第45話 ダンジョンから帰還
「じゃあまた来るよ」
俺たちはフレイに挨拶すると、転移石に触れた。
フレイはダンジョンマスター権限で、入り口と管理室を繋ぐ石を作り譲ってくれた。
これで今度はすぐ訪れることが出来るようになった。
フレイ自身は今後女神との行動を増やすため、定期的にダンジョンで会う事にした。
ダンジョンの管理と女神の補佐という事でしばらく大変だろうが、せっかく回復したのだし自由に生きてほしい。
守護天使としての性分なのか、世界の為に動く事は苦としていないようだ。
この世界の女神であるゼロは少し人間臭い部分があり、現れた時も仕事が忙しいとブーブー文句を言っていた。
そんな補佐をするフレイは少し大変そうだ、会う時は大目に差し入れをしよう。
「わっ!? 本当に入り口だ!」
転移石で移動してきた俺たちはその感覚に少し慣れない。
いきなり目の前の景色が変わり、素直に驚く。
「クラウといると飽きないわね!」
ミラは相も変わらずお転婆で、人を珍獣か何かだと思っているのだろうか。
この世界では15歳で成人扱いになる。
ミラはもう12歳で、後数年で大人の仲間入りをするのだからもう少し落ち着いて欲しい所だ。
意気揚々と歩くミラを先頭に帰宅した俺たちは、その日から忙しい日々を送る事になった。
ダンジョンで作られる事となった各種ベニリーフを使った化粧品作りを耳にしたマリアが自ら参加すると言い出し、領の一大事業とする事になったのだ。
それほど女性には魅力的な話であり、マリアの目を見た俺は何も言えずに従う。
また来るよ、なんて言った次の日にはダンジョンに戻る事となり、俺は毎日ダンジョンからベニリーフを運ぶ配達屋となっていた。
人員を十分に確保した化粧品作りは瞬く間に進行し、2週間もすれば試作品がある程度出来ていた。
「リザ~……」
制作の勢いが少し収まった頃、俺はダンジョンでテイムしてきたフェニックスのリザに抱き着いて癒されていた。
元はといえば癒しを求めモフモフを探しに行ったのに、帰ってきてみれば怒涛の毎日。
やっと落ち着いて触れ合える時間が出来た俺はモフモフを堪能する。
「チュン!」
そんな俺に対してリザは飯! と言わんばかりに鳴いてくる。
わかってるよ~約束だもんな。
食べたらモフモフさせてくれよ。
そんな事を思いながらリザから離れた俺は食事作りをする事にした。
「よし。 最近自分で作ってなかったし、今まで作らなかった物でも作ろうかな!」
俺は自分のアイテムボックスを見ながら献立を考える。
今まで手にしにくい食材も沢山あったが、ダンジョンのお陰で入手も容易となった。
流通などに乗せるつもりはないが、自分で使う分にはいいのだ。
という事で今日は香辛料を沢山使った豚肉のソテーを作る!
この世界では貴重な調味料や香辛料。
手軽に手に入れる事が出来るようになった今、作れなかった料理が沢山作れるようになった。
その第一歩として、シンプルにスパイスに漬け込んだポークソテーだ。
時間があるときに研究してカレーも食べたいなあ……
おっと、涎が垂れそうになって我に返った俺は早速厨房で準備に取り掛かる。
「クラウ様、料理なさるのですか?」
ミシェルはマリアと共同で料理店を監修するほど料理人としての腕を上げていた。
その知識を渡した俺の料理に興味深々になっていた。
「ダンジョンで手に入れた食材で今まで作れなかった物を作ろうと思ってね」
「私も手伝わせてください!」
そういうミシェルは目を輝かせながら腕まくりをする。
知識に貪欲なのだ、そういう姿勢は嫌いじゃない。
「簡単な料理だからそんなにすることはないけどじゃあこのオーク肉を切ってもらおうかな」
ミシェルに肉を任せて俺はスパイスを含む調味料を混ぜ合わせる。
辛味や香りの強い3種類の香辛料とマンドレイクの茎と葉のすり下ろしたものを入れる。
マンドレイクは薬にもなるが、味自体は部位によりショウガやニンニクのような味がして、俺はマンドレイクのことをマルチな調味料として扱っている。
そこにハニービーの蜜とワインを入れ、塩を加えて混ぜ合わせる。
本当は醬油やみりんのような使い慣れた調味料が欲しいが、今はまだ入手できていない。
今後の課題だ。
「肉は切り分けましたよ……わっ! すごい香りの強い」
その混ぜ合わせた調味料が発する香りに少し驚いたミシェルだったが、不快な感じではなさそうだった。
「これに少し揉みこんで置いておくんだ」
貰った肉に混ぜ合わせた調味料を揉みこみ、少し時間を置く。
そして油を敷いたフライパンで焼くだけで出来上がりだ。
「ふあ、いい匂い」
ミシェルは隣で幸せそうな顔をしてる。
「これはリザ用に焼いたけど、もう少し作って夜に皆で食べようか」
「はい! 準備しますね!」
ミシェルは食べられる事を喜び手際良く準備を始める。
出来上がった料理をリザの所に運ぶと、待ちきれないのかバサバサと羽を動かしそわそわしているリザ。
「待たせたな、ほら」
目の前に焼いたオーク肉を置くと物凄い勢いで食べ始めた。
「そんなにがっつかないでゆっくり食べな」
「チュン!」
返事はするが相変わらず物凄い勢いで食べ続けるリザ。
美味しかったのか大目に焼いて持ってきた肉があっという間になくなっていた。
「クプー」
満足そうにお腹を出して横になるリザ。
喜んでくれたなら何よりだ。
その日の夜家族にも振舞ったが好評だった。
最近はミシェルに任せきりだった食事だが、やっぱり作ったものを喜ばれるのは嬉しいな。
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