第三十話 ありがとう さようなら
《前回までのあらすじ》
・食べたい。脚とか。
「真一さん真一さん真一さん!」
「わぁ!」
昨日あんなことがあったのに、なんか朝起きたら俺の上に紫陽花がいた!
今流行りの構図!
「ロシア語話せるの?」
「あれ妹でしょ」
「なるほど……妹なのか……」
「妹なのです」
「古いよ」
「それはそうと、これ!」
紫陽花が何かを懐から取り出した——何もつけない上での着物から出したのだ。そんなとこに入れるな!
——それはそうとして、なにやらコピー用紙を綴じたような——しかし割と厚さがあった。
「なにそれ?」
「知らないんですか?『そんな目だから堕としたい!〜無表情で低身長で貧乳なくせにやたら強引な女の子に無理やり許嫁にさせれたので、彼女を屈服させて彼女の家も乗っ取ろうと思うんだけどやっぱ無理〜』の一巻ですよ」
「そんな正式名称だったのか……」
初めて聞きました。
主人公なのに。
てか負け確みたいなタイトルだ。
俺はどこまで頑張ればいい?
「てかなんだよそれ!ただのコピー用紙だろ!」
「エコです」
「エゴでは?」
「昨今の出版業界——戸口こそ広まったものの、その小さなパイを奪い合う、いわば修羅の国」
「北九州みたいに言うなよ」
「そんな中我々は新たな形としてこうやって存在していこうと言うのですよ」
「はぁ……」
その割にぶんぶん振り回しすぎてなんかくしゃくしゃになっている。ろくな形ではない!
「しかしなんだこれ……横書きじゃねぇか!テキストファイルそのまんま印刷したろ!せめて縦書きにしろよ!」
「てきすとってなんですか?」
「英語とかどうしてたんだよ……」
「英文じゃないんですか」
「そういえば和風だった」
「ほら!そういうことがあるんです!そのためにも我々はしっかり存在せねばならない!」
「作者の更新頻度がクソなだけでは?」
「それはそうですね……」
「にしてもこれを一巻と言い切るのか」
「こうでもしないと私たちの存在意義がないというかなんというか」
「悩むんだな……」
「私出番少ないじゃないですか」
「どの口が言ってんの⁈」
「どの口か確かめてみます?」
「トラップだ!」
「暮田紅月だって、見なさい!なんか残念なことになっている」
「元々あんなキャラじゃねぇのあいつ……」
俺の周り変態しかいない気がする。
しかし俺が一番変態だ!最初の頃のアレ!
第四話!
てかなんだ今回は⁈総集編か⁈
「だったら私も出ていいはずよね」
——妖艶な艶めいた声——桔梗さんだ。何やら傍に火照った女の子を連れている——皐月ちゃんだ!
「なんで私出ないのかしら」
「そういうところじゃないですかね……」
皐月ちゃんは目の焦点が合っていなかった。一体どんな目に合ってしまったというのか。
「……久しぶりに、あんなことに……」
「やっぱり夫婦円満はTSよね!」
「確かに……おに◯いだってそう捉えられますものね」
「あれそんな話かなぁ……」
「出番終わりみたいだから、またしましょうか」
「は、はふぅ……」
皐月ちゃんを連れて桔梗さんは戻って行った。
ほんとにただ顔見せに来ただけだ!何代前のOBとかじゃないんだから!
「やっぱり十万字超えましたからね。お祝いというわけです」
「その割には品が雑すぎない?」
「確かに雑です!ですが!コラボカフェなんかもこんなもんではないかと!」
「やめなさい!」
原価率を気にするのはやめましょう。人生虚しくなっちゃう。
「しかし!そんな中でもこうしたものに価値をつける方法があります!ビビッと!パパッと!」
「はぁ……」
なんだろう……担当声優のサイン?
ドラマCDでも作るのだろうか?
「——有名人に帯をつけてもらいました」
紫陽花が新たに取り出したそれは、コピー用紙をすっぽり帯が覆っている。
いや、コピー用紙開けなくない?それ⁈
「ちなみに誰ですか……」
「茂木健◯郎」
「大丈夫⁈⁈⁈」
一番こういうの嫌いな類の人間をくっつけてきた……嫌がらせか⁈
「健◯郎としか言っていませんよ、いわばシュレディンガーの健◯郎」
「ただのマジシャンじゃねぇのそれ」
「当ててみてください!」
「謎クイズ⁈」
「特番ですからね、しょうもないクイズをしないと」
「なんかやな細かさだ……」
しかし俺が答えないと上手く話が進まない。
「えーと、健三郎?」
「違いますよ!ヒントは最強」
「最強なのかな……?」
あの人のどの辺に最強要素があるんだ……?全くわからない……!
「はい、正解発表!この人です!」
「お前はもう、死んでいる……」
なんかムキムキのおっさんが出てきた!
顔だけおっさんなのに下は筋骨隆々!サスケにでも出てるのか?
