戦に臨むまでには遅れは取り戻せると思っております」

「答えになっていませんぞ。ジガリ殿。私が尋ねているのは、今、何故遅れているのか、です」。

「それは……」

「ホイガ殿」


 ゲルガンドがとりなすように言った。


「細かい訓練計画にいちいち合致しなくても、敵と交戦するまでに戦闘力が備わっていればいいのだ。個々の課題を何時クリアしようが、それは訓練隊長の裁量の内だ」


「ほほーう」


 彼特有のねちっこい節回しと共に彼はジガリに再び目を向ける。


「では言い方を変えましょう。一体訓練隊長の裁量はどのように用いられているのです?」

「どのように、とは?」

「今回、若くて美しい女が訓練兵として入隊しましたな」

「……何を仰りたいのか……」

「ジガリ隊長はその女のために訓練を甘くしているのではないですかな? その女は少しばかり見栄えする上に、ゲルガンド将軍の義理の娘にあたる。そもそもジガリ隊長はゲルガンド将軍に取り入って、次は下級将軍になろうかという今の地位に昇ってきたのだから、その女に阿ろうとしてもおかしくはない」

「失礼なっ」


 ジガリはつい大声を上げてしまったが、すぐに落ち着いた。相手は皇帝直々の間諜であり、そして今やティードが話題になっている。ここは自分だけでなく、ゲルガンドやティードの立場も考慮に入れて自重しなければならない。


「私がティードに甘いなどとということは絶対にありません」


 ジガリは憤然と言った。あの美しい元王女は一兵卒となり、文字通り地を這うような厳しい訓練を、泣き言も言わず誇りを持って耐え抜こうとしている。その姿にジガリは心打たれており、手加減などする方が彼女に対して失礼だと思っていたのだ。


 ゲルガンドが厳しい顔で言い添えた。


「私からも言っておく。ティードリーア、いやティードが私の娘だからといって、特別扱いなどしないで欲しいと、かねがねジガリ隊長には言ってあるし、実際隊長はそうしてくれている」


 そこへ唐突に、大きいだけで重みの欠ける声が座に放り込まれた。


「とにかく、行軍の隊列を変えることはないんじゃないですか?」


 その声は中級将軍ガイディのものだった。


「なぜそういうことになるのです、ガイディ将軍」


 ジガリが問うと、ガイディはけろっとした顔で答えた。


「だって、先ほどから聞いていると、ジガリ隊長の主張は全て『蛮族の襲来があったとしたら』ということを前提とされていますよね。ここはまだルードウの領内に入ったばかりで、襲撃されている王都からずっと離れています。だからルードウ近辺まで、この編隊でいいんじゃないですかね」


 ガイディは廷臣貴族の三男坊だった。家を継ぐわけでもない彼を軍に呼び入れ、中級将軍にしてやったのがホイガだった。この手の貴族上がりにしては彼は有能な部類に入る。しかしながら、未だ武人ごっこが好きな貴族という雰囲気も抜けていないとジガリは感じていた。


 ゲルガンドは当初、ティードリーアを同行させる東征軍を、親ゲルガンド派ばかりで固めてしまおうと思っていた。けれども、それはゲルガンドの身びいきに過ぎるというホイガの主張をゲルガンドも受け入れざるを得なかった。それでホイガ派のガイディを連れてきたのだった。


 親ホイガ派であり、主張するところはホイガと同じとはいえ、ガイディの言い分はホイガより筋が通っていた。それに、先ほどティードリーアの名前がホイガによって挙げられた以上、ゲルガンドやジガリが隊列の変更に固執し続けるのも憚られる。


 ゲルガンドが結論を下した。


「ではルードウの王城に入るまで隊列はこれまでどおりに。訓練兵は纏まって一隊として、医療隊・輜重隊の後ろを行く。ただ、敵が出没しそうになれば、訓令兵の熟練度に応じて私が編成を変える。これは指揮官である私の権限でもある」

「そう、それでよろしいのです。ゲルガンド将軍」


 ホイガが不自然なほど満足気に賛意を示した。


「王城に着くまでに、何かが起こったとしても、私が後方から何とかしてみせますよ」


 ガイディが如才なくそう付け加えた。


 ジガリはその時、なにか釈然としないものを感じた。しかし、確かに王城までなら従来の隊列でも何とかなるだろう、と自分を納得させてその場を退出してきたのだった。



 このようにジガリが昨夜の会議を思い出していたとき、彼の視野の左隅に小さな土煙が現れた。


 ――?


 下級将軍に昇格する日も近いだろうと噂されるほど、ジガリは有能な男だった。しかしながら、この土煙が、敵が猛烈な勢いで近付いていることを示していると思い至るまで、数瞬の時を要した。


 なぜならば、皇軍一万余人の長い隊列は、岩山を迂回しようとしているところであり、主力のゲルガンド勢は巨岩の向こうに回りこんでしまっていたからである。本来ここは敵のいる場所でないはずであったし、もし敵が現れるにしても司令官であるゲルガンド将軍を狙うはずであった。


 怪訝に思うジガリをよそに、荒涼とした赤い大地の中、左方向から近付いて来る土煙はどんどん大きくなる。今や、その赤い砂塵の中に、東の蛮族の姿をはっきりと見て取ることができる。この地方独特の、斑のある小柄な馬にまたがり、ある者は大きな刀を振りかざし、ある者は弓矢をこちらに向けてつがえている。


「敵だっ! 敵襲だっ!」


 ジガリは配下の訓練兵全員に聞こえるように、大声で、しかも明確な発声で叫んだ。訓練兵たちの顔に緊張が一瞬で走り、全員の顔が一様に強張る。


 ここですかさず次の指令を出さねばならない、ということはジガリにも分かっていた。早く、出来るだけ速やかに、この戦に不慣れな者達の動揺を鎮めてやらなくては。緊張が怯みや怯えに変わる、その前に――。


 しかしジガリは次の判断を下せない。


 ――これは……?


 敵の攻撃はあまりに奇妙なのだ。まず、皇軍全体を率いるゲルガンド将軍が右の岩陰に入ってしまった後で、左手より攻撃を仕掛けて来るのが解せない。ゲルガンド将軍を狙う時機を逸したのか? しかしそれならば出直せばいいだろう。


 それともわが軍の輜重隊を狙っているのだろうか。確かに、こうも痩せた土地ではなんの作物も実らない。ルードウ王国は、この赤い土地から取れる砂鉄を元に、帝国配下の各国と交流して栄えている。だから蛮族はルードウに襲い掛かってあらゆる物を奪う。今回も、皇軍の軍需品を狙っているのだろうか? しかし、軍人用の物資など、長旅に耐えることを第一の目的とするもので、味も素っ気もないものだ。黒パンより美味いものは、ルードウの王都にこそ山ほどあるだろうに。


 ひょっとしてガイディ将軍を仕留めようとしているのだろうか? 先頭を行く武名高いゲルガンド将軍を討ち取ることは困難でも、後方の格下の将軍なら勝算が見込める。そう敵は思ったのか? そうして皇軍の戦力を、王都に至るまでに削いでおこうとしているのだろうか?


 ジガリはどんどん近付いて来る敵を凝視する。相手の攻撃の意図によって、彼の発する命令は正反対のものになる。前方に全力疾走してゲルガンド軍に庇って貰うか、それとも、後方に駆けてガイディの軍に逃げ込むか。


 能う限り早く、敵の動きを見極めなければ――。ジガリは厳しい顔つきで、敵のどんな動向をも見逃すまいと、食い入るように見つめる。が、しかし――。


 ――こ、これは。


 近付いて来る敵軍の幅は狭い。せいぜい五騎が並ぶくらいだ。しかしその後ろに多数の兵士が延々と続いているだろうことは、彼らが巻き上げる凄まじい砂塵の量で分かる。この敵の軍勢は、まるで鋭い錐のように、皇軍の隊列の一点を狙っているのだ。そう、よりにもよってジガリの訓練兵部隊を!


