第二八話 オムライチャンプルー
《前回までのあらすじ》
・道場再建!
「どうしよう……ほんとどうしよう……」
何故だか月枝さんの方がオロオロしている。
逆だ逆!
「しんいちっ、これで大丈夫だね!」
「誰?」
誰?
「父上、流石にキャラが他の人と被ります」
「ちえっ……」
普通に悔しがるな!切実なんだ!
「結局どういう関係なの⁈これ!わかんないわかんないわかんない!」
藤崎がいよいよ限界のようだ。
「お前は教室に戻ってろ」
「うん……」
そのまんま普通に戻っていった。
お前なんのために出てきたんだ?最近出番なかったからか?
「……仕方がない、ひとまずいったん帰らせてもらうでござる」
「そうか、式には呼ばないからな」
「上げるつもりなの⁈」
この人の中でどれだけ物事が進んでいるんだ⁈
「さらば!」
月枝さんは普通に窓から飛んでった。
よくあるよくある……いやよくない!
よくよく考えるとおかしな話だ……ビルを飛び移る人しか周りにいないからか?
「……さて、どうしましょうか」
「ふむ……私を妹にするか姉にするかだな……」
「ねぇ何の話?」
「私は妹が欲しいです」
「そうか……」
「ねぇ何の話⁈」
あんなことがあったので早退になった。
せっかく久しぶりに登校したのにこの仕打ちである。これでいいのか?
いやそれよりも。
「ふふっ♡どうした〜?照れてるのか?」
成人男性が腕を絡めてくるのは何なんだ?
「あの、笹由さん……」
「違う」
「うわっ」
いきなり声のトーンが底にまで達したのでビビってしまった。
「もう私は男じゃないんだ、もっとちゃんとした名前をつけてくれ」
「はぁ……」
しかし俺は昔メスのピカチュウにピカチンコとつけていたんだ……てかなんで俺が名前つけるんだ⁈
「んー、えーと」
「お姉ちゃんがつけてあげようか」
紫陽花がなんか入ってきた。
お前もうそうなの⁈その心づもりなの⁈
「いやだー、私は真一につけてもらう〜」
「私も改名してもらおっかな」
「んー、いいんじゃない?」
「ねぇ親子だよね?」
なんで十数年姉妹やってきた感じになるの?
「思考止めないで、恥垢も溜めないで」
「許して?」
そんな溜めてたのか……?洗ってるんですけどね……。
「そうですね……笹といえばちまき、ちまきと言えば五月……そうだ、皐月とかどうですか、桐野皐月」
「ゆきのさつきみたいでいい名前だ、気に入った!」
元気ですか……応援してます。
「さっちゃんはね、理恵って言うんだよ店ではね」
「ねぇさっきからほんと何の話⁈」
「そんな源氏名やだー!」
「じゃあ何ならいいの」
「ジュリア」
「オーイェ〜バブリーバブリー」
「ギブ↑大久保⁈」
元気ですか……応援はしていない。
「てかこれどう説明すんですか……関係者の方々に」
「よし!笹由は殺すか!」
「そうだね!殺ろう!」
「あまり公衆の面前でやらないで?」
下手したらしょっ引かれるぞ!計画殺人は罪が重いんだ!!!
「……じゃあそのあの……皐月さんはどういうことにするんですか」
「遠い親戚」
「そして私の義妹」
「エロゲかな?」
血が繋がってても義妹と先に言えばセーフなのか?
そんなエロゲみたいな逃げ道が通用するのか?
まぁいいか!行為に発展しないから!
「問題は桔梗さんですよ!」
「大丈夫、二言以上会話してない」
「生々しい熟年夫婦!」
そんなこんなで家まで帰ってきた。
しかし何故だか皐月ちゃん(もはやちゃん付けしないといけない雰囲気になった)がエプロンをつけ始めていたのを見て、有言実行の言葉を思い知った。
「……何するつもりですか?」
「決まっているだろう?花嫁修行だ」
「早ない?」
せめて社会経験は積もうぜ?
「皐月ちゃん、できるの?」
「深夜に練習してたんだ」
「だから夜あんな悲鳴が聞こえてたのか……」
トイレ行く時とか。割とガチ目のやつだった。
「それじゃあ今日は、オムライスを作るぞ」
「オムライス」
いや……それああいう店とかの定番料理では?
