第16話 「能力」について考えた
私、言ノ葉文科の学友である主人公が異世界へ旅立って、それなりの時が過ぎた。恐らく彼は、私達の知らない世界で、その旅を賞翫していることだろう。…私も行ってみようかなぁ…いや、今は辞めておこう。行くなら、彼が帰ってきた後かな。此方の世界を見ておかなければならないし…。あと…。
「あら、言ノ葉さん。相変わらずこのカフェテラスがお好きなのね」
…噂をすれば目の前に現れたこの人、ハーンさんを見張る為である。彼女の能力は「任意の物を並行世界(此処では異世界と呼ぼう)と行き来させる能力」みたいな感じである。正式名称は知らないが、まぁそんな感じだろう。問題なのは、彼女が許したら何でも行ってしまう、ということである。別に一般人やら犬やら猫やらゾウリムシを送ろうが、少しばかり生態系が乱れる可能性があるが、あまり問題はないだろう。だが、能力者を送ってしまうのは避けなければならない。彼や私のように理性的な人間であるならば良いのだが、感情的で愚かな能力者というのも居るもので、そんなものを送ってしまえば、外来種として何をしでかすか見当がつかない。それは避けなければ!
「そういえば言ノ葉さん!新しい人を異世界観光にご招待しようと思っているのです!」
このようにハーンさんには「新しい客を案内するなら、私に報告してね」と言っている。
「そう…。それで、誰を送るの?」
「
「あ〜彼か〜。彼なら大丈夫かな。うん、送っても良いと思うよ」
「分かりました。まぁ社方さんのご要望で、滞在期間は二週間なのですが、責任持って送り届けますわ」
そうか、二週間か。てか、社方は二週間で何をするつもりなんだ?まぁ、彼の能力は自発的には発動し難いし、善良な人間に害を与える能力ではないから、大丈夫だろう。理性的だし。
「それにしても、私や言ノ葉さんの持つこの超能力は一体何なんでしょう?」
「さぁ?生まれつきあったみたいだけど、行使できるようになったのは成長してからだし、この能力は異端でもあると知ってるから、皆公にしないから、分からないなぁ」
異世界に魔法という超能力のようなものがあるように、此方の世界にも超能力のようなものがある。だが、此方の世界では、それは異端であり、マイノリティである。要するに、常識ではないし、能力者自体の数が少ないのだ。それに、その能力というのも多種多様で、煙草に火をつけるくらいの弱い能力もあれば、世界をひっくり返す能力もある。このような構造のため、やはり弱肉強食のごとく、能力者同士の争いや、一般人へ害を与えてしまうこともある。だから私のような強力な能力を持つ者は弱者を守る必要があり、理性的である必要がある。社会に混沌を招かないようにするには、能力者という存在はヴェールに包まれた状態を保たなければならないのだ。
能力自体を消すことも考えたが、そもそも能力が発現する原理が不明であるため、正当な方法での抹消は不可能である。また、私の能力で強制的に消そうとしたが、私の能力の範疇を超えていたため無理だった。結局のところ、「能力に関する追求は禁じられている」と解釈し、諦めた。「触らぬ神に祟りなし」、私にも被害が及そうだ。
「このケーキが途轍もなく美味しくなる能力なんてないかしら?」
「探せばあるんじゃないかしら?というか、美味しいと評判の店に入ればいいじゃない」
「超能力」みたいなものは昔から存在している。インドの伝統的な宗教的行法であるヨーガでは、解脱により顕われるとされた力は「シッディ」と呼ばれていたり、仏教では「神通力」とも呼ばれた力があった。
1900年代、ドイツの美学、心理学者のマックス・デソワールによる造語である「超心理学」が現れた。超心理学では、超能力をESP(Extra-sensory perception) とサイコキネシスに大別しているらしく、恐らくこれが、大衆の思う超能力なのだろう。
だが、私達の持つ「能力」というのはそういうものではなく、「与えられた機構を、自身の思惑で使用できる権利」のような感じである。テレパシーやメスメリズムを行える訳ではない。此処がややこしいところである。
「さて、私は社方さんを案内しなければなりませんので、此処でお暇しますわ」
「そう。じゃあね」
ハーンさんの能力によって送られる人間は、果たして同じ人間なんだろうか…。あ〜こわいこわい。怖いことは考えないで、昨日買った小説でも読もうっと。社方が帰ってきたら、あちらの世界について聞かしてもらおう!
「…………無事に帰って来れるのか?」
※これより下は作者からのちょっとした懸念に対する補足です。ぶっちゃけ読み飛ばしていただいて結構です。
どうも、作者のテラ・スタディです。今回は「超能力」について少し触れました。そこで一応補足しておきたいのですが、私の知る限り、超能力や人智を超えた力を見たことがありません。当たり前だろと思うかもしれませんが、一応言っておきます。
先ず、超心理学における「超能力」の解説は事実存在するようで、ちゃんと分類されているみたいです。詳しくはネットで調べてみてください。
次に物語上の設定としての「能力」、つまり主人公や言ノ葉文科が使用する力、これは完全なるフィクションです。
既存の超能力と、物語上の能力がごっちゃになってしまうといけないと思い、書きました。この二つは全くの別物です。もう一度言っておきますが、当たり前で常識だと思うかもしれませんが、異能は存在しません。
まぁ、私が見たことないだけで、この現代社会に潜んでいるのかもしれませんが。
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