第5話

「え~と、今、なんと?」

とてもビックリした。うん。驚いた。

「あら?聞こえなかったかしら?私をあなたの旅に連れていって欲しいと言ったのだけど。ああ、あと使役しえきして、とも言ったわね。」

いや、そんなサラッと言われても困るんですが。

使役しえきって、聖女が出来るような奴じゃないよね…?

「いや。無理です。」

「えぇ…。そんなこと言わないで?」

「いや、ほんとに。無理です。」

何をどう言われても、無理なものは無理なのだ。

無茶なことを言うのはやめていただきたい。

「う~ん。せっかく興味を持ったから、付いて行ってみようと思ったのだけど…。

――仕方ないわね。勝手に付いてくわ。」

ん~?それはそれで困るっていうか…。


ガゴンッ


扉の開く音。

それと同時に、低く響く大声が聞こえた。

「これより!神竜しんりゅう捕獲ほかくを開始する!」

「「「オオー!」」」

大きな掛け声が聞こえる。

「……また来たのね…。」

神竜しんりゅうさんはとっても重たいため息を吐いた。

「帝国騎士団の皆さんですね…。」

あの感じはそうだ。声を聴いたことがある気がする。

「もう…面倒くさい…。」

神竜しんりゅうさんはかなり辟易へきえきしているらしく、顔に面倒くさいと書いていそうだった。

なんだか、あの捕獲ほかくという言葉に嫌気が差して、思わず溜息を吐く。

「あら?あなたがため息を吐く必要はないじゃない。」

「いや~なんか、捕獲ほかくとか聞いたら、嫌~な感じになっちゃって。」

とても気分が悪い。

「とりあえず隠れましょうか。」

「どうやって?」

「透明化で。」

私は無詠唱むえいしょうで透明化の魔法を、神竜しんりゅうさんも一緒に掛けておいた。

「あら、無詠唱むえいしょう…。」

神竜しんりゅうさんは無詠唱むえいしょうにちょっと驚いてるみたいだった。

そんなに驚くようなことではないと思うんだけど。

「それでは、これより突撃する!」

「「「オオー!!」」」

帝国騎士団の、大きな掛け声が聞こえる。

「とってもうるさいわね。」

「そうですね。」

帝国騎士団はとてつもない勢いで突っ込んでくる。

でも、私の透明化で神竜しんりゅうさんも私も姿が見えなくなっているから、騎士団は空になった洞窟を見て困惑していた。

「なっ!どうなっている⁉誰もいないぞ!」

いつも神竜しんりゅうさんはこの洞窟で騎士団の相手してるのか…。

大変だな。

「とりあえず、ここから出ましょう。」

「あら、いいの?貴方についていくことになると思うのだけど。」

神竜しんりゅうさんはとても不思議そうな顔をする。

「別にいいかなって。使役しえきは御免ですけど、ついてくるぐらいなら特に嫌なことはないなぁと思いまして。」

よく考えたら、世界最強の四竜の一人がついてきてくれるならば、それほど心強いことはないんじゃないかと思ったから、

「ありがと~」

神竜しんりゅうさんはニコニコとした笑顔を私に向けて言った。

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