第2話 世界について考えた
もし私が植物なら、此処より光合成に適した場所は無いと言える程、見晴らしの良い平原にいる。爆撃したとしても、穴が現れるだけで、人がいなければ、意味も無くなるだろう。最も爆撃は、兵力を削ぐのではなく、施設などを破壊し、物資を破壊し、士気を無くすことに意味があると私は思うのだが。
さて、この世界に来てから、一度ヒトと出会った事がある。いや、ヒトらしき生物と形容すべきか。解析したところ、基本的には我々ホモ・サピエンスと同じであると思われるが、私の気づかないような僅かな違いがあるかもしれない。というより、この世界には魔法という、にわかには信じがたい代物が存在する以上、同じな訳がない。また、「出会った」というのも語弊が有った。正確には、集団で移動するヒトらしき生物を見たというのが良いだろう。あれはおそらく隊商だろう。まぁ、まだ確定はしていないが、あれを人間と認めよう。
だが、此処で少し疑問がある。そもそもこの世界は何なのか。空を見上げれば、太陽らしき恒星があり、夜には月のような衛星もある。計ってみたが、一日の時間も同じ二十四時間(正確には違うのだが)である。
もう一度言おう。この世界は何なのか。此処はまるで地球ではないか。
考えられる説は、私の中には二つある。
一つは、地球から何光年も離れた、もう観測できる訳がないというような、遠い場所に、偶々地球のような惑星があり、偶々太陽のような恒星があり、偶々人間のような生物がいるという、数学の問題で出されたとしても書きたくないような、分母が途轍もなく大きく、絶望的な確率の上に存在した、奇跡の世界という説。
もう一つは、転換点に何かしらのパラダイムシフトが起き、地球や生物などの条件は一緒のまま、魔法などファンタジー要素が追加された、並行世界であるという説。転換点というのは、よく聞くであろう「歴史的転換点」という言葉から取ったものである。歴史的転換点の例として挙げるなら、織田信長が一番多そうである。桶狭間にしろ、本能寺にしろ。パラダイムシフトというのは、既存の思想や価値観などが劇的に変化する事である。これも例を挙げるなら、コペルニクスとガリレオによる地動説が有名だろう。もし仮に、歴史的転換点に並ぶような、しかし歴史にはならないような昔に、転換点があり、世界の常識そのものが魔法を受け入れるようなパラダイムシフトが起こったとしたら、こんな世界が生まれるのではないだろうか。自分でも支離滅裂で、叩けばホコリだけでなく、クレバスのような欠陥が出てくるような説であると自覚している。だが、私は、二つ目の説を推している。
一つ目の説の真偽の判定は可能であるが、宇宙の探索作業は途轍もなく時間がかかるので、今すべきではないと自覚している。そもそも、パラレルワールドというのがあったとして、何故私は此処にいる?もちろん、ハーンさんに送ってもらったからであるが、それではハーンさんは一体何者だろうか?もし仮に並行世界を観測でき、知覚し、干渉でき、行き来できるような能力なら、話は解決する。さすが不審者、意味不明だ。
「…何か不審者と言われた気がするわ。言うのは勝手だけど、せめて超絶美不審者と言ってほしいものね」
と何処かの誰かさんの願望。
ちなみに、何故この世界に魔法があるのかを知っているのかを話そう。といっても深く言及することもなく、ただ単に、隊商の一人が水を沸かす時に、何もなしに、火をつけていたからである。私が観測できない力の働きがある以上、魔法と言って良いだろう。
それにしてもカップラーメン食べてぇなぁ。パラレルカップラーメンとか売ってねぇかなぁ?
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