それらしい家庭料理と言えるのか?
「まずは米に油を染み込ませていくよ」
「はぁ」
「ラード使うんですね」
「本格派だからな」
中々本格的な料理のような気がするぞ。
「その間に野菜をみじん切りにする」
ピーマンと玉ねぎ。しかし……いや……なんだ?なんかそこに見慣れないものがあるぞ?
「……ゴーヤ?」
「悪い?」
「いや悪くないけど……」
「懐かしいですね」
「紫陽花」
一体過去に何が……。
「去年の誕生日はゴーヤケーキでした」
「なんかの縛りか?」
なんかやらかしたのか?悲しくない?
「そしてこれらもラードでガッパガッパ炒めていく」
「中々ヘヴィ」
「やっぱ脂ないとダメですよね!」
だからこの人あんなにガッツリした料理ばっか作るのか?
「はいここに米をドーーーーン!!!」
「いやぁいい香りがしますね」
「……ん?」
……なんか、なんか違くない?
「そしてこれを!こう!こう!」
「わー!やった!やったー!」
そして豪快にフライパンを振り始める皐月ちゃん……いやこれ!これ!
「これチャーハンじゃない⁈」
「……何言ってんの?」
「オムライスは中華料理ですよ」
「町中華に毒されてる⁈」
初めて見たそんな人間。いや、家族か……。
「そして香ばしさが出たらケチャップをビュルルル!」
「ピャー!」
「さっきから擬音おかしくない?」
感覚派の料理人みたいな説明だ。
「そして炒める!炒める!」
「いやぁ、オムライスといえばこの光景ですよね……」
「そういうもんなの?」
正しいオムライスってのはこういうもんなのか?
いや、わからん……。
「はい、そしてここでゴーヤを混ぜておいた卵を出します」
「いつの間に⁈」
「冷やしておいたほうがいいと言いますからね……チャーハンには」
「チャーハンって言った⁈」
ついに白状しやがった!
「この卵を別のフライパンで薄く広げて焼いていく」
「へぇ」
「そしてこれにさっきのチャーハンを上にドササ」
「やっぱチャーハンなんだ」
「そしてくるくる巻く!あとはこれを皿に乗っけると……」
綺麗ななんか緑がかったオムライスができた!
こんなもん見たことない。
「……っと忘れてた忘れてた」
「まさか」
なんかスポイトが出てきた。
「……化学の実験でもするんですか?」
「懐かしいですね……」
「何があったの」
「よく描いてもらったものです……」
うさぎさんとかかな。
「富嶽三十六景」
「細か過ぎない?」
「できた!」
スポイトで何をした!今の一瞬で!
———なんか書類が一文字一文字丁寧に再現されている———印鑑まである。
「婚姻届⁈」
「ちょっと!父上!」
「紫陽花!」
そんな良識があったのか!
「私の分は?」
「後で焼くから……」
「どちらかは内縁でいてくれよ……」
重婚は犯罪です。
「まぁとにかく食べて食べて!」
「いただきます……」
砂糖が多いのか、苦味が思ったよりも目立たない。
なんだ……中華スープでも入ってるのか、何やら旨味のようなものも強い。
甘い!苦い!美味い!
食べたことのない味だ。
「……美味しいです」
「ふふっ、だろ〜?しっかり研究したんだぞ〜?」
「……私だって!チャーハンの一つや二つ!」
「洋食だよ!」
オムライスをあんまチャーハンチャーハン言うな!
「なんですか!じゃあ何作ればいいんですか⁈生姜焼き⁈」
「そうだよ⁈」
「よし」
なんか腕を捲り始めた。よく頑張る人。
「ふふ〜♡」
なんかすごく擦り寄ってくる皐月ちゃん!
なんだ……何をして欲しいんだ?
とりあえず頭を撫でてみた。
「え、えへへ……♡」
頬を赤らめながら、にへへと笑う皐月ちゃん。
小さくて、可愛らしい。これが成人女性とは信じられないほどに。
「できましたよ!」
なんか既に紫陽花が皿を持っている!
「生姜焼きチャーハン!!!」
学習しねぇなぁ!!!!!!
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