第2話 十年以上積み重ねてきた想いは、簡単には消えないみたいです。だから、覚悟してくださいね

 私には、今二人の彼氏がいます。


 いや、ほんと聞こえが悪い。


 こんなこと、誰にも相談できないし……


 心が病みそうだ。


『だから、朋美ともみさん、その責任を取ってください』


 とシュン君に言われて、押し切られてしまったけど。


 よくよく冷静になって考えてみると、結果的にシュン君がアイドルになれたのなら、そんなに私が猛省しないといけないことでもないような。


 しかし、今更、そんなことを言っても後の祭り、私は彼氏に内緒でシュン君とも付き合うことになってしまった。


「うう、胃が痛い……」


 どうやら、私は「モテモテでいいでしょ」と言って振り切れるような性格ではないらしい。


「……でも、推しアイドルでずっと応援し続けてきたシュン君に告白されたのは、正直、嬉しかったんだよね」


 自分でもひどい女だとは思う。


 彼氏には本当に申し訳ないと思う。


 それでも、どうしても私はシュン君に心が惹かれてしまっていた。


 ◇


「あーー!! 言ってしまったーーーーー!!」


 告白なんてするつもりなかったのに。


 彼氏が出来たと聞いたあの日から、朋美さんを困らせないためにも、この想いはもう胸の内にしまっておこうと思っていたのに。


 朋美さんから二十歳はたちの誕生日プレゼントを貰って、タガが外れてしまった。


「いやー、もう、朋美さんのあの笑顔、可愛すぎだから!! 我慢するとか無理だから!!」


 お姉さんのように優しく包み込んでくれる朋美さん。

 

 かと思ったら、昔からの顔馴染みだからか、天真爛漫てんしんらんまんにも接してくれて。


 僕がアイドルを目指し始めたら、一番のファンになって応援し続けてくれた。


「初めて会った時から、ずっとずっと好きだった」


 初めて、朋美さんに逢った時のことは今でも覚えている。


 一目惚れだった。


 それ以来、僕の心は朋美さん一筋で、学校でも色んな女の子から告白されたけど、心に決めた人がいるからと言って断ってきた。


 朋美さんには、ずっと好きだと伝えてきたのに、子どもの恋愛だと思われていたのだろう。

 全く相手にされていなかった。


 唯一の救いは、今まで朋美さんには彼氏がいなかったこと。

 それだけを頼りに、希望を持ち続けていた。


 だから、彼氏が出来たと聞いた時は、本当に絶望して、もうアイドルを辞めようとさえ思った。


 でも、その時も朋美さんが励ましてくれたから、僕はまだアイドルを続けられている。

 

「まあ、その原因を作ったのも、朋美さんなんだけどね」


 僕は思わず苦笑する。


 告白してしまったからには、もう躊躇ちゅうちょはしない。


「十年以上積み重ねてきた想いは、簡単には消えないみたいです。だから、覚悟してくださいね、朋美さん」


 そう口に出して、僕は決意を新たにした。

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