見習い天使の修行って何?
「ところで、見習い天使の修行って、一体何をするんだい?」
「それは、人々を幸せにすることです!」
ふんわり笑顔にドヤ顔をのせて話す
幸せにするって……めちゃくちゃ漠然としてるんだな。
俺は驚いて問いを続ける。
「えっと、どうやって幸せにするの? 何か魔法みたいな力でもあるのかな?」
「笑顔で幸せにするんです!」
今度はきりっと決意を込める色音。
それって……要は、特別な能力は特に無いってことなのかな?
普通に人間のように関わって、誰かを幸せにしないといけないって、スッゴク大変なことだと思うんだけれど、大丈夫なのかな?
「あ、でも私が願えばうまくいくと思います」
「何を?」
「その人の幸せを」
はあ……。
なんだかわかっているのかわかっていないのか、はなはだ頼り無い見習い天使だ。
「修行の期限はいつまでなの?」
「合格点がもらえるまでです」
「それってどれくらいの点数が必要なの?」
「点数はわかりません。ただ、『天使の国』にある私の貯金箱が人々の幸せな心でいっぱいになったら合格になるんです」
漠然とし過ぎていて、俺にはよくわからないが、『天使の国』の仕組みも人間社会と同じで実力主義、成果主義なんだな。どこも大変らしい。
「あの……おかわりしてもいいですか?」
目の前の見習い天使は、そんな世知辛い『天使の国』を憂う様子も無く、のんきにお替りを所望した。
結局二杯目を食べて、ようやく大満足の顔になる。
彼女へ次にかける言葉が思いつかなくて、頭を抱えていると、
「色々お世話になりました。それでは失礼いたします」
三つ指ついて挨拶をすると、色音がそそくさと立ち上がった。
「え? 帰るのか?」
「はい」
どこへの言葉は飲み込んだ。きっと、見習い天使には見習い天使の寮みたいな住むところがあるはず。でなかったら、こんな風に地上に修行になんか出さないだろう。
それに、俺の部屋に泊めるのは、色々マズイ。世間的にだけじゃなくて……俺の心臓的に……。
「それでは……ええっと、こういう時はおやすみなさい?」
「あ、ああ。おやすみ」
もう一度お辞儀をすると、扉の向こうへと去っていった。
ほうっ。
思わず全身で深くため息をつく。
でも……お金とか持っているのかな?
どう見ても世間知らずなあんな子を、夜の街に放ってしまって良かったのかな。
洋服もあのまんまってわけにはいかないよな。
急に色々心配なことが脳内を駆け巡り、俺は慌てて扉の外へ飛び出した。
だが―――もう影も形も無かった。
消えた? 夢?
ぶるりと首を振る。
もしかして幻影だったのだろうか。俺もとうとう危なくなってきたかな。
そう思いながらテーブルの器を見れば、ちゃんと二皿。しかも完食してある。
だんだん頭も朦朧としてきて、どうでも良くなってきた。
俺はそのままベッドに身を投げ出すと、片付けもしないで寝てしまった。
その夜は久しぶりに、泥のように深く眠ることができた。
【作者より】
お越しくださりありがとうございます。
こちらの物語、企画参加作品のため、💐で区切られた上の部分がお題(少し改稿しています) 💐の下の部分が答えとなっています。
☆お題の間に、こんな風にオリジナルのお話を入れ込むかもしれませんが、お付き合いいただけると幸いです。
それでは、どこへ進むかわからない物語、スタートです(笑)
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