第2話 公文書と教科書から消える

 敵国の文字である「漢字」を、公文書から無くすことになった。そして、小中学校で漢字を教えなくなった。だが、国民の大半が漢字を日常的に使用しており、急にはなくならない。何しろ、漢字のない、仮名ばかりの文章は読みにくい。今やコンピューターが変換してくれるのだから、書けなくても難しい漢字を使う人は多い。しかし、小学校で教えなくなるのだ。考えてみれば20年後には漢字を知らない世代が社会人になるのだ。

 緩やかに消えるかに思えた漢字文化。しかし、事はそう悠長なものではなかった。何しろ、我々は変換に頼っているのだ。そう、パソコンやスマートフォンといったコンピューターで、漢字変換が出来なくなったのだ。決して政府は漢字の使用を禁止したわけではない。確かに敵国の文字を使うなという風潮はあったが、全員がそれに同調したわけではない。しかし、将来的に若い世代から漢字を使わなくなるのなら、新しいソフトウエアに漢字変換機能をつける必要はない。

 そうして、我々はコンピューター上で漢字を使えなくなったのである。

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