第2話

私が聖女の力を持っていると分かったのは、五歳の時。

いつもの教会に、お祈りをしに行った。

お姉ちゃんの病気が治りますようにって。

お母さんと一緒に。

その時に、聖職者さんに、言われた。

あなたは世界に選ばれた子だ、って。

言われた時は分からなかったけど、お母さんが教えてくれた。

あなたはいろんな人を助けられる、特別な力を持ってるのよ、って。

あなたは、聖女なのよ、って。

嬉しかった。

いろんな人を助けられる…。

本当にそうだとしたら、私はお姉ちゃんを助けられるかもしれないんだから。

お姉ちゃんは、その時の技術じゃ治せない病気だった。

でも、聖女の力なら治せるかもしれないって、お医者さんは言っていた。

うちは貧乏だから、聖女さんに払えるようなお金はない。

だから、そう言われても、治せるっていう希望なんて見えなかった。

だから、自分が聖女だって分かって、私も、お母さんも、喜んだ。

しかも、聖女最強と言われる、白銀プラチナランクだったから、余計に喜んだ。

早速、家に帰って、お姉ちゃんを治そうって、お母さんと言ったんだ。

でも、それは許されなかった。

王様が来たんだよ。その教会に。

そして、私を連れてった。王宮に。

聖女だから。白銀プラチナランクだから。

ひどいよね。私、ただの女の子なのに。

たまたま、聖女の力を持っただけなのに。

たまたま、白銀プラチナランクだっただけなのに。

おかしいよね。こんなの。

よくよく考えたら、私、なんでこんな、私の人生めちゃめちゃにした国に、十二年も人生ささげて、守ってきたんだろ。

「ふふっ。」

そうだよ。何でこんな国に人生ささげてんだよ。私。

「ふふふふっ。」

お母さんは、五年で戻すと言われた娘が帰ってこなくて、絶望して、自殺した。

「ふふふっ。」

お姉ちゃんは、病気に侵されて、苦しんで、死んだ。

「ふふふふふっ!」

「お、お主、どうしたんじゃ!急に笑い出して…。」

「どうされたんですかぁ!?何で急に笑うんですかぁ!?」

バカ王とバカ聖女は突然笑い出した私を見て、慌てふためく。

そりゃそうだ。人が、何の前触れもなく笑いだしたら気色悪いもんね。うんうん。

「あー、いえ、なんでもありませんので、お気になさらず。

そんなことよりも、私に四竜を捕まえて来いとおっしゃった件について、お返事をさせていただきたいと思いますが、よろしいでしょうか?」

「う、うむ、良いぞ…。」

バカ王はめちゃめちゃ引いている。まあ、自分がバカ王の立場になったら、確実に引くだろう。

「それでは、これから申し上げさせていただくことを、お返事とさせていただきますね。私が喋っている間は口出しはなさらないでください。」

そこで私は、一度話を切った。

「わ、分かりましたぁ…。」

その間に、バカ聖女が返事をする。それを聞いて、私は話し始めた。

「王様のお話では、私に四竜を捕まえ、こちらに連れてこい、とのことでしたが、正直言って白銀プラチナランクの聖女でも四竜を捕まえることは出来ません。それは王様もご存じのはずですが、それを知りながら私にそれを命じられるということは正直言ってこの国から出て行けと言われているようなものです。そして、新しい聖女がもうすでにいるということは私をどんな手を使ってでもこの国から追い出したかったということではないかと私は思うのです。加えて、先ほど少し過去に思いをせていたのですがよく考えれば、この国に私は人生をささげているにも関わらず、全く良くしていただいた覚えがなく、こんな国守っていて私は幸せかどうかと考えた末、この国を出ていける理由が出来たのならば喜んでお受けしようかと思いました。なので、喜んで出て行かせていただきます。そして、この国が、いえ、この城がどうなろうと私には知ったことではないので、どうぞ滅んでください。」

私はそこまで一気にまくし立てると、後ろを振り返り、出口に向かった。

「な、いま、なんと…。」

バカ王は、私の最後の言葉に何よりも動揺どうようしていた。

「ちょ、ちょっと待ってくれ!今のはどういうことだ!待てっ!待て―――」

「うるさいわね。あなたが追い出したいから追い出すんでしょ?だったら私の言うことなんて聞き流せばいいじゃない。私は行くから、あとはご勝手に。」

そう吐き捨てて、私は今度こそ王宮を出て行った。


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