第10話後戻りはできない
ついに彼と一つになってしまった。
彼のものが私の体の中に入った瞬間、これまで感じたことのない快感と安心感に心も肉体も支配された。
見上げると黒崎さんも気持ちよさそうな顔をしている。
私で気持ち良くなってくれてすごく嬉しいわ。
やっぱり私はMなのかもね。
彼の呆けたような顔が愛おしく感じる。
今までの人生でセックスを気持ち良く思うことはなかった。
孝文と付き合いたてのころ、彼がコンドームをつけるのを嫌がったのでそのまましたけど案の定妊娠してしまった。
その時は特段なにも思わなかった。
孝文だけが気持ち良くなってあげく、妊娠した。
それなりに彼は責任感が強かったので結婚したけどセックスの本当の気持ち良さは知らないままだった。
だけど、黒崎さんは違った。
嫌な顔一つせずにコンドームをつけてくれた。
それにこの時わかったけどきっと体の相性というのがいいのだろう。
彼が腰を動かす度に快感が波のように押し寄せ、私は羞恥心をかなぐり捨て大きな喘ぎ声をあげた。
彼のざらついた背中に手をのばし、私は両足でがっちりと彼の腰にまきつける。
もう離れたくないわ。
これ程の快楽を知ってしまった以上、もう後戻りはできない。
どうやら彼も絶頂に達したようだ、激しく動いていた腰をとめがくがくと震えながら大きく息を吐いた。
どうやらまた
彼の顔から汗が落ち、私の頬にあたる。
指でなめると塩辛い。
彼のすべてが可愛らしく、愛おしい。
汗すらも。
黒崎さんが私から離れる。
もうぐったりとしているそれからコンドームを外してあげるとたっぷりと精液がたまっている。
いっぱいでたわね。
二回目だというのにこんなに出たのね。
それをティッシュにつつみベッド下のゴミ箱に捨てる。
お掃除フェラというのをしてあげると彼はくすぐったそうにしながらも喜んでくれた。
彼が喜んでくれると私も嬉しい。
結局もう一度、交わり、私は数えきれないほどオーガズムに到達した。
心地よい疲労感に包まれながら事後に抱き合っていたがフロントから電話がかかってきた。
もうすぐでなくてはいけない。
ああ……名残惜しいわ。
このまま黒崎とずっとまどろんでいたいのに。
私たちは急いでシャワーを浴び、身支度を整えて外に出た。
「今日ありがとうございました。とてもよかったわ」
単純な感想だったが心からそう思った。
「僕もです。友希子さんのような美人とこんなことができるなんて夢のようです」
あらっ、そんなこを言って。うれしいじゃないの。
人間というのは褒められるとうれしいものだ。
黒崎さんは照れながらも私のことを美人だとかかわいいとか綺麗だとか言ってくれる。
孝文からはそんなことを言われたのはきっと片手の指の数にも満たないだろう。
私たちはは腕を組みながら最寄駅に迎い、それぞれの家に帰った。
本当はこのままずっとずっと一緒にいたかったけど。
彼と別れなくてはいけないのは本当に残念だわ。
その日から私の生活は確実に変わった。
少しでも時間を見つけては彼と会うようになった。
会えないときはLINEやTwitterのダイレクトメールでやりとりする。
会う度に私たちは体を重ねあい、その回数が増えるつど、快楽の度数は増していった。
これ程までに心も体もぴったりとあうなんて信じられない。
惜しむらくはもっと早くに出会いたかった。
孝文と出会わず、智花を妊娠する前に。
でもその頃は今みたいにネットが発達していなかったので黒崎さんとは出会えなかっだろう。
SNSの発達が彼と出会わせてくれたのだ。だから順番は入れかえることは決してできない。
ある時、娘の智花が私の顔をじっと見つめて言った。
「ママ、最近変わったわね。メイクも全然違うし」
とだ。
さすが智花も女だ。
どうやらうっすらとではあるが気づきだしているようだ。
黒崎さんと会う時間をつくるために夕御飯をスーパーの惣菜なんかで済ませたときもあるし、弁当を作るのを忘れて千円札を持たせたこともある。
このメイクも黒崎さんが似合うと言ってくれたからするようになった。
「友希子さんはハーフみたいにはっきりした顔をしているのでそのメイクとても似合いますよ」
と黒崎さんは言った。
確かに私の顔だちはバタ臭いくっきり顔だ。
智花にはママに似たかったと何度も言われた。
智花は孝文に似た目の細い純和風の顔をしている。
それもかわいいと思うけどね。
それに地味でおとなしめの顔が好みの孝文の前ではこんなメイクは前はしなかった。
でも、今の私は夫の好みよりも黒崎さんの好みを優先させるようになっている。
それに黒崎さんの好みのほうが本来の私に似合っているような気がする。
服装も体のラインがはっきりするようなニットのワンピースなんかを着るようになった。
それは夫の好みとは真逆のものだ。
だけど黒崎さんは友希子さんはスタイルがいいので良く似合いますねと褒めてくれる。
褒められると有頂天になって、より黒崎さんの好みに合わせるようになっていった。
そんな生活もそう長くは続かなかった。
ある日の夜、珍しく家で夕御飯をとることになった孝文だったが一口も手をつけずに黙りこんで椅子に座っていた。
良くみると少し痩せて、憔悴した顔をしている。
もう、せっかく作った料理が冷めちゃうじゃないの。
と私が思っていたら彼が重い口を開いた。
「なあ友希子、俺たちわかれようか……」
と言った。
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