「正解は茂木ケンシロウでした」
「怒られるよ?」
「俺が殺る」
「同族殺しの罪を被るというのか……」
「——ウッ!」
するとケンシロウが突然倒れた!
「ど、どうしたんですか!」
「——いや、まさか……」
「ジ、ジジジ……」
途端に手足を丸めて何やら虫みたいな声で鳴き始めた!
「茂木ゲンゴロウだったか……」
「え、苦しそうだけどなんとかならないの」
「なりません、南無三」
「えぇ……」
紫陽花が回収するということで、一旦消えた。
いやなんだ今回……舞い上がってるのかみんな⁈まだだめだよ?そんな簡単に舞い上がるようじゃ……。
「そうだね……確かにそうだ」
気づくと背後に牧田がいた!
「うわっ」
最近よく背後に立たれる気がする……!
「最近僕の出番が少ない気がしてね」
「それはそうだ」
「セイラちゃんなんてほら、思い出されてばっかりじゃないか」
「確かに……」
——あまり恩返しできていない……。
——あれ⁈
——よく考えたら同じクラスだよな——だとすれば。
——なんで昨日、あの場にいなかったんだ?
「……どうかしたのかい?」
「いや……なんだ……どういうことだ?」
何が起こっている?
——誰が、何をした?
——なんだ⁈
——視界が何やらぐちゃぐちゃになっていく。子供が塗りつぶした塗り絵のように——。
——何かが、俺に何かを⁈
「——すべては、愛ゆえに。愛ゆえに破壊があり、混沌があり——そして、結合があるのですわ」
その声は!
「せ、セイラなのか⁈」
「だとしたら、どうするんですの?」
「会いにいく」
「そうですか……善処してくださいね」
すると声は消え。
やがて静寂と暗黒が俺を支配した。
「——うわぁっ!!!」
「わぁ」
やはり夢だったのか……紫陽花は俺の近くで寝ているが、乗ってはこない。
「どうしたんですか……悪い夢でも見ましたか?」
「……都合の悪い夢ではあった」
「はぁ」
「しかしそれを見てみぬふりはできない」
「なんと」
「テストまであと何日ある?」
「十日くらいですかね、そろそろ本格的にしないと」
「三日くらいならなんとかなる」
「……どういうつもりですか?」
「しばらく出る」
「……何か事情があるんですか?」
「あぁ」
「そうですか……では私は待っておきますね」
「追わないんだな」
「心配するほどでもありませんし」
「そうかな?」
「ええ」
「なるほどな……土産は忘れないからな!」
俺は急いで着替えて荷物をまとめて家を飛び出した!
「——先ほどのアレしゃがの」
影から声がする。
「——桔梗の同類じゃ」
「——ッ」
——桔梗さんの実力は未だ未知数だ。一体あの人の本気がどこまでかわからない。
——そしてそれの同類としたら。
——どうなるかわからない。
「紫陽花に頼ればよかったものを」
「あいつに迷惑はかけれない。俺の問題だ」
「——変わったの」
「別に変わってないさ。あいつについて理解が進んだだけだ」
「大体方角だけはわかる。青森じゃ」
ここは仙台だ。
即ち——北!
そういえばセイラとキスをしたのも北極だった——そういうことなのかもしれない。
「とにかく解決せねばならないことだけは確かじゃな。これだけ遠距離からの精神攻撃、その時点である程度の力は予想できる」
「負けねぇよ!負けてられっかよ!」
「——その意気、じゃろか」
◯
一方その頃、青森のとある洋館に一人の男と一人の少女がいた。
男は筋骨隆々とした強面の男である。水色のスーツに身を包むその姿こそ紳士然としているものの、その瞳は静かに燃え上がっており、抑えきれない闘争心のようなものがうかがえた。
少女——聖護院セイラは真っ黒なドレスと帽子で身を包み、まるで喪服かのような印象を与えた。
「——向かっているぞ、どうするんだ」
「何故、追い返す必要があるんですの?」
「お前はそれで十分なのか?」
「ええ。どちらにせよ、まずは私の意見を伝えなければなりませんわ。コミュニケーションから完全に目を背けることはできません」
「なるほどな——てっきり逃げ続けるものかと思ったが」
「負け犬にはなりたくありませんもの——逃げるだけでこちらが不利になりますわ」
「それが恋というものか」
「えぇ——最も血生臭く、最も策を張り巡らし——そして最も甘美なもの」
「これで俺も、恋を理解できるのか」
「——えぇ、おそらく」
雷鳴が洋館に鳴り響いた。
そんな目だから堕としたい!〜無表情で低身長で貧乳なくせにやたら強引な女の子に無理やり許嫁にさせれたので、彼女を屈服させて彼女の家も乗っ取ろうと思うんだけどやっぱ無理〜 乱痴気ベッドマシン @aronia
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。そんな目だから堕としたい!〜無表情で低身長で貧乳なくせにやたら強引な女の子に無理やり許嫁にさせれたので、彼女を屈服させて彼女の家も乗っ取ろうと思うんだけどやっぱ無理〜の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます