第5話 不満の声

 日本から漢字がなくなる事について、海外からは賞賛の声が上がった。もちろん、中国とは停戦中であり、面白くない事は聞かなくても分かっている。略字が違うとはいえ、同じ漢字も多く使っている中国と日本では、旅行先などで分かりやすいという利点があった。仮名ばかりになった日本では、中国人に他の外国人に対しての優位性がなくなる。だが、かつての中国人、今は日本人になった台湾県の人達はどうか。

 台湾からすれば、同じ漢字文化だから親近感があったとも言える。日本の一部になった台湾は、当然同じ教科書を使って義務教育がなされる事になる。これから学ぶ学生はそれでいいかもしれないが、大人だって日本語が読めないと、色々困る。大人も小学校一年生からやり直しである。漢字なら分かるのに、という不満がくすぶり始めるのも無理からぬ事だ。

 台湾県民に同調し、やはり漢字が消えてしまう事に危機感を抱いた人がデモを始めた。今でも手書きならば漢字が使えるのだ。

「日本の文化を取り戻せ!」

「美しき漢字仮名交じり文を使おう!」

そんなプラカードを持つ人たち。また、手書きで書いた文字を写真に撮り、その写真をSNS上で拡散した。そうすれば、スマートフォンでも漢字仮名交じり文を発信出来る事に気づいたのだ。

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