第7話バトル

「ちくしょー!」


 俺は、咄嗟に、その腕が生えている空間を思いっきり、掴まれてない方の手で殴る。


 ――ドコ!


 すると俺の右ストレートが鈍い感触と共に、打撃音を繰り出したのだ。


「いてぇー」


 そしてそれは、あらぬ所から現れた。

 なんと近くの物影に、さきほどのアニキと呼ばれていた男が一人隠れていたのだ。


「どういうこと。カケル君」

「あんた一人か……? 他の奴らはどうした……?」


 そのおかげで右手から解放された俺は、とにかく慣れないファイティングポーズをとる。


「クックックック……。さぁな……」


 間違いなくアニキは、抽象魔法使いだ。

 決して希象魔法使いではない。

 それは、まだ案の定で、一人しかいない状況も好都合だが、まだ俺は、余裕を見せられない。


「お、俺の金貨袋を返せ……」


 もしこいつが第一級魔法使いなら魔石を持ってない俺には、当然荷が重いのだ。

 だけど、なんとか隙を作って、金貨袋を取り返すしかない。

 でも、どうしたら……?


「嫌なこった。どうしてもって言うなら力づくで取り返してみな」


 そんな事を考えている間に、アニキは、体から離れていた自分の右手に歩み寄る。

 恐らく相手の魔石は、体の一部を空間移動する能力かなにかだろう。


(なら!)


 俺は、必死に覚悟を決め、アニキに向かって、ぶちかましを仕掛けた。

 部分移動される前に、本体を狙う作戦だ。

 だが!


「うわわわわぁ」


 驚く事に、思いっきり俺の体は、アニキの体をすり抜けたのだ。


「カケル君!」


 それにアカリは驚く。


「クックック……。どうやらまだ俺様の能力を理解してない様だな……」


 アニキは、不敵な笑みを見せる。


「どういうことだ。体を部分移動させる力じゃないのか」


 そして、次の瞬間、そのままアニキの体は、俺の体を羽交い絞めにしたのだ。

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