第30話 カタリナの思いつき

 (カタリナ視点です)


 私はライリーを軽蔑しました。


 やっぱり私の考えは正しかったんです。ライリーは水の属性を持っていない。持っていたのはニコラでした。

 彼はずっと呪いだと言っていましたが、ニコラの言ったとおりそんなことが出来るなら、ニコラは魔力中毒症で苦しむことはなかったでしょう。


 いままで私に散々命令して、どうして水の属性が出せないんだと文句を言っていましたが、あれはライリーが悪かったんです。それが証明されました。


 私はやっぱり無能じゃない。

 ライリーが間違っていただけです。


 いえ、私も一つ間違いを犯していました。

 ニコラへの評価です。


 ニコラは水の属性だけでなく、火の属性も扱える人間でした。

 私はそのことに気づくことが出来ませんでした。

 いえ、きっと前までは火の属性を持っていなかったんです。もし持っていれば敏い私は気づいたはずですから。


 彼はずっと魔力中毒症に苦しんでいましたが、健康になり、自分の力に目覚めることが出来た。しかも、サーバントを使って、冒険者達が苦労していたトレントまで倒してしまいました。


 そう、彼はやっと私にふさわしい契約者になることが出来たんです。


 惜しむらくは、仮のサーバントと契約してしまったということですが、まあ、私が「契約してあげましょう」といえばきっとすぐにそのサーバントとの契約を破棄するでしょう。


 だって、ニコラは、ずっと私を必要としてきたんですから。

 私がいないと何も出来なかったんですから。

 

 今のニコラに比べればライリーはひどいものです。

 馬車の中で私の向かいに座る彼は、ゾーイの手を握ってうなだれています。


 ゾーイは彼の頭をなでながら猫なで声で彼を慰めています。


「よしよし。大丈夫大丈夫」

「ニコラが……ニコラが呪いを解けば……僕だって……」


 実はあの後、一匹のゴブリンがライリーのところに走ってきたのです。ライリーはあろうことか私を投げ捨て、ゾーイを手に持って構えました。


 しかし、彼は何も出来ませんでした。

 怯えきっていたのです。

 

 結局、騎士が現れて、ゴブリンを倒しどこかに行ってしまいました。

 ライリーはその場にヘタレ込み、そのままゾーイに連れられて馬車のところまでやってきました。


 なんて情けない。

 私を放り投げてゾーイを使ってそれですか?


 というか、ゾーイは何をしていたんでしょう。

 私に散々無能だと言っておいて、彼女の方こそ無能なんじゃないでしょうか。

 そうに違いありません。


 もうこんな馬鹿で無能な二人にはうんざりです。


 私達の馬車はラルヴァという街につきました。貧相な街ですが、宿は良いところがあって、ライリーはそこに二つ部屋を借りていました。ライリーとゾーイで一部屋。私が一部屋です。


 きっと部屋でおぞましいことをやっているのでしょうが、もうどうでもいいです。


 ニコラはまたあそこに現れるでしょう。冒険者に頼りにされていたようですから。

 

 明日、ニコラにあったら契約の話をしましょう。

 私を頼りにしているのですから、本来ならニコラが私にお願いするのが筋ですが、きっと今日は新しいサーバントに気を遣って言い出せなかったのでしょう。

 

 優しい私は彼にきっかけを作ってあげるんです。

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