第3話 ひらがなとカタカナ

 誰が、わざわざ手書きで漢字を書くだろうか。もう、仮名だけでいいとなる。さて、仮名と言っても二種類ある。ひらがなとカタカナである。これは、漢字を元にして日本人が作った文字である。漢字が元になっているとはいえ、日本人が作ったという事で、日本の文字なのである。

 明治時代までの公文書は、漢字で書かれていた。漢文だ。漢文の書き下し文だ。その送り仮名としてカタカナが使用されていた。漢字とカタカナの混じった文、これが正式な文章だった。これが固い感じのする文章だとすると、ひらがなの文章は柔らかい文章だ。平安・室町時代に書かれた物語や日記は、ひらがなだけで書かれた。女文字とも言われたひらがなだが、子供用の教科書もひらがなばかりで書かれており、日本人にとってはお馴染みである。

 ひらがなばっかりなのは、読みにくい。古文を理解するのが大変なのは、ひらがなばっかりだからである。だが、当時の人はこれを読んでいたのだ。そう思うと、不可能ではない。ましてや、かつては使われなかった句読点がある。句読点で区切れば、読みにくさも半減するだろう。そして、古文が読みにくいのはまた、省略が多いという事もあった。しかし時代は繰り返す。Twitterなどは文字数制限があり、多くの若者が新しい略語を作って行く。ひらがなばかり、略語ばかり。だいぶ、昔に戻ったような文章が日本中で横行し始めた。例えば「私」が「わ」になり、「お前」が「ま」になる。「先生」は「せ」になる。

「わとまが、せにきいた。」

私とお前が、先生に聞いた。ああ、かつての古文の世界だ。

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