僕たちは恋人を寝取られたくない!~次に寝取られたら女の子になっちゃう呪いにかかった彼氏と、そんな彼氏が実は美女を引き付ける異能持ちだと知って頭を抱える彼女の物語~
第14話:近づけさせなければいいんじゃね?
第14話:近づけさせなければいいんじゃね?
さて、時間は少し遡り、渚と結衣が付き合い始めた初日の朝。
渚は結衣のことを親友の小林健斗に相談しようと、まずは昨夜のことを打ち明けた。
「はぁ? あんなお嬢様にまで手を出したのかよ、渚!?」
まだ朝早い書道研究室。
ふたり以外は誰もいないのをいいことに、健斗が大声で驚く。
「まったく。なんなのお前、チンコに脳を支配されてんの?」
「そんなわけないよ! というか、神戸さんの方から誘ってきたんだ」
「あのお嬢様が? あのねぇ君、嘘をつくならもうちょっと上手くやんなさいよ」
健斗の目がどうして今さらそんな白々しい嘘をつくかねと語る。
どうやら健斗の中で、渚の下半身事情は猿並と思われているらしい。
「本当なのに……まぁ、それはともかくとして、僕、今度こそ本気なんだ」
「それ、これまでに何回も聞いたぞ」
「今度こそ本気なんだって! 神戸さんを他の男の人に盗られたくない!」
なんせ今度カノジョを取られたら女の子になってしまうのだ。
が、そんなことは当然ながら健斗に話せない。
話しても信じてもらえるわけがない。
いや、仮に信じてくれたとしても「ほほう。渚が女の子に? それは是非とも見てみたい。というか、俺と付き合ってくれ」とか言ってきたらどうしようと考えると、とてもじゃないが言い出せない。
「ねぇ、健斗、どうしたらいいと思う? どうやったら神戸さんを寝取られないように出来るかな?」
「そんなこと、カノジョなんて生まれてこの方いたことがない俺に訊かれても知らねぇってーの」
「ううっ。だったらどうして僕がいつもいつも恋人を他の人に取られるのか、その理由に心当たりはない、健斗?」
「うーん。昨日も言ったけどえっちが下手なんじゃねーの?」
「それはないよ。だって神戸さん、先輩はえっちが上手いって言ってくれたもん」
「そうかそうか。おい、ちょっと軽くボコっていいか、渚?」
「え、なんで?」
「あのなぁ、なんで朝早く呼び出された上に、童貞の俺がお前ののろけ話を聞かされなきゃならんのだ!? 一発、殴らせろ。さもなきゃケツを出せ。ぶちこんでやる」
「ああっ! ごめん! そんなつもりはなかったんだよ!」
がたっと音を立てて席を立つ健斗に、慌てて渚も立ち上がり、お尻を両手でカバーしながら距離を取る。
「ったく。だったらやっぱり変な性的嗜好があるんだろ、お前?」
「ないよ! ないない! いたってノーマルだよっ!」
「だったら俺に分かるかっ! そもそも相手が神戸さんなら俺が寝取りてぇよ!」
「それは困るっ! 絶対にダメっ!」
「他の奴に取られるぐらいなら、せめて童貞の親友に差し出そうって気持ちはねぇのか、お前は!?」
「ないよっ! 神戸さんは何があっても守り抜くんだからっ!」
健斗と机を挟みながら対峙しつつ、渚は男気を見せた。
まぁ、いまだお尻を両手で守りながらではなければ格好良かったのだが。
「ったく、だからのろけるなってーの。てか、なんで渚がカノジョを寝取られるのかなんて俺にも全然分かんねぇよ。だって寝取った相手の男を何人か俺も知ってるけどさ、どれもたいしたことない奴ばっかだったじゃん」
「そうだったっけ?」
「そうなんだよ。客観的に見てお前の方が顔も性格も上だった」
だから健斗もどうして渚がこうもカノジョを奪われてしまうのか本当に不思議でたまらなかった。
敢えて言うならば、渚の周りには可愛い女の子が集まってくる。
加えて渚も人がいいから、カノジョがいてもそんな女の子たちへ親切に対応してしまうことだろうか。
とは言っても渚がカノジョをないがしろにしているようには見えない。
ならば。
「とにかく神戸さんに男を近づけさせなければいいんじゃね?」
「そうか! そうだよねっ!」
「
「さすが健斗! やっぱり持つべきは親友だよっ!」
健斗のアイデアに心底感謝する渚。
まさか渚の「女の子と付き合い始めると、その子のライバルとなる女の子が次々と現れるという特異体質にカノジョが耐えられなくなる」のが原因だとは、ふたりとも全く思いつきもしないのであった。
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