第13話 ダンジョン1層

 俺達はゆっくりダンジョンの中に入っていった。

 ダンジョン内は薄暗いのだが、何故か少し見える程度には明るさがある。

 光が入る場所など無いので、これも世界の不思議の一つとして受け入れる。



「ミラ、索敵は出来てるか?」


「大丈夫よライル兄さん。今のところは近くに居ない」

 俺にくっついたままのミラが仕事をしているか確認を怠らないライルだが、しっかりと索敵しているようで安心だ。


 俺も時間があれば沢山スキルを見つけていきたいが、まずは最優先の職から取っていく。



「それにしても不思議だね、まるで別の世界みたい」


「クラウとミラは初めてだったな。ダンジョンが別世界というのは間違いではないかもしれないぞ?」


「え?」

 思わぬ返答に驚く俺。

 別の世界から来た世界に更に別世界があるとはこれいかに。



「このダンジョンというのはまだ解明されている事がほぼ無いんだ。いつの間にか出来上がり、モンスターや宝箱が産まれてな。光が無いのに真っ暗では無い空間も、地下深くに潜って息が出来るのも、地上とは根本的にルールが違うらしい。だから別世界なんて言う研究者もいるんだよ」


「へぇー物知りですね!」


「まあこのくらいはクラウならすぐ学べるよ」

 少し嬉しそうなライルだが、言ってる事は興味深かった。


 前の世界ではトンネルなんかを掘る時に、距離に応じて空気を送る機材なんかを用意して、空気の循環を行っていた。

 地下一階とかなら大丈夫だろうが、この世界には地下深くまで続くダンジョンが多数存在する。


 現時点で解明できてないのも含め、頭で考えても理解は到底出来ないだろう。

 気を引き締めて辺りを注意深く見る。



「まって!……あの道の陰に何かいる」

 少し歩いているとミラは俺達に向かってそう呼びかける。

 わざと物音を出すように落ちている小石を投げると、3体の魔物が飛び出してきた。


「あれはゴブリンだね」

 気を抜きすぎない程度に楽にしているライルが皆に伝える。


 この世界の魔物は動物型が多い。

 だがダンジョンになると、ゴブリンやオーガ、スケルトンなどの人型なども出て来る。


 それがこのダンジョンが別世界と言われる理由の一つでもあるかもしれない。



「まずは僕が倒すよ、クラウ達は周りを警戒していてね」

 ライルはそう言うと剣を抜き、ゴブリンに向かって行く。



「やあ!」

「ギ!?」

「ギャ!」

「グエ」

 ライルが間合いを詰めると、あっという間に3体のゴブリンは断末魔を上げた。



「周りはどうだい?」


「大丈夫、この付近にはこの3体しかいなかったわ」

 余裕そうなライルと当たり前という感じのミラ。

 俺もこの能力が無ければ、今の動きは見えなかっただろう。



「経験値はどう?」


「ちょっと待ってね……うん、上がってるよ!」

 クラウの完全鑑定は熟練度とユニークスキルまで見れる優れものだ。

 本来熟練度という存在は認知されていなかったので、成長の指標を判断出来るクラウの強みの1つだ。



「よし、気を抜かずどんどん行こう」

 ライルがそう言うと、更に探索を続ける。


 進む先に居る敵を次々倒し、一層の階段までたどり着いた。

 予定では今日は一層のみで終わろうという話だったが、想定以上に皆力を付けていた為ものすごいスピードで到達していた。



「思ったよりも手ごたえが無かったな」


「クラウの力で沢山色々な事が出来るようになってるしね」

 さっきまで静かだったマックスが嬉しそうに言う。


 本来剣しか使えないライルも簡単な魔法を使えるし、回復魔法が使える人間も複数居る。

 更にミラが索敵してくれるお陰で不意打ちなどの危険性がかなり下がる。

 盤石なジャンダークパーティはあっという間に進めるのだ。



「兵たちとダンジョンに向かう時もこんな簡単ではなかったのにね。今日はここまでの予定だったけど、皆の意見は?」


「行こう!」


「クラウが行くなら……」

 ミラとマックスは乗り気の様だ。

 正直まだ俺はまったく手を出していない。

 いざとなれば魔法と回復で何とかなるだろう。



「ライル兄ちゃんが危険だと判断していないなら、進もう」


「そうか、じゃあもう一層進もう。少し敵も強くなるから気を付けてくれ」

 リーダーのライルのゴーサインを貰った俺達は、次の層に進む。

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