第14話 レアモンスター
2層に入った俺達は、相変わらず楽に戦闘を熟していた。
ミラの索敵にライルの剣、マックスの魔法と元々のステータスの高さのお陰で低階層で苦戦はしない。
俺があまり戦わせて貰えないのは除いて。
「そういえばダンジョンの魔物は不思議だね、倒したら消えちゃう」
「ダンジョンが吸収している、という説があるよ。生み出すのもそうだけど、ホント不思議な場所だ」
俺はライルに色々質問しながら歩いている。
ダンジョンの魔物は地上とは違い、倒すと体が残らない。
その代わりたまにアイテムを残すことがある。
地上とのルールの違いは沢山あるが、このアイテムはダンジョンでしか手に入らない物が沢山あり、それを目当てに冒険者が訪れる事だ。
これもダンジョンの狙いだとしたら、人間は手のひらで踊らされているのかもしれない。
「この調子でどんどん狩れば、僕たちも強くなれるね」
「クラウのお陰……」
「ホントね、回復魔法と索敵があるだけでこんなに楽になるなんて」
兄妹達はずっと俺を褒めてくれる。
確かに俺の力は唯一の力を秘めているが、色々な職を極める事が出来る事が強みだ。
今の時点では、本人たちの元々持っている能力が高いからこその戦闘の優位がある。
今後領民を連れて来る時は、細心の注意をしなければいけない。
「兄さん達は元々強いんだから、俺が居なくてもこれ位出来るよ」
「そうだとしても、ここまで楽には」
「ちょっと待って、敵よ」
兄弟らしからぬ持ち上げ合戦をしていると、ミラが索敵で敵を補足したようだ。
俺達は注意深くその地点へ向かう。
「あれは!」
「ライル兄さん、知ってるの?」
「ああ、あいつは凄いぞ」
興奮気味で説明不足になってるライル。
俺は完全鑑定を使う。
クローバーラビット
滅多に現れないダンジョンのレアモンスター
逃げ足が速く、倒せずに逃げられることも多い。
通常のモンスターより多く経験を積める。
ドロップは人間達に人気がある。
モンスターを鑑定すると、俺が知りたい情報を見られた。
レアモンスター……前世でゲーマーだった俺の欲を掻き立てる。
「皆、こいつは俺にやらせてくれ」
「クラウが?」
「クラウなら大丈夫……」
「倒しちゃいなさい!」
俺がお願いすると、皆簡単に了承してくれた。
低階層ではまだパーティ戦闘らしい戦闘はしていない。
各々がソロでも十分戦える為、俺の出番はなかった。
「キュキュ……」
「……」
俺はクローバーラビットと対峙する。
向こうはいつでも逃げる準備をしていた。
情報を見る限り、とても素早いだろう。
「アースウォール!」
「キュ!?」
まず俺は逃げ道を塞ぐ。
このアースウォールはBランクの基本属性魔法だが、俺は試していく内に魔力の込め方で魔法の威力を変わる事を確認していた。
クローバーラビットの後ろに土の壁を作り、逃げ道が無くなる程大きく遮る。
そうすることでクローバーラビットはこちらにしか逃げ道は無くなる。
「キュ!」
予想通りこちらへものすごい勢いで走ってくる。
「速い!?」
ミラは目が追い付いてない様だ。
だが俺も神様から貰ったユニ―クスキルのお陰で相当速さが上がっている。
「そこ!」
「キュ!?」
俺は横を通り抜けようとするクローバーラビットに一閃。
上手くヒットし、そのまま消える。
滅多に現れなくとても素早いクローバーラビットを倒せた。
「クラウ! 凄い!」
「当たり前……」
「ちょっと待って、アイテムが落ちてるよ!」
ライルが消えたクローバーラビットの場所を指さし、大声で叫ぶ。
こんなにはしゃいでいるライル兄さんも珍しい。
「四葉のクローバー?」
俺は前世で見覚えのあるアイテムを拾い、完全鑑定を掛ける。
幸運のブローチ レア度S
ユニークスキル【幸運】付与
持っているだけで良い事が起こりやすくなる。
「幸運のブローチだって」
「「「え!?」」」
皆が今日一番の驚きを見せる。
「クラウ……いったん帰ろう」
「どうしてライル兄さん」
「幸運のブローチは……国宝レベルのアイテムだ」
「ええ!?」
今度は俺が大きく驚いた。
出現率が低く、討伐難度が高く、それでいて確率でしか落とさないアイテム。
それがレア度Sの幸運のブローチだ。
俺のステータスで特に高い幸運値が気になっていたが、ここに来て影響したか……
俺達は来た時の何倍も真剣にダンジョンから出る事にした。
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