第92話 戦いの終わり【改稿済】

 目を覚ますと俺はベッドの上にいた。ここはどこだろう。

 木の天井があって、嗅いだことのないようなにおいがする。


「ニコラ!」


 声が聞こえて、俺に覆いかぶさるように顔が見えた。

 ローザだった。


「良かった……本当に良かった……」


 彼女は涙を流していた。隣に立つグレンもホッとした顔をしている。


 どうやら俺は領主の城にいるらしい。あの後、周囲で警戒していた騎士たちが俺をみつけ、馬車で運んでくれたんだそうな。多分俺は魔力切れで倒れたんだろう。記憶が徐々にはっきりして意識を失う前と今が合致すると、俺は慌てて体を起こした。


「ヒルデは!?」

「いるよ」


 隣のベッドでゴロゴロしてやがる。お前は病人じゃないだろ!


「お前平気なのか?」

「十年分くらい仕事したから十年は休む」

「冗談を言えるくらいなら大丈夫だな」

「冗談じゃないよ!」


 ヒルデは両手を挙げて精一杯の抗議をした。それはそれで問題だった。


 ローザが領主に伝え医者がやってくる。ゴドフリーが光魔法を使えないとわかった今、彼の仕事は大幅に増えるだろうと検査を受けながら思った。


 体に異常はない。けがの一つだってない。本当にただの魔力切れで俺は倒れただけらしい。そして今はまた健康だ。医者が帰るとベッドから立ち上がり、ぐっと伸びをする。領主は近くの椅子に座ったまま言った。


「それで、シスターからは何か聞き出せたのか?」


 俺は領主とローザにセブンスから聞きだしたことを話した。といってほとんど情報は増えていない。


「七賢人の目的はわかりませんでした。それにだれがアルコラーダ周辺にホムンクルスを放ったのかも。わかったのは、あのシスターがセブンスという名前で、アデプトというサーバントの奥義を使えるということだけです。それで100年もの長い間生きることができたと言っていました」

「呪いは全部、あのシスターとゴドフリーが行っていたんだな。これで街には平穏が取り戻されたというわけか」


 領主は俺に手を差し出した。俺が握り返すと彼はほほんだ。


「ありがとう。どれだけ礼を言っても足りないよ」


 と、そこで俺は一つ思い出した。


「ゴドフリーは街に『箱』が埋まっていると言っていました。それを見つけるまでは警戒しないと」

「ああ、そうだったな。今教会にあるセブンスの持ち物を調査しているところだ。それでどこにあるのかわかればいいんだが」


 領主は鼻から息をもらしたがすぐに頭をいて言った。


「まあ、今はセブンスがいなくなり呪いが街から消えたことを喜ぼう」


 俺は深くうなずいた。

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