第20話 移動手段について考えた

 社方と別れてしばらく、私は今宿泊している宿にて、少しばかり休息している。旅の準備といっても、私には便利な能力があるため、そこまで気にしなくても良いのだ。

 それにしても一体どのような旅路になるのだろうか。というのも、今回私たちが向かう吸血鬼騒ぎがある「キアワラ国」の「シルヴァニアトラン地方」は、我々の世界で言うところのワラキア、いや現在ではルーマニアか、そのトランシルヴァニア地方に位置するのだが、ドイツとルーマニアは約2000km離れており、陸路で移動するとなると、チェコ、スロバキア、ハンガリーを経由しなければならない。まぁポーランドとウクライナを経由するルートが最短であると考えるが、やめておいた方が良いだろう。ともかく、我々の世界と似ているこの異世界においても同じことが言えるということだ。

 そもそも、海運や道路に比べて、鉄道の歴史というのは比較的新しい。それは、鉄製レールと蒸気機関車という二つの別個な発展が関係している。鉄製レールの歴史に変革が起こったのは19世紀後半、特にベッセマー法であろう。ベッセマー法(Bessemer process)というのは、イギリスの発明家、ヘンリー・ベッセマー(Henry Bessemer)によって考案された製鋼法である。溶けた銑鉄から鋼を大量生産する世界初の安価な製法であるベッセマー法によって、鉄製レールの供給が可能になった。また蒸気機関車の発展は17世紀から18世紀まで遡る。ポンプに蒸気を用いる初期の実験から、その往復運動が回転運動に変えられることが判明されると、すぐに輸送への応用に繋がった。1804年、イギリスの機械技術者であるリチャード・トレヴィシック(Richard Trevithick)が高圧蒸気機関を開発したが、鉄道の軌道には重すぎるという問題があり、蒸気機関車への応用の成功は、1829年のレインヒル競技会で選ばれた、ジョージ・スティーブンソン(George Stephenson)のロケット号まで待たなければいけなかった。この機関車はリバプールとマンチェスター間で、世界初の蒸気を動力とした旅客用鉄道として運行されることになった。

 ヨーロッパの鉄道網で、イギリスは世界をリードした。1850年にはイギリスの鉄道建設は一万キロメートルにも達し、二位のドイツはイギリスの約半分、三位のフランスはそのドイツの半分の距離しか達していなかった。ベルギーは、小規模ながら効果的な鉄道網の建設を始めていたが、スペインやイタリア、ロシアでは鉄道建設は遅れたが、そもそも資本と技術力がなく、それによって運ぶ取り引き品目もないといった理由がある。しかしながら、1914年までには、ヨーロッパの鉄道システムの大部分はすでに完成されており、主要鉄道網が、オーストリア=ハンガリー、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、スウェーデン、イギリスで建設されていた。

 聞いた話では、この世界の鉄道網の発展は著しいらしい。現在のヨーロッパ鉄道とほぼ変わらない経路と時間で到着するらしく、約一日程度で、この世界のブカレストに当たる場所にはつけるだろうと考えている。魔法ってすごーい。

 楽しみだなぁ。本物の吸血鬼とか、いるんかなぁ。

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