第6話 才能の芽生え
その日から俺は剣の稽古に打ち込んだ。
魔法にしか興味を示さないマックスとマリアを除き、朝の稽古には家族が集まる。
「はっ! はっ!」
俺はひたすら素振りを行う。
基礎の形と体力作りの繰り返しだ。
テリーはライルとミラを相手取り、1対2の打ち合いをしている。
「せい!」
「やあ!」
ライルとミラは子供とは思えぬスピードで打ち込む。
「うんうん」
だがテリーには届かない。
嬉しそうな顔をしながら剣を受け流すテリー。
ジャンダーク男爵は父テリーが冒険者として名声を集め興された。
そこにテリエーヌ子爵の令嬢であるマリアが嫁ぎ、立場は安定している。
テリーは冒険者時代【迅速の二刀】と二つ名を与えられるほどの腕前だ。
隣国との戦争では数々の功績を打ち立て、未だに恐れられているらしい。
今はニコニコと子供相手に剣を振るっているが、鬼とも呼ばれるほどの剣豪だ。
そんな余裕そうな素振りを見せる父と子の打ち合いを横目に俺はひたすら剣を振る。
なんせこの素振り、楽しい。
最初の頃は家族に止められて愚図る程度には打ち込んでいる。
体に精神年齢も少し引っ張られているようだが、今は家族に思いっきり甘えている。
ひたすら繰り返す素振りの何が楽しいのか?
「それは熟練度の上昇があるからだ!」
思わず声に出てしまったようで、3人に変な目で見られてしまった。
気を取り直し素振りを再開する。
剣の稽古を始める前は 0/1000 だった剣士の熟練度。
だが今は 152/1000 まで上昇している。
特に最初の頃は伸びがとても良かった。
最初の10振りは1ずつ伸び、そこから少しずつ減少しているが1週間でここまで伸びていた。
ちなみに今のステータスはこうだ。
クラウ・ジャンダーク
年齢3歳
レベル1 職業 剣士(152/1000)
体力 10(+15)
魔力 10
腕力 3(+15)
知力 5
敏捷 5
器用 3(+10)
運命力 100
魔法 無し
スキル スラッシュ
技能 剣術D
この結果を顧みて、俺の推測はこうだ。
レベルは肉体的な成長や実戦でしか成長しない。
流石に基礎訓練を1週間行う程度では上昇しないようだ。
その代わり剣士の熟練度は剣を扱う時間で成長する。
これは生産職ならそれに合う作業でも上がるのだろう。
だが一つの職を極めるのにこのスピードは普通ではありえない。
成長促進大の影響をもろに受けているのだろう。
だから楽しい。
自分の行動が影響する、成長するのが目に見えて分かるのだ。
これが素振りから打ち合い、更に実戦となれば伸びるスピードも変わるだろう。
だが今はその時ではない。
素振りで基礎的な能力を向上させる事に取り組む。
「ふむ……」
ひたすらに剣を振るう俺を見て、テリーは何かを考える。
「どうしたの?」
「いや、クラウはどうしてそんなに楽しそうなのかなって思ってな」
テリーは少なくとも数多くの新人を目にしていただろう。
その中でも特段楽しそうに素振りをする俺を見て、疑問に思うようだ。
「こうして剣を振る事で少しでも強くなる事が嬉しくて!」
俺は嘘は言っていない。
前世のゲームではレベル上げの虫だったのだ。
数値の上昇を目にしているのはとても楽しいのだ。
「クラウはとてつもない才能を持っているのかもな」
「!?」
テリーは何かを察したのか、思わぬ言葉を投げかけて来た。
確かにこの一週間で剣の振りが様になってきている。
能力が無いと鑑定で示された俺では違和感があったか。
「努力する才能だよ。自身の成長を楽しんでひたすら繰り返すのは、中々出来ないからな」
そういうと「流石我が息子だ」と頷きながら満足するテリー。
親バカで良かった。
そうして剣を振り続けて一月程経ったある日、テリーから打ち合いの提案があった。
「そろそろ一度力を見せてみろ」
俺はテリーと打ち合いの稽古をすることになった。
クラウという才能が、知られる日が来た。
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