死ぬ時は一緒だよ(ホラー)

 あたしは、アイツを許さない……言葉巧みに近づいてきて、甘い言葉でダマして、女から貢がせた金銭を湯水のように遊びに使って。


 あたし以外の、女性も次々と食い物にしてきた、あの男だけは絶対に許さないと決めた。


「結婚資金で貯めていた、お金もほとんど奪われ……人生メチャクチャにされた……許さない」


 アイツは、あたしに言った。

「死ぬ時は一緒だよ、好きだよ」って、はっきり言った。


「呪ってやる」

 あたしは、アイツに直接会って【呪い】をかけると告げた。

 心のどこかに、アイツが詫びて心底反省するなら……最後のチャンスで呪いをかけるのは、やめてもいいと思っていた。


 だけれど、アイツの口から出てきた言葉は……。

「呪い? オレを呪い殺すってか! おもしれれぇ、やれるもんなら、やってみろ根暗女」

 笑うアイツは、ラストチャンスを自分から捨てた。


 あたしは一言。

「この呪いは、あたしが許さない限り続く」

 そう言い残して、あたしはアイツの前から去った。


 家に帰ったあたしは、悲しみと怒りが混ざった感情で、闇サイトの【臓器密売人サイト】にアクセスして、アイツの情報を勝手に入力登録して『臓器売買』の闇世界に突き落としてやった。


 数日後──アイツの姿は、臓器密売人に拉致され国外に連れ去られた。


 そして、月日が経過した。あたしは髪もすっかり白くなり、腰も曲がった年齢になった。

 あたしが毎日、老後の楽しみで見ているのは、臓器売買で最後に残ったアイツの脳髄のうずいが入った標本瓶だった。


「どんな姿になろうとも、あたしが許さない限り呪いは解けない」

 アイツが、あたしに言った言葉を思い出す。

《死ぬ時は一緒だよ》


 アイツのその約束は、結果的に守られた。



【説明】呪った相手を呪い殺すばかりが呪いとは限らない。

 もしも、生かし続けて苦しめる呪いがあるとすれば?

 男を呪った彼女は「自分が許すまで、呪いは解けない」と言った。

 つまり、男にかけた呪いが解けるのは、彼女が男を許した時か。

 呪った彼女は死んだ時……呪いで臓器になっても生き続けてきた男の命は、約束した言葉通りに彼女の命と一緒に尽きるコトに。

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