第15話 戦闘系魔法について考えた Ⅱ
最初に言っておくが、一般人に火炎放射器や電撃(スタンガンなど)を使ってはいけない。にも関わらず、シェーンハイトさんはなりふり構わず魔法を放つ。この国の法、というか倫理、もしくは常識はおかしいのでは?そもそも、何故他人に害をなす魔法が存在するのだろうか?着火の為ならば威力など必要無く、ビリビリボールペンを作りたいなら霹靂である必要もない。ちなみにシェーンハイトさんは他にも、水流や氷柱を使った魔法も使ってきたが、それらも水圧がおかしいなど、容易に殺人ができてしまう程の威力であった。
これらを戦闘系魔法と称するなら、何故このような魔法が開発されたのであろうか?そういえばアリスさんが『危険生物』と言っていたが、それだろうか。その危険生物とやらが何なのかは分からないが、おそらく、一般人もそれらに対抗できる最低限の手段を身につける為に、通常の教育機関でも、このような戦闘系魔法を習わせているのだろう。要するに「命長く欲しいんだったらさぁ。軍隊あてにしちゃダメじゃない?自己防衛(物理)。鍛錬。独立不撓…(軍隊への)依存脱出だよね」精神ということだろう。若しくは、国防軍があてにならないほど弱体化しているかだが。また、あまり考えたくないが、対危険生物ではなく対人間、つまり戦争の為の育成、国民皆兵への布石といったところ。そして最悪は、非戦闘員の自衛目的だろう。
1949年のジュネーヴ諸条約(ジュネーヴ4条約)の第3条約「捕虜の待遇に関する千九百四十九年八月十二日のジュネーヴ条約」と第4条約「戦時における文民の保護に関する千九百四十九年八月十二日のジュネーヴ条約」、そしてジュネーヴ諸条約追加議定書(1977年採択)によって非戦闘員、つまり捕虜や文民に関しての扱いが記されている。その定義に関しては自分で調べて欲しい。
私が言いたいのは、この条約が締結されたのは20世紀の中頃であり、この異世界の年代とは合わないということである。前にも言ったが、この異世界の科学レベルが、よくて19世紀後半であり、またジュネーヴ諸条約のような国際法が締結されるような状況でもないからして、おそらく戦時国際法という概念そのものが、この異世界には無い可能性が高い。また「非戦闘員」の定義が、この異世界では意味を成さないかもしれない。というのも一般人からして、「他人に害をなし得る魔法」が扱えるかどうかが判別できない以上、カオスである。もしかしたら、魔法が扱えるか判別する機構があったとしても、扱えるから戦闘員と看做すことはできないため、どのようにしても行き詰まるだろう。
また、アリスさん曰く、この世界には「ギルド」なるものがあるらしく、この職種も所謂「戦闘能力」を行使して行うため、区別が面倒くさいだろう。
こう考えると、国民が基本的に魔法を習得させておくのは合理的であるとも言える。人道的であるかどうかはさておいて。ともかく結論として、この異世界では、一般人が戦闘系魔法を習得する義務があってもおかしくないということである。怖い世界だねぇ〜。
さて、シェーンハイトさんとの戦闘を終わらせるとしよう。色々な魔法を垣間見ることができて、この日の収穫は十分であろう。
「もう怒りましたわ!先生方には「あまり使うな」と言われていましたが、貴方には、私を馬鹿にしたお礼として、使って差し上げますわ!」
…馬鹿にした記憶が無いが、もし彼女の攻撃を往なしていたことが癇に障ったのだろうか。何はともあれ、次の魔法は凄いらしい。
「!」
…なんか彼女がやったらしい。特に何も変わってな……あ〜成る程、そういう事か。たしかにこの魔法は禁止するほど非人道的だな。私には効かないが。
「な…!?なんで立っていられますの!?」
「おそらく貴方が行使したのは「精神に異常をきたす魔法」なのでしょう?まぁその原理は全くもって分かりませんが、その対象が「私」である以上、「私に見えるもの」に行使しても意味がなくなるでしょう」
「な、何を意味の分からないことを…!」
「う〜ん、そうですねぇ。簡単に言えば、貴方が見ている私は、レンズに映った像のように、実際の私では無いのですよ」
「?」
意味が分かってないらしい。ネタは簡単で、マジシャンが鏡を使って周りの風景に同化するように、光の方向を捻じ曲げるといったものだ。ちなみに私は今、彼女の頭上にいる。
「さて、もう終わりにしましょう。お腹が空きました」
痛みを伴わない方法を行使する。要するに彼女の足を脱力させ、立てなくすればよい。その方法は詳しくは言えないが、彼女が痛みを感じないため、これが一番平和的な方法だろう。膝カックンと迷ったけど。
「あ…」
思惑通り彼女は膝から落ちた。
「どう足に命令しても立てないと思いますよ。潔く降参してください」
「…降参しますわ…」
意外と潔いな。もっといちゃもんつけられると思ったが、ルールに関しては従順らしい。
「もう立てますよ。それでは私たちはこれで」
シェーンハイトさんはそのまま崩れ落ちている。そのままプライドも粉々になったのだろう。それにしても精神に干渉する魔法があるのか。怖いねぇ〜。
「お疲れさまです、コウさん!」
「疲れてはいませんよ。強いて言えば、少しばかり空腹ですが」
「では、何か食べていきましょう!」
「そうですね」
さて、魚料理を食べに行こう。まぁこの世界の魚の骨がどのように分布してるかが気になるところではあるが…。
ゲテモノだったらどうしよう…。
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