第9話それは終わりの始まり

 その部屋は広くて、落ち着いた雰囲気に満ちていた。

 当たり前だが大きなダブルのベッドが置かれていて、試しに座るとふかふかで触り心地は抜群であった。


「ほら、黒崎さんも座ってみてよ」

 私は言った。


 久しぶりにこんなところに来たのではしゃいでしまう。

 黒崎さんは緊張した面持ちで私の真横に黙って座る。

 やっぱり緊張してるのね。

 肌にびりびりと感じる。

 しかもちょっと震えている。

 私はその手をそっと握る。

 あら手汗で湿っているじゃない。


「ねえ先にシャワー浴びてきてよ」

 私は言う。


 彼は頷き、シャワー室に向かう。

 私はその間に下着姿になり、ガウンを羽織る。

 あーあ、自分から言った事とはいえ、こんなところに来ちゃったわ。

 夫も娘もいるのに自分の欲望を止められなくなっている。

 黒崎さんがシャワーから出てきたので、交代で私もシャワーを浴びる。

 体を綺麗にしなくちゃね。

 熱いシャワーを浴びるともう私の頭の中はこれからの期待でいっぱいだった。

 夫の孝文とは智花が産まれたからさっぱりこういうことはしていない。

 いわゆるセックスレスというやつだ。

 それでも生活はそこそこ充実していると思った。

 娘はかわいいし、夫は気難しいところはあるが生活に困ることはなかったから。

 ただ、黒崎さんの肌の暖かさを知ってしまってから眠ってしまっていた生物としての女性の部分が目を覚ましてしまった。

 私の頭から冷静さは失われ、道徳とか倫理観というものは消え失せていった。


 震える手で彼は私が着ているガウンを脱がす。 

 まじまじと私の裸を見る。

 そんな充血した目で見られると恥ずかしいじゃない。

 私も彼のガウンを脱がす。

 けっこう引き締まっているいい体をしてるじゃない。

 ふかふかのベッドに横たわると黒崎さんが上に重なる。

 小鳥のようなキスから始まり、我慢できなくなった彼は口に舌を入れてきた。

 私はむさぼるように彼の舌を味わった。

 舌を絡めながら、彼のざらざらとした手が私の胸を乱暴にもんでいく。

 彼の欲望のままにされるていると体温が熱くなるのを感じる。

 だんだん気持ち良くなってきたわ。

 体が勝手に反応して声がもれる。

 その声を聞いて彼も興奮してきたようで息をあらげながら私の体をくまなく愛撫する。

 私も手をのばし、彼の股間のものを握る。

 それはすでに鉄のように硬くなっていた。

 強めに握ると彼は痛痒いようでうっとうめいた。私でこんなに興奮してくれいるのね、とても嬉しいわ。

 どうやら私はマゾ気質があるようだ。

 今初めて知る衝撃の事実だわ。

 

 私は彼のガチガチになったものを口にふくむ。


 黒崎さんは女の子みたいにあえぎ声をもらした。

 男の人でも気持ちいいとこんな声をだすんだ。

 楽しくなってきた私は顔を動かし、彼のものを強く吸う。

 吸う度に彼は声をあげる。

 嬉しくなった私は手でしごきながら舌を絡めてさらに強く吸った。

 何度か吸うと唾液がたまりジュバジュバといやらしい音をたてる。

 私もこんなことできるのね。

 かなり前に友達に見せてもらったアダルトビデオの女優さんのようなことをしている。

 私が力をこめて吸っていると生温かいものが口に流れ込んできた。

 どくどくと流れ込んでくる。

 彼のものがびくびくとけいれんしている。

 とめどなく白い粘液がはきだされる。

 それが口のなかに広がる。

 とても苦い。

 急に射精されたので思わず飲み込んでしまった。

 気管にも入ってしまったので大きく咳き込んでしまう。


 私がゴホゴホとしていると黒崎さんが心配そうな顔で背中を撫でてくれる。

「ご、ごめんなさい。つい気持ちよすぎてだしちゃいました」

 すまなそうに彼が言う。


 気管に入ったのは苦しかったけど彼が気持ちよくなってくれるのはそれ以上にうれしい。


「いいのよ。ねえ、気持ちよかった?」

 私はきく。


「ええ、とても」

 彼は頷いた。

 見上げて顔をみると恍惚とした表情をしている。


「じゃあ、今度は私も気持ちよくしてよ」

 私はおねだりする。


 彼が気持ちよくなるのはうれしいけどなんだかずるいわ。

 せっかくだから私も気持ちよくなりたい。

 こんなことは孝文には言ったことないな。


 黒崎さんは返事のかわりに私に口づけする。

 精液を飲んだ口なのに彼はそんなことを一切気にせずに舌を絡めて唾液を吸う。

 彼の固い指が私の肉の割れ目をなでる。

 撫でられる度に私は喘ぎ声ををもらす。

 だんだんと声が荒くなっていく。

 比例して自制心も失くなる。

 指が肉のなかに入り、掻き分けていく。

 私の体の奥深くに入り、指でこすられる。

 彼の指、とても気持ちいい。

 癖になりそう。


「そう、そこよ。奥のところが気持ちいいの」

 私はそうリクエストした。


 こんなことは四十年の人生で誰にも言ったことはない。

 夫の孝文にさえも。

 私は自分自身が気持ち良くなることを優先させた。

 彼には夫に言えないことが言える。

 飾ることなく自分をさらけ出すことができる。

 黒崎さんはゆっくりと私の一番気持ちいいところを刺激する。

 体が心地よい脱力感に包まれる。

 私は思わず彼に抱きつく。

 耐えきれず大きな声を出してしまう。

 もう我慢することはできない。

 どうやら私はオーガズムに達してしまったようだ。

 彼の指だけでいかされてしまった。


 黒崎さんも回復したようでまた彼のものが硬くなっている。


 サイドテーブルに置いてあるコンドームを手に取り、中身をだすとそれをつけてあげる。


 私は大きく体を開き、彼を受け入れた。

 彼の固い物が私の中をかきわけ、入ってくる。

 入れられただけで快感が体をかけめぐる。

 

 ついに私たちは一つにつながった。


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