第11話 学問について考えた

 「天は人の上に人を造らず人の下に人を造らず」という言葉だけをとってきて、平等を説こうとする愚人にこそ、学問をすゝめたいものだ。福沢諭吉の主張はその次であるというのに。君達が、学問する賢人であることを願うばかりだ。

 この世に無駄な学びなど無いと、私は信じている。たとえこの異世界で、魔法を扱う者が優位に見られるとしても、その魔法も他の科学が元にある以上、当たり前だろう。


 アリスさんが通っていた学園に向かう途中、この世界の学問について、アリスさんに聞いていた。


「…なるほど。つまり、魔法に関する学問は、自然科学などの分野では無く、「魔法科学」という一つの科学の分野に集約されているんですね」

「はい。魔法科学の内で、理論や実用に分かれているんです」


科学と聞くと、物理や化学と言った、高校で習う理科を思い浮かべるかもしれないが、厳密に言えば、それらは自然科学や応用科学、易しいところならば基礎科学の一部である。

 改めて科学の種類を言っておこう。公理や理論からの推論のみで結果を導く「形式科学」。自然における法則性を明らかにする「自然科学」。人間の社会を科学的に探求する「社会科学」。人間や人為の所産を研究する「人文科学」。そして、各学問の応用部分を扱う「応用科学」。この五つが大まかな科学の分類である。しかし、完全に区分けされているわけでは無く、一つの学問が複数の科学に跨っていることもある。そこは注意して欲しい。

 さて、此処からが本題なのだが、アリスさんによれば、この異世界には六つ目の科学である「魔法科学」というのが存在するらしい。そしてその内には、「理論魔法学」「応用魔法学」「基礎魔法学」など、多岐に渡る学問があるらしい。まぁ何を研究するかは、きっと言葉通りなのだろう。


「応用魔法学って何をするんですか?」

「応用、つまり専門的な魔法の研究と習得です。以前、洋服屋で驚かれていた染色の魔法も、この応用魔法学の範疇と言っても過言では無いと思います」

「ほ〜」


意外としっかりした学術体系が構築されていて、吃驚している。


「ですが、応用科学の中でも特殊な「軍事魔法」については、一般的な学校では扱わず、軍学校でしか学びません」

「この国軍隊あるんですか?」

「はい。主に、国家防衛と対危険生物戦闘を担っています」

「へ〜」


士官学校では、戦時国際法などの法学や政治学など様々な学問の知識を身につけるという。そして更に魔法も覚えるらしい。どの世界でも、軍人さんは大変なんだなぁ。


「…あの…ちゃんと聞いてますか?」

「勿論聞いてますよ。すいません。考えながら話を聞くと、相槌ばかりになってしまうのです」

「そうなんですか…あ!見えましたよ!あの区画が私の通っていた学園です!」


そう言われて能力を使って全体を把握したのだが…。


「…でかくないですか?」

「?、普通くらいだと思いますよ」


 教育に対する力の入れようは、異世界の方が明らかに上だな。

 日本も見習うべきだな、こりゃ。

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