3
疾風が夕飯の時に知らないおばさんに声をかけられたと言う。恵子は智美のことを思い浮べた。智美には特に何も言っていない。自分たちの居場所が知れてもしかたがないと恵子は思う。有村の家も疾風には帰ってほしいのだろう。恵子の離婚も成立していないはずだ。
「おばさんはないんじゃない」邑子が恵子に言う。
「母親の年齢に近い女の人はおばさんなのよ」
「あたしお姉さんとそんなに年近くないよ」
邑子は恵子の夫の末の妹。
「疾風はあたしのこと覚えてないのかな」
「あなたが変わったのよ」
「年を取ったってこと」
「もしかすると、あの子にとってあなたはずっと高校生のお姉さんなのかもしれない」
「そうか、あたし高校を卒業してからあの家に寄り付かなくなっちゃったものね」
「お姉さんとはよく会ってたけど」
邑子はバックの中から封筒を取り出した。
「あんな兄貴とは別れちゃった方がいいよ」
封筒の中身は離婚届。
「智美さんからお姉さんが疾風と二人でいるって聞いて」
「あの男が一緒なら来る気はなかったのよ」
疾風が帰ってくる。
「疾風、邑子ちゃんだよ。わかるでしょ」
疾風は軽く頭を下げて廊下を通り過ぎる。
「着替えたらこっちに来なさい。ごはんにするから」
「疾風。あんた、あたしのことをおばさんって言ったんだって」
「叔母さんに違いないだろう」
奥から疾風の声が聞こえた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます