第5話第二級魔法使い

(あの中には、エルテさんから預かったお金が……。どうしよう……)


 大した額ではなかったが、俺は、かなり青ざめた。

 なぜならエルテは決して金持ちじゃない。

 むしろ貧乏だ。

 俺がいない時から、生活は、カツカツだったただろうに、困っている俺を見捨てなかった、根は優しい美人なおばさんなのである。


「さっきの所で落としたんじゃない……」

「多分……」

「でも、戻ったら、さっきの人たちに見つかるかも……」

「うん……」

「ねぇ? やっぱこの世界って異世界だよね? アタシ、異世界転移しちゃったの?」

「とりあえず詳しい事は、後で説明するよ。今は、一旦、俺に付いてきて」

「……分かった」


 あの時、もし俺が、アカリの告白に答えていたら、もしかしたら俺たちは、こんな事にはならなかったかもしれない。

 ただ俺は、どうしても信じられなかったのだ。

 施設育ちの俺をアカリが好きだっていう事が。




「アニキ? それにしてもさっきのガキ、えらく簡単に逃げましたね? 第一級魔法使いなら戦えばいいのに。もしアニキ以上の使い手だったらどうする気だったんですか?」

「当然、俺様の魔法であの女の方を人質にとり、ガキの魔石をぶんどるだけさ」

「でも、アニキって、第二級魔法使いだったんじゃ? 勝ち目なんてあるんですか?」

「そんなの関係ねぇ―よ」

「え?」

「俺様の魔法は、戦わずして、魔石を奪えるんだからな」

「そうか。それなら第一級も、第二級も関係ねぇや」

「そう言う事だ。分かったらさっさとあのガキを探せ。ただうかつに背後を取られるなよ?」

「へい」

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