クマ寄せの鈴〔里山ホラー〕
二人の若い女性が、里山歩きを楽しんでいた。
歩きながら、一人の女性が不安そうに前を歩く親友の女性に訊ねた。
「ねぇ、この山。大丈夫? 最近近くの山に、人の肉の味を覚えた人食いクマが出没したってニュースを見たよ」
食べ物が入ったリックを背負った、前方を歩く女性が明るい声で言った。
「大丈夫、大丈夫、リックに付けた『クマ避けの鈴』を鳴らしていれば、クマの方から逃げていくから」
後方を歩いていく女性が、前方の親友に質問する。
「この山に来たの何回目?」
「初めてだよ、案内の矢印もある山だから、初めての人も迷うこともないって……えーと、頂上を示す案内の矢印だと、こっちの横道かな? 少し雑草が繁った道だね」
後方を歩く女性は、矢印が不自然に傾いて方角を示していたのを、少し気にしながら前方の女性についていく。
(気のせいかな? ずっと、山の木々の間から視線を感じる)
女性の視界にチラッと動く黒い何かが映ったが、一瞬だったので見間違いだと自分に言い聞かせて、茂みが激しくなってきた山道を。
少しばかり山歩きに慣れている親友のリックで揺れる、クマ避け鈴を目印に進んだ。
そして、二人はその日……日帰り登り予定の里山から降りてこなかった。
二人が里山から実家に帰ってきたのは、一人は数ヶ月後、もう一人は半年を経過してからだった。
~おわり~
【説明】動物は人間が思っている以上に賢い、学習してドコに行けば人間が捨てた食べ物ゴミがあるのか、どんな人間が食べ物を持っているのか?学習して知っている。
『クマ避けの鈴』普通のクマなら鈴の音で、人間の存在に気づいて逃げていくだろう。
だが、人間の肉の味を知ってしまったクマにとっては、エサが近づいてくるコトを知らせる音色…まして、人間が矢印の道を歩くコトを知っている賢い人食いクマだったら……。
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