第2話変人
「エルテさん! それよりさっきから心を読まないで下さい!」
「何だい? もう私のココロミエールがお気に入りかい?」
「いや、そうじゃなくて」
「それともカケルはこっちのスケテミエールの方がいいかい」
「ぬふっ?!」
奥手の俺は、ミサンガの様なエルテのその発明品を強引に渡されただけで、思わず鼻血を吹き出しそうになるが、
「ククク。このエロガキ。顔を真っ赤にして」
「からかわないで下さい!」
「そうだ! それを付けたまま、今日の晩御飯を買ってこい!」
「嫌です!」
「はぁあ? 私に逆らうつもり? あんた誰のおかげで、この世界で生きていけると思ってるんだい?」
エルテは、町の人が言う様に変人である。
ちなみに俺が町の中でチンピラに絡まれそうになった時に、助けられたのが二週間前だ。
「分かりました。何が食べたいんですか」
「亀だね」
「え……。またですか……」
「何だい嫌か」
「いや、流石に飽きたなーっと」
「何言ってんだ? 亀よりうまいもんは無いだろ? ならカケルは何が食べたいんだ!」
「唐揚げ……」
「ならそれ買ってこい!」
(そう言われても……)
隠れ家から露店街までは、歩いてニ十分で行ける。
もう暗くなってきたが、まだ開いている店はいっぱいあるだろう。
俺は、まだこっちの世界に来て二週間しか経ってないけれど、エルテが「私がいつか元の世界に帰してやるよ。それまでこの世界で生きてかなきゃな」とか言って、色々勉強させてくれたので、少しはこっちの世界の事を理解した。
「ねぇ? そこの可愛いお兄さん? ちょっと寄ってかない? 今なら三十分四千エーテルよ?」
だから、初めはこんな色っぽい露出だらけの格好のお姉さんに声を掛けられた時は、どぎまぎしたが、今は……。
「す、すみません! い、急いでいるので!」
って感じで、なんとか回避出来るようになったのだ。
「大丈夫。すぐアタイがイかせてあ・げ・るから」
(……)
「グフフフ。アニキス。そんなガキなんか誘って、そこまで金が欲しいのか? なら今日こそワシが相手をしてやるぞ?」
そこに横から現れたのは、髪の薄い男だった。
『げ……。また来たのか……。しつこいんだよ。このエロジジィ……。毎回そういうサービスはしてないって言ったんだろ……。でも、金づる。金づる……。我慢我慢……』
「あはは……。じゃあ、バグラム様、こちらへどうぞ……」
(なんでアニキスさんの心の声が……。あ! このミサンガ! まさかココロミエール!?)
とにかく!
それでもこっちの世界の感じには、まだ慣れていない。
「はぁ……。俺、ちゃんと元の世界に帰れるのかな。それにアカリにちゃんと返事できなかった……」
「きゃぁぁぁぁー! 誰か助けてー!」
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