第15話 レベル上げ効率

 一度戻ってきた俺達は、誰かにつけられている訳でもないのにそわそわしながら家路に付く。

 幸運のクローバーが原因だ。


 年に数回しか遭遇報告が無く、一定以上の実力が無ければ倒せる確率も低い。

 倒せる人間が遭遇し倒しても、落とす可能性が低い。

 なので世に出回るのが稀な上、効果も唯一な物。

 値段を付けようものなら目が飛び出るようなアイテムだ。



「ただいまー」


「予定より早いな、怪我をしたのか!?」

 俺達が家に着くと、直ぐにテリーがやってきた。



「いや、怪我はしてないけど……」


「どうした、皆変な顔して」


「父さん、これです」

 ライルがテリーに手渡す。

 それを見たテリーは一度疑問の表情を浮かべるが、直ぐにピンと来たのかワナワナと震え出した。



「こ、これは……」


「クラウがクローバーラビットを討伐した際に落としました」

 ライルがそういうと、テリーは頭を抱える。



「売れば領の予算が……だがこれは王に報告して、献上せねばならんか……」

 滅多にお目に掛かれないアイテムを手に、あれこれ思考を巡らせているようだ。



「父さん、俺に提案があります」


「なんだクラウ、言ってみなさい」


「王の献上品にしましょう、品としては十分だと思います。当初の計画通りある程度の基盤が出来るまで待ってください。それまで俺に持たせてくれませんか

 ?」


「こんな高価な物を持っていたら、誰に狙われるかわからんぞ!?」


「大丈夫です、考えはあります」

 この世界ではダンジョンで物を落とす時、荷物持ちのポーターが回収する。

 俺達は一度にそこまで長く潜る予定はなかったので、連れてきていなかった。


 アイテム袋という見た目以上に物が入るアイテムも存在するが、効果の通り値段がとてつもなく高い。

 なので人を雇い連れて行くかパーティの1人として連れて行くのが通常だ。


 だが大成功している商人の中には、アイテムボックスというスキルを覚えている人が居るという。

 アイテム袋のように物が入るスキルで、滅多に持っている人間はいないが実在するスキルだ。


 俺は商人の職を鍛えれば、このスキルを手に入れられるのではないかと踏んでいる。

 予定ではもう少し後に試そうと思っていたが、今日改めて幸運値の効果を確認して必要性を十二分に感じた。



「なるほど……それならば気づかれないか」


「ダンジョン内に入ってる間だけ装備すれば、恩恵も得られバレる可能性もかなり低いと思います」


「ではスキルを取るまで父さんが厳重に預かっておく」


「わかりました、お願いします」

 ということで、俺は商人の職に早速変更した。

 魔物使いは、先程の戦闘で熟練度がマックスになっていた。

 流石レアモンスター、討伐難易度に合ったものだ。

 それにレベルも10程上がって、能力も相当上がっている。


 魔物使いが極められたお陰でスキルを何個か覚えたが、予想していない物まで覚えていた。

 技能【共有】スキルだ。

 これは自分と共に戦ったものと経験を分かち合う。

 つまりパーティ戦闘を行えば皆に経験値が分配されるのだ。


 本来は魔物使いが従魔の戦闘で経験を得るものだろうが、これを一緒に組んだパーティに分配できれば……

 計画は更に成功率を増した。


 俺は心の中で邪悪な笑いを浮かべている。



「ライル兄さん、クラウが変な顔してる」


「ミラ、余り見るんじゃない」


「そんなクラウも素敵」

 ライルとミラは少し呆れ、マックスは謎に好感度が上がっている事も知らずにクラウは今後の予定を考える。

 次のダンジョン探索が楽しみだ。


 皆にも俺が新しく覚えたスキルの事を報告すると、更にやる気を出してくれた。

 ユニークスキル【成長促進大】も皆に適応されるのかしっかり確認しておきたい。





 次の日も早速ダンジョンに潜る。


 1層は敵ではなかったので、最短で進む。

 俺が先導して次々敵を倒したのでかなり時間が短縮できた。


 2層に着いた時に皆のステータスを確認させてもらう。

 俺の共有がどの様に効いているかの確認だ。


 どうやら【成長促進大】は皆にまで適応されないようだった。

 だがゴブリンが主な1層で皆の職業の熟練度が20程度上昇している。

 分散では無く、パーティ全員に1体分の経験値の上昇を確認できた。

 少し深い階層に潜れば、予定よりも早く成長を見込める。


 俺はその事を皆に報告すると、俺先導でどんどん潜る事に賛成してくれた。

 命の危険を感じるギリギリの階層までは潜ろうという話で一致。

 俺を先導に次々進むことに。


 そのまま3層、4層……と進み、俺達は10層まで潜っていた。

 目の前には大きな扉が付いている部屋。



「これがボス部屋か……」

 俺達はこの先に進むかどうか相談する事になった。

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