第3話 村を襲う山賊狩り
「ヤァヤァヤァ! 吾輩こそは強さを求める戦士レッド! 汝、強者とお見受けした! いざいざいざ、戦おう!」
狂戦士レッドは村を襲う山賊たちにそう声を掛けた。いい笑顔で。
山賊たちは今、村人を血が出るまで殴ったり、村の倉庫から食料を盗ったりしている。その中に彼女は現れ意気揚々と名乗りを上げたのである。
「あァ? 何いってんだテメェ」
山賊の一人がそう返した。当たり前の反応だ。
「諸君、吾輩と戦おう!」
冷たくされてもなお、彼女は声を張り上げた。
「……」「……」「……おい、どうする?」「狂人の相手をするのか?」「ま、やり合いたいってんならやるしかないだろ」「邪魔っぽいしな」
――――斯くして『山賊VSレッド』、決戦!
と思いきや、何処からともなくポンと煙幕玉が投げられた。途端に何も見えなくなる。
「うわ、真っ白」「何、何何?」「ちょっ、俺の剣何処行った?」「イテッ!! え、背中やられた!!」「ぎゃーっ!?」
山賊たちは混乱し、パニックになった。その隙をついてレッドは山賊たちを斬り伏せていく。
「うむ、終わりだな」
全てを倒し終えたところで、煙幕は風に流れて散り散りになった。
レッドは振り返り、煙幕玉を放った人物を見た。……彼は呆れ顔をしていた。
「何してるんだテメェ……」
「ははは、簡単なことよ。お前、どうやら山賊を狩っているようだな。だから吾輩も同じように山賊を狩っていれば、お前にたどり着くだろうと思ってな!」
「……ハァ」
男はため息をつく。
「あのなぁ……一対一の戦いじゃないのにどうして真正面から行くんだよ。大人数に囲まれたら危険だろ。俺が煙幕を張ったからいいものの……」
「一人だけでも吾輩は強い!」
「いや、そういうことじゃなくって……なんていうか……、一人だけ強くても、大勢に勝つのは難し……いや待てよ」
男はここであることに気づく。
確か、レッドはたった一人で魔王を倒したと言っていた。
「なぁ、お前が倒した魔王ってのは、仲間がいたか?」
「四天王とかいうのはいたが」
「全員で襲いかかってきたか?」
「個別だ。仲が悪いらしくて、一緒に組む気がないとさ」
「…………なるほど。良くない成功体験をしたな、レッド」
***
「旅のお方、此度は本当にありがとうございました!」
村の村長だという老人が二人に感謝を述べる。村人は少々怪我をしたものの死人はいない。
「気にするな! 困った時はお互い様というからな! 」
「いえいえ、そうはいきません。お二方は命の恩人! ぜひ私の家にお泊りを!」
「おおっ、それはありがたい! ……お前はどうする?」
「俺は別に……、助けようと思って助けたわけではないし……」
「水臭い! いいから泊まろうではないか!」
「……」
男は少し考えた後、「……分かった」と承諾した。
「そういえば、名前を聞いていなかったな! 教えてはくれないか、山賊狩りよ」
「…………クロウ」
「クロウ! 明日、吾輩と戦わないか?」
「……ヤダ」
「山賊を狩るからか?」
「……」
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