第19話 剣撃を飛ばせるようになろう
俺はいつもの場所で『やさしい魔法 第5版』を取り出して、アニミウムの輪っかもとりだした。
詰まっていた場所がこれで解決されるはずだ。『第五章 運動』というところがあってすぐに開いた。
「ええと、運動とは回転である。アニミウムの輪っかでとにかく魔力を回転させろ…………」
俺は布の袋からアニミウムの輪っかを取り出した。大きい半径の方がやりやすいと書いてあったので一番大きいものを選ぶ。
魔力を流す感覚はアリソンに対して結構やっていたので、なんとなくわかっていた。
輪っかをつかんでやってみる。
「んん?」
一方向に流れていかない。どうやら俺はアリソンの背中に魔力を流すときにかなりあっちゃこっちゃと分散的に流してしまっていたらしい。今も輪をつかんだところから一方向ではなく両方に魔力が流れてしまって先の方でぶつかっているような感じがする。
そうか、この方向の感覚がしっかりとしていないから、何かを飛ばそうとしても力が分散して飛んでいかなかったんだな。
俺は大きく頷いて魔力を流す練習を始めた。
…………一日中やってようやくコツがつかめてきた。
ずっと流し続けるとどうしても逆流してしまうので、断続的にすることにした。一度ぐっと魔力を流して一周してきた頃にまた流す。それを繰り返す。そうしているうちにだんだんと一定の力で流せるようになってきた。
できるようになってきたら徐々に輪を小さくすると書いてあったのでやってみたら難しい。
というのも一周してくる感覚が徐々に短くなってくるので断続的にやっていると間に合わない。はじめから一定の力で流す必要が出てきて苦戦する。しかも、アニミウムの輪っかは徐々に細くなっていて、大きい輪ではちょっとくらい魔力が逆流してもよかったところが、小さい輪だと流れが止まるようになってくる。
輪は全部で7段階。一番小さいものは指輪くらいだが、俺は3段階目の頭にはめられる位の輪っかで苦戦していた。
一週間後、ようやく俺は指輪位の大きさでも問題なく魔力を回せるようになっていた、断続的ではなく一定なのでかなり高速で指輪の中を魔力が回転している。
本によればここまで来れば棒に変えて、『まっすぐ高速で魔力を流す』と魔力の運動が作れるようだ。
試しに俺は地面に向かって棒を向けてみた。
輪っかに流していた時のように、一方向だけに高速で魔力を流す。
「よし、やるぞ」
俺は気合を入れた。
棒の先端から水が射出される。と、地面にぶつかった瞬間、パン! と弾けて爆発した。俺はまた水浸しになった。
ああ、またやってしまった。
そうだよね。これ、この後、斬撃とか攻撃出来るくらいの威力になるんだもんね。そりゃあ勢いだってものすごいでしょうよ。試しに岩にむかって棒を向け、全力で魔力を流してみたら、水で細い穴が開いた。
絶対人に向けちゃだめなやつじゃんこれ。
魔力を流し続ければ管から水が飛び出すように長く尾を引くけれど、瞬間的に魔力を流してすぐに止めれば小さな砲弾みたいな水の玉が射出される。
これはこれで一つの攻撃魔法になるのだろうけど、俺は剣撃を飛ばしたいんだよ。
本を見てみると、『まずは補助棒を使わなくても魔法が出せるようになれ』と書いてあったので、また1日くらい練習して出来るようにした。これはそんなに難しくなくて、今まで魔力をまとわせていたように、体の外部に魔力を持ってきた魔力に更に魔力を乗せればいいだけだった。
この状態で、剣を持って、切る。
剣の刃の側面に魔力を集中させて、剣撃の瞬間に爆発的に魔力を流し、射出する。
「おお!!」
まっすぐ水の剣撃が跳んでいき、地面に傷をつけた。
「やった!!」
感動した。ずっとずっと、遠くからライリーをみて、俺もああ出来たら良いのに、と思っていた魔法がついに出来た!!
剣撃と同時に魔力を射出するために腕力+魔力の運動でかなりの速度で跳んでいく。
《身体強化》と合わせれば強力な攻撃になるだろう。
何にせよ、これで遠距離からの攻撃ができる!
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