隣に住んでいる年下の推しアイドルから告白されたので、付き合っている彼氏とは別れました

夜炎 伯空

第1話  隣に住んでいる顔馴染みの年下推しアイドルから告白されました

「僕、ずっと前から、朋美ともみさんのことが好きだったんです!!」


「シュン君……」


 私には推しのアイドルがいる。

 

 芸名はシュン、本名は俊也しゅんや

 私よりも八歳年下のアイドルだ。

 

 どうして、アイドルの本名を知っているのかって?


 ストーカーじゃないですよ。


 シュン君の両親と私の両親は学生時代からの親友同士で、あまりにも仲が良いので、家まで隣にしてしまったという話を聞いたことがある。


 私は昔からアイドルが大好きで、シュン君にアイドルの話ばかりしていた影響からか、シュン君もいつの間にかアイドルを目指していた。


 シュン君がかげで努力しながら、アイドル活動を頑張っている姿に私は心を打たれて、以来、シュン君を一番の推しとして応援してきた。 


 そんなシュン君から、本気の告白をされるなんて夢にも思っていなかった……



「で、でも、私には彼氏もいるし……」


 そう、私には一年前から付き合っている彼氏がいるのだ。


「だからです!! 二十歳になった今日、どうして僕が朋美さんに告白したのか分かりませんか?」


「えーと、二十歳になったら僕を恋人にしてくださいとは言われていたけど……」


「それです!! 小さい頃からずっと言っていたのに、どうして、あと一年待ってくれなかったんですか……」


 最後は涙目になりながら、シュン君がそう言った。


「ご、ごめんなさい。シュン君が、そこまで真剣だったとは思わなかったの……」


 シュン君は八歳も年下のアイドルである。

 ライブに行っても、私よりずっと若い子達がメインで盛り上げているので、私はいつも後ろの方からシュン君を応援していた。


 そんな私からすると、まさか、シュン君の恋人発言が、そこまで本気だったとは思えていなかった。


 だから、今の彼氏から付き合ってほしいと言われた時。


 いつまでも、アイドルだけにハマっていてはいけない。

 少しずつでもいいから、地に足をつけて行かないと。


 そう思って、今の彼氏と付き合うことにしたのだが。


 まさか、こんなことになるなんてね……


 私は思わず溜息をついた。


「それにシュン君。せっかくアイドルになれたのに、私なんかと付き合ったら、活動停止に追い込まれてしまうかもしれないよ」


 推しの私としては、それだけは絶対に避けたい。


「……どうして、僕がアイドルを目指したと思っているんですか?」


「え?」


「昔から朋美さんのことが好きだったのに、朋美さんがアイドルの話ばかりしていたからですよ!!」


「そ、そうだったんだぁ……」


 私の言動が、シュン君にそんなに影響を与えてしまっていたなんて。


 そう思って、私は過去の言動を猛省した。 


「だから、朋美さん、その責任を取ってください」


「わ、わたしは、どうしたらいいの?」


 シュン君が望むことなら何だってしたいとは思うけど……


「朋美さん、今日からは僕とも付き合ってください」


「はい、分かりました。って、えぇぇぇぇぇぇぇ!」


 予想外のお願いに、私は驚きを隠せなかった。



 こうして、隣に住んでいる顔馴染みの年下の推しアイドルから告白されて、彼氏には内緒でシュン君とも付き合うことになってしまった。

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