第10話取引

『これで終わりだ!』


 しかし、それを俺は、あっさり回避した。


「ナニィ!?」


 アニキは驚いていたが、俺は、そのまま後ろを振り返り、その腕をつかんだ。


「どうやらこの腕は実体の様ですね! あなたの魔法は、腕以外を実体じゃなくす力だ!」


 そして、腕の関節を決めた。


「いいい、いてぇ!」

「さぁ、この腕を折られたくなかったら! さっさと魔石を捨てて、金貨袋を返せ!」

「何をふざけた……いてて?!」


 勿論、アニキが抵抗しようとしても無駄だった。

 俺は、完璧に関節を決めている。

 思いっきり力を入れれば、折る事だって可能かもしれない。

 だが、


「きゃぁぁぁぁー」


 その時、突然、後方にいたはずのアカリの悲鳴が聞こえたのだ。

 俺が驚きながらもアカリの方を振り返ると、そこには、さっきの体のでかいまん丸のデニムが戻ってきてたのだ。


「アカリ!」

「アニキ! やりやした!」

「よ、よくやった! デニム」

「か、カケル君……」


 再び、俺たちはピンチになったのである。


(くそ。このままではまずい)


 しかし、どんなに考えてもすぐには手は思いつかない。

 そこで俺は、取引を持ち掛ける。


「分かった! 放す! その代わり、俺たちを見逃してくれ!」

「……」

「どうします? アニキ?」

「分かった……。今回は、見逃してやる……」

「いいんですか! アニキ!」


『クックックック……』


「じゃあ、お互い、一、二、三で手を離すぞ」

「ああ。デニム。そのガキの言うとおりにしろ」

「……分かりやした」

「じゃあ、いち、にの、さん!」


 その瞬間、俺は、アニキの手を放した。

 デニムもアカリを解放する。


「カケル君!」

「アカリ!」


 そのまま俺たちが駆け寄りあおうとした、次の瞬間。


「カケル君! 危ない!」


 アニキは、もう一つの腕で、すかさず、俺の背中を貫いた。

 いや、咄嗟に俺をかばおうとしたアカリの胸を貫いたのだ。


「アカリィィィィー!」

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