弟子・朝田 ユウキの物語・裏

 Side 朝田 ユウキ


 朝田 ユウキは闇乃 影司の人生を見ていた。


 人生は良い事もあれば辛い事も多い。


 だが闇乃 影司の場合は悲劇に彩られている。


 まるでそれが宿命だと言わんばかりに。


 どうして闇乃 影司が、自分の考えを甘い考えだと斬り捨てたのか理解できてしまった。


 それでもユウキは思わずにいられない。



「師匠は永遠に戦い続ける道を選ぶつもりなんですか?」


「俺の記憶を見て第一声がそれとはな……」


 特殊な時間の流れのジオラマの中で。

 暗闇の広場の中で闇乃 影司と朝田 ユウキの二人はいた。


 影司は試験がてら手っ取り早く自分の過去をユウキに見せる事にした。

 これで潰れるようならそれでおしまい。

 そう思った。


 だが朝田 ユウキと言う少年は精神的にしぶとく、泣きながらそう指摘してきた。


「自分に言った事、覚えてます。その果てに待ってるのは人間を捨てて人を救うだけのマシーンになる。そうなったらお前が救われない。自己犠牲の人生なんてのは幾ら称賛を浴びようが呪われた人生に変わりはないって」

 

「……」


「それって影司さんの生き方その物じゃ……」


「ああ、そうだな」


「それで本当に影司さんは幸せなんですか?」


「言うな――」


「え?」


「言わないでくれ――確かに俺は――セフレだのなんだの作って群がる女の子を遠ざけようとした。嫌われようと努力した。でも無理だった」


 影司はこう続けた。


「どんなに頑張っても、俺は――悪魔になり切れなかった。どうしようもなく人間だった」 


「それの、何がいけないんですか?」


「俺はもう一人で生きていくのが恐いんだ」


「当たり前です。それが人間なんですから」


「どうして俺を師匠にしようかは聞いてなかったが、その実態がこれなんだ。それでも――お前は――俺を師匠にするつもりか?」


「はい」


「……そうか」


「それと」


「何かあるのか?」


「僕が闇乃さんを師匠として選んだのは間違ってなかったと思っていません」


「……」


「だって本当に噂通りの人だったから。とても強くて、優しくて、何だかんだで面倒見が良くて――それに」


「それに?」


 なぜか朝田 ユウキは顔を真っ赤にし、躊躇いながらもこう言った。


「とても綺麗ですから」


「何か色々と台無しだぞ!? 分かっちゃいると思うが俺の正体は――」


「知ってますけど、コスプレとか女装させられてる時の方が何だかんだで活き活きしていて、それに師匠戦う時は無理してダークヒーローぽく戦うよりも、楽しく明るく戦ってた方が人気アイドルみたいで輝いていると思うんです」


「シリアスな空気が完全にぶち壊れたな……」


 遠くで此方を見守っているミサキとかが笑いを堪えているが今は無視しておく事にした。


「そう言えば師匠って倉崎さんや大宮さんに――男の人に、その恋慕の情を抱いたと言うか――そう言う時期もあったんですよね?」


「なんでそう言う話になるの!? まあ確かに大宮 優の時は世界と優、天秤にかっけて一度は優を選んだけども――」


「もしかして僕もその――あの――その場合はベッドで――だから優しくしてくださいね?」


「もうやだこの弟子!?」


 上目遣いで恥ずかしそうにモジモジしながら告白してくる弟子に闇乃 影司は頭を抱えてその場に崩れ落ちた。


「何か凄い展開になったわね」


 と、ミサキ・ブレーデルが代表して出てくる。

 クールな態度を装っているが必死に笑いを堪えている。


「あ、ミサキさん」


「ユウキ君、この子自分に素直になれないツンデレな子だから苦労すると思うけどよろしくね?」


「はい!!」


「もう好きにしろ――」


 二人の様子を見て闇乃 影司は投げ槍な態度になった。

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ヒーローロード・2afterYear短編集 MrR @mrr

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