第3話

さて、これからどうしようか。

喜んで王宮を追い出された私は、行く当てがない中、とりあえず街をブラブラしていた。というか、普通に買い物をしてみたかった。

今までずっと王宮に軟禁なんきん状態だったから、ろくに買い物もできなかったのだ。

聖女になる前も、貧乏な家だったから買い物なんておつかいで食料を買いに行くぐらい。自分の好きなことで買い物はしたことがなかった。

それに、やっぱり第一に買い物をしなくてはいけない。

だって、聖女のこの服目立つんだもん。目立つ。やだ。OK?

ってことで、とりあえず服のセンスはよく分からないので、個人的に可愛いと思う服を見繕みつくろってみた。ついでに靴と髪飾りも。

手首らへんがふわっとなってる白ブラウスに、赤地に幾何学模様きかがくもようの黒レースがあしらわれた膝下ぐらいのスカート。シンプルな明るい茶色の靴に、赤に黒レースがついたひかえめのリボン。

……うん、我ながらかなりいいんじゃないだろうか。

今まで聖女の正装、全体的に白や金の刺繍ししゅうが多い服を着ていたからか、つい白を選んでしまったけれど、赤と黒の組み合わせは今までと違い、心機一転しんきいってんという感じがして楽しい。

鏡の前で自分のファッションを眺めていると、お店の人に微笑ほほえまれてしまった。

初めてのことをしたせいで、つい童心どうしんに帰ってしまったようだ。

私は少し恥ずかしくなって、そそくさとお店を出た。

聖女の服はどうしたかって?お店の人にゆずった。もう着る気無いしね。



服も一新して、少しテンションの高い私は、四竜に―会えるかは分からないけど―会うだけ会ってみようかと思った。会えるかは分からないけど。

別にあの命令を遂行すいこうしようなどとは思っていない。

ただ、前々から少し興味はあったのだ。

世界最強と言われる四竜とは、いったいどんな姿をしているのか。

いったい、どんな魔法を使うのか。

いったい、なぜ人間と関わろうとしないのか。

…まあ、最後の疑問は、もう答えが出てるようなものだと思うけど。

とにかく、興味のいたことは、すぐに実行しよう。

別に私が死んで困るのは、私が困らせたい奴らだけだ。

あいつらが困ろうと、私にはどうでもいい。

よし、決めた。四竜に会いに行こう。

運のいい事に、四竜のうちの一体は王宮の近くにいる。

王宮と城下街じょうかまちはそこまで離れていないから、すぐにでも行ける距離だ。

私は軽快なステップで、最初の四竜……聖職者らに神とあがめられる、「神竜しんりゅう」の洞窟どうくつへと向かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る