第48話 手紙を受け取ったレズリー伯爵

(レズリー伯爵視点です。今回短いです)


 レズリー伯爵にライリーの死と、ホムンクルスについての一報が届いたのはそれから数日が経過した後だった。そのころになると森の混乱が収まり、ハリーがことの次第をギルドや貴族たちに報告していた。


 ハリーはニコラの名前を出さなかった。ただ、ホムンクルスの情報とその討伐方法として、魔力中毒症を使うことだけは共有していた。


 レズリー伯爵は大いに嘆き悲しんだ。


「ライリー……」


 跡取りをすべて失ってしまった彼は頭を抱えていた。

 そこに、怒鳴り込んできた貴族がいた。

 ラルヴァ子爵など、娘息子や騎士たちを殺された貴族連中である。


「私の……私の娘が! スザンナが殺された!! お前の息子のせいでな!! それに多くの騎士を失った。どうしてくれる!?」

「私だってライリーを失った被害者だ!!」


 彼らは互いにぎゃあぎゃあと一歩も譲らずわめきたてて、


「償いはしてもらうからな」


 そう言って帰っていった。

 レズリー伯爵はどっと椅子に座り込むと額を拭った。

 どうしてこんなことに……。


 彼は机に突っ伏した。

 その時、一つの封筒が地面に落ちた。差出人をみてレズリー伯爵は慌ててそれを拾った。

 それはライリーからの手紙だった。


 どうやらライリーの死を伝える手紙と同じ日に届いたらしい。あまりのショックで他の手紙など見ていなかった。

 レズリー伯爵は封を切ると、食い入るように中身を読んだ。


『急ぎペンを手に持ってこれを書いています。帰る前にどうしても伝えたいことがあったんです』


 レズリー伯爵は続きを見て絶句した。


『兄さんは生きてます。今日会いました。僕が魔法を使えなくなったのはアイツのせいだったんだ。あいつに呪いをかけられたんだよ、父さん。兄さんを倒して呪いを解いてもらう。水の属性も取り戻せるはずです』


 ニコラが生きてる?

 そんなバカな。

 いや、しかし……。


 レズリー伯爵は先程散々騒いでいた貴族たちの言葉の中からいくつかを思い出した。


「討伐されたからよかったものの……」

「冒険者の一人が魔力を注ぎ込んで……」

「魔力中毒症で死ぬなんてお前のところの息子はどちらも……」


 ニコラが殺したのか?

 そうに違いない。


 レズリー伯爵はかなり飛躍的な思考をした。はっきりいってそんな論理が通用するはずがなかった。彼はかなり参っていたし、思考だってうまく出来ていなかった。

 

 だが、運良く……運悪く……その思考は当たっていた。


 彼は、まるで遺言のような、ライリーの最期の言葉であるその手紙を盲信した。


「ニコラ……待っていろ……」


 レズリー伯爵は立ち上がった。





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