第39話 謎の扉
「ホーミングレイ」
ダンジョンに入り、俺を先頭にどんどん奥に進む一行。
魔法使いの上級職【魔導士】、僧侶の上級職【ビショップ】をマスターした際に解放される最上級職の一つ【賢者】で覚える魔法であるホーミングレイは、数多くの光の弾を出し、敵対する相手を自動で追尾し攻撃する便利な魔法である。
対多数の戦闘で的確に敵対する相手に攻撃できる光魔法は、ダンジョン内では特に有効だ。
物陰に隠れる魔物さえもターゲットに飛んでいくので、歩みを止める事無く進んでいける。
最上級職は伝説の存在とされ、勇者や賢者、特殊な物だと隠者などが該当する。
この世界では生まれ持つ職があり、それからの変更は不可である。
単純に様々な職をマスター出来る俺だから出来る力技ではあるが、役に立つので問題は無い。
イオは文化・生産系の職を多く取り、商人や学者、薬師なども取っているのだが、魔法系を進めている内に複合職【錬金術師】に付いた。
生産寄りではあるが、想像で様々なアイテムを作り出せる。
金属の細かな加工に関しては鍛治師より上だろう。
戦闘でも周りの土や石などを使った攻撃や防御の他、自然の分子を利用した爆発や電気などを武器に戦える。
イオもそうだが、俺の周りは強者が集まっている。
心強い反面怒らせたら怖いので、自制心にも繋がる存在だ。
だとしても今回のもふもふ大作戦は成功させねばならない。
俺の生活の向上のため!
勿論テイムした魔物には元の生活では考えられないほどの贅沢を与える予定だ。
身勝手な願いで連れて行くのだから、同意するスキルを使ったとはいえ不便は掛けさせない。
「もうそろそろ目的の階層に着くかな?」
俺達はあっという間にダンジョン中層と呼ばれる40階層に到着した。
途中のボスたちも散歩ついでに倒してきたのだが、余りにも扱いが酷くてこちらが申し訳なくなる。
「クラウ様が居れば、ダンジョンも観光地ですね」
イオは俺の後ろに着いて来ながらも最低限の警戒以外はせずにのんびりしている。
勿論この世界でダンジョンの中層と言えば、ベテランの冒険者が必死にたどり着くような難易度だ。
このダンジョンの過去最高到達階は75層。
そこはマグマ溢れる環境で、魔法系の補助が無ければ数分も持たないのだが出て来る敵もドラゴン系や特殊な鉱石で出来たゴーレムなどが跋扈しているらしい。
これまでボスとして存在するレベルの敵が雑魚のように溢れかえる世界は、超人でも突破は難しいのだ。
行けない事も無いかもしれないが、俺は憂いが無いよう今も鍛錬を続けて準備を整えている。
40層のボスを倒し、目的の草原エリアに行こうと階段に向かう途中にある物を見掛けた俺は皆に問いかける。
「なあ、この扉はなんだ?」
階段のある場所まで進んだ時、違和感を覚えた。
いつもはボス部屋から出たら、その階層らしい空間に階段がポツンとあるだけだ。
しかし今俺の目の前には階段、そしてその手前に扉がある。
明らかにポツンと浮かぶその扉に戸惑っているが、皆も知らないらしい。
扉のノブを回すと、鍵は掛かっていない様だ。
「お止めくださいクラウ様! 何があるか分からないまま入るのは危険です!」
イオは当然の戒めをしてくる。
ダンジョンは未だに謎が多く、研究者たちも日々考察や研究をしている。
そんな目の前に明らかに浮いた存在の扉。
これで入らないのは用意してくれたダンジョンに失礼だろう。
「と、いう事で」
「何一人で納得してるんですかあ!?」
イオは流れるツッコミをしてくる。
出会った頃は華奢な村の子供だったイオも、既に15歳。
俺は腕を引かれ扉から離される。
「離せイオ! 俺には行かねば為らぬ理由があるんだ!」
「またそうやって後先考えずに! 貴方に死なれたらどれだけの人が困ると思ってるんだ!」
「二人とも落ち着きなさい!」
ミラが一喝すると、俺達は静かになる。
「確かに危険かもしれない、けどそれ以上にワクワクしないか?」
俺はミラにそう問いかける。
味方を作れば多数決で俺の案が通るだろう。
周りを囲い込む作戦だ。
「それは確かにそうだけど、イオが言うのも間違いじゃないわよ」
「うんうん」
と、ミラの言葉に大きく頷くイオ。
「てことで、扉には私が入るわね!」
「「「ミラ(様)!?」」」
第三の案に思わず揃う一同。
「クラウは今この国の最重要人物だし、イオはその補佐。ミシェルは戦闘出来るとは言え最低限よ。私は探知系スキルも揃ってるしいざって時に対応できる。でしょ?」
「それはそうかもしれないけど、危険な真似はさせられないよ」
少し頭が冷えた俺は、ミラを止める事にした。
流石に姉に好奇心で危険な真似はさせられない。
「なんでよ! クラウだって入る気満々だったじゃない!」
「ミラ姉さんのお陰で頭が冷えたよ……」
そんな事を言ってると、勝手に目の前の扉が開いた。
余りの驚きに体が固まっていると、中から人がひょこっと顔を出す。
「すみません、驚かせましたよね」
「……誰ですか?」
俺はこの非現実的な状況に陥りながら妙に冷静に返事をしていた。
「私、こういう者です」
そういうと目の前の女性はステータスボードの様な物を表示させた。
そこに表示されていたのは
【ダンジョンマスター】
という文字だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます