第40話 古の守護天使

「ダンジョンマスター?」

 皆は一様に疑問を浮かべる。

 ただ俺は、前の世界の知識がある俺は何となく察していた。



「つまりはこのダンジョンの主で管理人みたいなもの、だよな?」


「その通りです」

 俺の問いかけに素直に応える女性。



「で、そのダンジョンマスターが何でこんな所に?」

 俺はもふもふを得るためにここまでやってきたのだ。

 だが今はそれ以上の出来事で足止めされている。

 さっさと行きたい気持ちとダンジョンマスターへの興味を抱えながら確認を続ける。



「私はこの世界の創成時に創られた守護天使の一人【フレイ】と申します」

 目の前の女性は恥ずかしげも無く天使と自称する。

 普通なら笑い話だが、状況が状況だ。

 恐らく嘘は言っていないだろうと皆も思っているようだ。



「この世界が一度滅びる事となった時、我々守護天使も存在が消え去る寸前までダメージを受けていました。新しく世界を造り直した時に、星のエネルギーを最も吸収出来るようダンジョンが出来、そこへ我々守護天使は眠っていたのです」

 ダンジョンの謎が一瞬で明かされた瞬間だ。

 今まで様々な研究者が挑み続け解明されなかったダンジョン。


 語られなければ俺も一生分かる事は無かったかもしれない。

 ゼロからもそんな話は聞いていなかったな。



「なんかサラっと凄い事言ってる気が……」

 イオは若干引きつった顔でそう呟く。

 毎度気苦労を掛けてしまっているな。



「その守護天使様が今目の前に居るのは何でですか?」


「私がこの世界に姿を持ち移動できるまで回復できた事に対する感謝を、女神様の気配を感じるクラウ様にお伝えしようと」


「俺の事を知っているのか?」


「ダンジョンマスターはダンジョン内の事であれば把握する事が可能です。女神様の力が戻り始め、同時に私へ流れるエネルギーも大きくなりました。未だに声が届く事が無いので心配でしたが、この度やっと自由に移動が可能となったのでこうして現れた次第です」

 俺やミラの問いに丁寧に説明してくれるフレイ。

 女神の力が戻り始めたと気づいたのはこの星の力が増したからか?

 俺には直接ゼロから聞いた事しかわからないが、この世界の力になれたなら嬉しくもある。


 だが連絡の一つも寄こしていないとはどういう事だ。

 仮にも自分の身内だろう、俺に会えるならフレイに会う事などもっと容易い筈。

 少しイラっとしたので、後でゼロに文句を言いに行こう。



「俺も自分の好きに生きていた結果だから、感謝する必要は無いよ」


「そうですよ、寧ろ周りの人間が見張ってないと何をしでかすか」


「皆さんは仲が宜しいのですね、それでは言葉はここまでにして。感謝の印としてプレゼントを差し上げたいのです」


「プレゼント?」

 これ以上世界の管理者側から貰うと自分でも扱いに困る。

 現状でも既にバランス崩壊を起こして、周りのサポートで良い様に回っているのだから。



「クラウ様は、魔物をテイムする為にこちらにお越しになられたのですよね?」


「そんなことまでわかるのか?」


「進む最中ワクワクした顔で何度ももふもふと仰ってましたのを聞いていましたので」

 クスクスと笑うフレイ。

 いいだろ、もふもふ。

 10歳の俺が浮かれて何が悪い。



「私に渡るエネルギーが今後必要と無くなるので、ダンジョンにもっと割くことが出来るのです。今後協力して色々作る事も出来ますが、今は女神様にお会いに行くので魔物を作り出そうと思いまして」

 そういうとフレイはウインドウのような物を開き、画像を見せながら説明を続ける。



「フェンリルでも良いかと思ったのですが、クラウ様に更にお役に立てるよう考えに考え抜きました。それがこのフェニックスです!」

 自信満々にそう告げたフレイの指す先にある画像に、そのフェニックスが映っていた。

 だがしかし、ちょっと待ってくれ。


 フェニックスと言えば炎を纏った巨大な鳥のイメージなのだが。

 これ……スズメだよな?


 前の世界で良く見ていた小鳥に瓜二つな見た目、少し羽毛が多く見えるがそれでもスズメだ。



「これが……フェニックス?」

 俺が少し拍子抜けしてると後ろでイオが興奮している。



「フェニックスといえばその強力な再生能力で不死身と呼ばれる伝説上の魔物ですよ! そしてその羽は最高ランクの回復ポーション【エリクサー】の素材になるとも言われ、記録上では羽一枚に国家予算並みの金額が動いたと言われる」


「でもスズメじゃん」


「スズメ?」

 熱く語り続けるイオに突っ込むが、この世界にスズメは存在しない。

 俺にとっては日常で観られる鳥でも、皆には伝説の魔物としか見えない様だ。



「クラウ様、ご安心下さい。このフェニックスに乗れば羽毛に埋まるほどふかふかで、常に清潔な状態が保たれている上に防寒耐熱機能まであるのでどこでも寝られます!」


「そんな機能まで!」

 フレイの言葉に、新たな知識を蓄えられる喜びでイオが興奮したように続く。

 これじゃ通販番組を観ているようだ。



「どこか納得出来ていない様子ですねえ……ならば現物を見てお決めください! 敵対しないように生み出しますので、テイムはクラウ様がよろしくお願いします。私の作った空間で行いますので、どうぞこちらへお越しください」

 そういうとフレイは新たに扉を生み出して中に入るよう催促する。


 俺達はフレイに続いてその扉に入ると、どこまでも続く一面の花畑と青空が広がる空間にたどり着いた。



※10月17日2話投稿予定です。

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