 ジガリの驚愕にお構いなしに、敵はもうその表情が見分けられるまでに接近してきた。彼らの顔に緊迫した様子は見られず、動物を狩るかのような残忍な余裕を浮かべているのだ。


 ――この部隊が訓練部隊と知っての襲撃か。


 何故だ……? しかしこれ以上考える前にジガリは叫んだ。


「逃げろっ!」


 ジガリは馬上から声を限りに叫んだ。訓練兵の一人と目が合う。その目は縋るように「一体どこに逃げればいいのか」とジガリに問うていた。


「逃げろっ」


 再びジガリは叫んだ。


「どこでもいいっ! 逃げるんだっ! とにかく逃げおおせろ! 生きるんだっ!」


 最後の命令を放った後ジガリは、訓練兵たちを背に、馬と共に敵の来る方向に躍り出た。今、まさに襲いかかろうとする蛮族たちの、その目の前に立ちはだかったのだ。彼の背後で訓練兵たちが、土を蹴って駆け出していく気配を彼は感じる。


「よし」


 後はガイディ、そして少し遅れるかもしれないがゲルガンドの援軍を待つだけだ。それまで自分に出来る限り、この蛮族たちの侵攻を食い止めなければ。


 一騎の蛮族が、大刀を振り上げながらジガリに向かってくる。


「うおおっ」


 野太い掛け声と共に、異国風の反りの入った刀の切っ先が、ジガリの眉間めがけて降ってきた。ジガリは帝国式剣の先端に左手をあて、両手で剣を捧げ持つようにして、相手の一撃を受け止める。そして次の瞬間、柄を握っている右手に力を込めて、勢い良く蛮刀をなぎ払った。


 蛮族はジガリに払いのけられ、馬上からずり落ちそうになったが、何とか踏ん張り、姿勢を立て直しがてら、今度は刀を下から斜め上に払ってジガリの胴を斬ろうとした。


 ジガリは馬を引かせてそれを避けた。少し相手の刃が胴に掠りはしたが、帝国式の甲冑はそれくらいはねつける。


 ――これなら。


 ジガリは馬の首を返した。蛮族は自分で振り回した大刀の重みで、またもや馬上で姿勢を崩している。そこをジガリが強く、鋭く相手の腹を突いた。聞き知った通り、蛮族の皮甲はたいした厚みはなく、ジガリの剣を握った手に肉を貫いた感触が伝わってくる。事実ジガリが剣を引き抜くと、その蛮族は傷口から血を噴出して、馬上から崩れ落ちた。


 一戦終えて、ふうと息を吐いてジガリは次の相手が現れるのを待った。しかしジガリの前に敵は現れない。何故だ? ジガリは後ろを見た。


 蛮族たちはジガリにも、ガイディ軍にも、輜重にも、ましてやゲルガンド軍にも襲い掛かろうとしない。彼らはただ、逃げ惑う訓練兵だけを追い回している。


 ――早く、私の訓練兵たちを助けてやらねば。そうだ、ガイディ軍は何をしている?


 ジガリがガイディ軍の方に目を向ける。ガイディ軍には殆ど動きが見られなかった。少なくともジガリの目にはそう見えた。味方であるはずの軍勢は、申し訳程度に騎馬隊が前進してくるが、蛮族たちがそれに応じて矢を射掛けると、さっさと引っ込んでしまう。


 ――ふがいない。


 ジガリは内心で舌打ちをした。


 しかし。次の瞬間。ある疑念が浮かんできた。もしや――ひょっとしたらガイディは我々を助けるつもりはないのではないだろうか。彼は、ガイディの背後にあのホイガがいること思い出した。


 ――もしかしたら。


 自分の思いついた考えに、彼は慄然とした。もしかしたら、この襲撃は最初から仕組まれていたのではないだろうか? ホイガは敵と通じて、訓練部隊を襲うよう密約を交わしているのではないだろうか。この貧しい蛮族たちなら、ちょっとした品物で簡単に釣ることができるだろう。それも襲う相手は、戦闘力の未熟であること甚だしい訓練兵だ。その密約はいとも簡単に成立したことだろう。


 何故? それは彼女、ティードの存在だ。姪の恋敵であるティード。彼女を亡き者とするためにホイガは陰謀を企てたのではないだろうか。


 ジガリは、心に決して小さくない衝撃を受けたが、最小の時間でそれをおさめた。今はとにかくティードを探さなくては! 彼は自分の仮説を吟味するのは後まわしにして、馬を走らせた。 


 ジガリは、あちらこちらで、訓練兵に馬上から斬りつけている蛮族を見るたびに、その背後から一突きで倒す。そして剣を振り回しながら、彼は素早く視線をめぐらせティードの姿を探していた。

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