第17話 合宿準備
ボスを討伐した日はそのまま帰り、自宅でゆっくりと寝た。
初のボス戦もあり皆ぐっすりだった。
テリーは「ボスなんてとんでもない!」と大慌てだったが、マリアに宥められていた。
次の日はダンジョンに潜る準備をする為休日にした。
ちなみに昨日1日で商人スキルがマックスまで上がり、無事アイテムボックスを手に入れた。
大きさは10m四方程度で、中に入れても時間停止などの機能は無い。
それでもこれだけ多くの荷物を手軽に持ち歩けるのは便利だ。
これを持つ商人が大成するのも納得する。
俺はアイテムボックスを最大限生かしたレベル上げを皆に提案した。
「強化合宿?」
「そう、俺がアイテムボックスを手に入れてそれなりに物を持ち運べるでしょ?」
「……お泊り」
「楽しそうね!」
皆に提案すると割と好印象な返事が返ってきた。
とはいえ短期の予定だ、長く空けるのは特にテリーの心が危ない。
説得はライルとミラが担当してくれた。
なんだかんだで初めての外泊、貴族という立場もあるが中々経験出来ない事で、ミラはテンションが上がっている。
テリーはギリギリまで抵抗していたが、マリアも加わり説得される。
ただし流石の外泊だ、テリーも条件を出してきた。
メイドのミシェルと兵士長のジャンを帯同させる事。
二人の指示は絶対。
危険な可能性がわずかでもあれば必ず帰還する。
流石に流れで折れる事はしなかったテリー。
俺も家族を鍛えた後に領民から選抜してほしいという話もしていたし、モデルとしても丁度いいなと思っている。
今はミシェルと共に買い出しに出かけていた。
「クラウ様、あれもお願いします」
ミシェルはぼっちゃまと呼んでいたが、今では名前呼びになっていた。
昔はわんぱくで手の掛かる子供だったのに、しっかりしすぎて逆に寂しいらしい。
「本当にこんなに買ってもいいのですか?」
「ああ、持ち歩きは出来るし大丈夫。野ざらしと違って快適な空間だから悪くなるのも遅いよ」
旅の食事といえば干し肉や黒パンなどを日持ちしかさ張らない物が基本だ。
アイテムボックスがあればそんな心配もしなくていい。
流石に長期となれば持たなくなる食材も出て来るが、今回はそんなに長い外出にはならない。
調理器具も持ち込めばキャンプのような事も可能だ。
「ホント便利ですね、私も欲しいです」
「ミシェルも俺と魔物討伐していれば手に入るよ?」
「ホントですか? ホントですよね、実際私も料理人になっていますし」
家の料理はミシェルが担当していたのだが、マリアが料理人に転職し腕が上がったためミシェルにもお願いされ転職させていた。
今ではマリアとミシェルが2人で料理を行っているが、マリアはこの時間がとても楽しいそうなのでミシェルも了承していた。
「あ、あれも買ってください!」
「ほどほどにね……」
今回の費用はポーション作りなどで得た俺持ちだ。
準備を終えた俺達はダンジョンに向かう。
「よろしくお願いします」
「こちらこそよろしく」
ジャンにはミシェルの護衛を最優先に行ってもらう。
兵士長に付いてるだけあって、戦闘力はそこそこ高い。
ミシェルには商人のレベル上げをお願いされたが、最低限自分を守れる事が優先という事でとりあえず魔法使いの職に就いて貰った。
共有というスキルで反映される人数制限などは実際に行ってみないとわからないので、向こうで試す。
「しっかしクラウ坊ちゃんは随分と特別な力を手に入れたもんですね」
「ははは」
「決して外には漏らさないので、安心してください」
今回帯同するにあたってジャンにはテリーから報告を受けている。
そうそう公に出来るものでは無いが、信頼できる身内が増える事は心強い。
ジャンは槍使いという職に就いていた。
兵士長なだけあって槍使いの職レベルはマックスまで修練されている。
普通はここからレベルと元々本人の持つ潜在能力に左右されるのだが、俺がいるので騎士に変更させて貰った。
騎士は上級職の1つだが、槍使いをマックスにしていると転職出来る様だ。
俺の職業一覧には表示されていない。
「自分が騎士になれるとは……感激です! 一生忠誠を誓います」
「そんな大げさな、でもありがとう」
転職させた時にジャンはとても喜んでくれたので、騎士について聞いてみた。
王都に存在する兵士の中でも騎士は重宝され、近衛兵の中では一番割合が多い職になるらしい。
上級職なだけあって、その職に就けた人間はエリートコースを辿るようだ。
「腕がなりますなあ!」
「今回はミシェルの護衛を優先でお願いね?」
「もちろんですとも!」
ふんと鼻息荒くしているジャン、本当に分かってるんだろうか。
さあ試す事も沢山あるが、俺の計画が本格始動だ。
2泊3日の強化合宿が始まる。
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