第4話 ヤバいのは、推しを始めた時から分かっています
「朋美さん、元気なさそうですね……」
「すみません、せっかく誘っていただいたのに。少し気分が優れなくて……」
二股してると考える度に胃が痛いのが原因だ。
罪悪感から彼氏に会うのは控えていたのだが、今日はどうしてもとお願いをされたので、彼氏おすすめのレストランに一緒に来ていた。
「今日はそんな中、来てくれてありがとうございました。最近、朋美さんがなかなか逢ってくれないから、その理由を俺なりに考えていたんですけど、どうしても分からなくて。それで、朋美さんから直接聞くしかないと思ったんです」
「そうですよね……」
これは、もうお互いのためにも本当のことを言うしかないよね。
このままだと、彼氏にも悪いし、私自身も体調不良が続いて倒れてしまう。
「ただ……、少し小耳に挟んだのですが、実は朋美さんには推しのアイドルがいるという話は聞いたんです。でも、そんなことで、恋人との関係を
そんなこと……
ズキッ!
悪気があって言ってるわけではないと分かっているのに、何故か私の胸はひどく傷んだ。
分かってる。
この歳で推しのアイドルに夢中なんて、傍から見たらおかしいよね……
「もし、私がアイドルに夢中だったら、どうしますか?」
「そうですね。たとえそうであったとしても、芸能人の世界と私達の世界は違うものだと分かっていますので、そんなことで嫉妬なんかはしませんよ。それに、結婚したら、それどころじゃなくなるでしょうし。自然に落ち着くようになっていくんじゃないかと思ってます」
そっか、そうだよね。
結婚したら、シュン君のことを応援し続けるなんてこともできなくなるんだよね。
彼氏の言っていることは正しい。
頭では分かってるんだけど……
「私、やっぱり、このままお付き合いを続けることはできません」
「え?」
「推しのアイドルがいることは本当なんです。彼の応援をやめることは、私にはできないので、これ以上彼女で彼女で居続けて、あなたの未来の時間まで奪ってはいけないと思うんです」
私は、思っていることをそのまま伝えた。
「え、推しのアイドルなんかのために、彼氏と別れるの? 本気で言ってるとしたら、ヤバくない?」
「ヤバいのは、推しを始めた時から分かっています。それでも、私は今まで推しを続けてきたんです。あなたと会うずっと前から……」
「そっか、そこまで愚かな人だったとはね。清楚な感じで物腰も柔らかいのに、どうして彼氏がいなかったんだろうと思ってたけど、その理由がやっと分かったよ」
自業自得なのは分かってるけど、そこまで言わなくても……
「あーあ、マジで結婚までしなくてよかった」
あ、ダメだ。
涙が……
「これ以上は見てられないな」
「え?」
涙がこぼれ落ちたその瞬間――
シュン君が目の前に現れて、元彼氏との間に割って入った。
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