第18話:まるで美少女ゲームみたいやな
結衣の機嫌が悪いのは勿論、例の渚の特殊能力のせいもある。
付き合い始めてまだ10日足らず。
なのによくもまぁこんなに毎日毎日色んな女の子が現れるものだと、結衣はもはや怒りを通り越して呆れるばかりだ。
純粋に可愛い子。
お色気たっぷりなお姉さん。
ナイスバディ、メガネっ子、ギャル、純朴を絵に描いたような田舎娘……。
その様子を傍観している曜子は「まるで美少女ゲームみたいやな」と面白がっているが、相変わらず結衣はその意味が分からない。
分かるのはこれがゲームではなくて現実。
そして恋は戦争だということだけだ。
それでも結衣は渚みたいに分かりやすい反応はしない。
こう見えて生粋のお嬢様だ。
人前であからさまな感情を露わにするのは、子供の頃から押し忍ぶ癖がついている。押忍。
だから結衣は一見すると女の子たちと渚のやり取りをにこやかに眺めながら、内心では相手を呪い殺す呪詛を吐きつつ、渚の意識がその子に行かないようにとさりげなく自分をアピールするのだ。
例えば渚の背中越しに女の子との会話に結衣も加わりながら、密かに胸のふくらみを押し付けたりとか。
自然な動きで髪をかき上げて、フェロモンを漂わせてみたりとか。
相手に負けないぐらいに可愛い仕草を、目立つことなくやってみたりとか。
もちろんどれもさりげなくである。
投げキッスをしてみる、なんてあからさまなことはしない。えっちすぎる。
が、そうこうしているうちに最近は単なる出会いだけで終わらず、渚を誘惑しようと行動してくる者まで現れてきた。
こうなると結衣も黙ってはいられない。
先日は恋愛魔物ラブ・モンスターという噂がS大学にも伝え聞こえてくる、他大学の女の子が結衣たちの前に現れた。
なんでもその子は見つめるだけで相手を恋に落とす魔法を使うと言う。
彼女に恋に落ちた男の数、なんとこれまで500人以上。
ちなみにその場に居合わせた健斗なんか瞬殺だった。
さすがの結衣も危ういか。
これまたたまたまその場を見ていた曜子が危ぶむ中、しかし、結衣はここぞとばかりに普段隠している力を解放する。
ア〇ラ、お前の前にいるのは1000人以上の男たちが恋焦がれたと言われるお嬢様だ。自害しろ。
かくして結衣は見事に撃退した。
曜子は「お嬢様ってなんやろう?」と呟いた。
まぁ、そんなこんなで結衣は渚を防衛し続けている。
正直、大変だ。
気が気でない時だってある。
そもそも結衣を寝取られたくなくて他の男を近づけないようにと頑張る以前に、自分に近づいてくる女の子と仲良くするなと渚に言いたい。
渚が彼女たちに素っ気なく対応してくれたら、それだけでかなり結衣の負担は軽くなるのだ。
なのにどうしてどの子に対しても親切にしてしまうのか。
本来なら賞賛されるべき美点だけど、彼女からしてみたら恨めしく思う。
ああ、声を大にして訴えたい。
でも、そんな気持ちを伝える自分を想像すると、なんとなく負けたような気持ちになる。
だからぐっと我慢している。
と、ふと結衣はある考えを思い付いた。
もういっそのこと一度寝取られてみたらどうだろう?
そうすれば渚は自分だけを見てくれるかもしれない。
例えばロゼリアン田中に自分が抱かれ……いや、さすがにあのお爺さんはありえないか。
とにかく誰か他の男と身体を重ねているのを、渚が見かけたら――。
……うん、先輩のその表情、最高ですねっ!
朝から寝取られ男主人公大好き侍な妄想が爆発する結衣。
それぐらいフラストレーションが溜まっていた。
しかしそれは渚の寝取られ体質以外にも、もうひとつ、こちらはいい加減我慢出来なくなってきているものがあるからだ。
だからそちらは早急な改善を求めるべく、結衣はある行動に移すことにした。
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