第二七話 振るうに献身

《前回までのあらすじ》

・甘〜い感情を持っていることになるけどな?


 恐ろしいことになった。

 一体奴が俺に何をしてくるかなんてわからないのだ……どうすればいいんだ!!!


 「しんいちっ♡目逸らさないで♡」


 しかしそんな中でも俺は笹由さんと夜毎舌を絡ませあっていた。

 これでいいのか?もう俺には何もわからない……。

 「ぷはっ……♡」

 なんかますますメスの顔をしているような気がしてくる。だんだんと内側から改造されているのだろうか?

 「なぁ……して……♡」

 そう言って尻を向けてくるものの、しかし駄目だ。

 「……笹由さん、俺は、初めてはあいつに決めているんです」

 「そ、そんな……なんで……」

 なんで初めて聞いたみたいなリアクションするんだ!

 そりゃ更新頻度考えたらだいぶ経ってるけどさ!

 「……俺は、あいつの初めてを奪わなきゃ行けないんです。それは今接している問題と向き合うためでもある」

 「私か?」

 「ちげぇよ……」

 「そんな……!」

 するとどこからか真剣を取り出した!

 そして首元に刃先を沿わせる!

 「やめてくださいよ!何してんすか!」

 「死んでやる!死んでやるんだからぁ!どうせ私のことなんか、どうでもいいんだ!都合のいい女なんだ!」

 「バカ!」

 とりあえずビンタしておく。

 「え……」

 まるでびっくりした様な顔!

 いや、妻子持ちの成人男性がこんなんじゃ駄目でしょ……普通に考えて……。

 「……終わったら、必ず全てを満たしてあげますから、だから今は、我慢してください」

 俺は笹由さんを抱きしめた。

 「うん……♡待ってるからね……♡」

 手伝って欲しいんだけどな。

 なんで地元の彼女みたいなムーブするの?

 

 そして翌朝。

 「なんか久しぶりに学校に行く気がしますね」

 「……気のせいだろ……」

 紫陽花がそんなこと言い始めた。

 メタいことを言うな!言っていいのは俺だけだ!

 「にしても、おかしいですね……」

 「何がどうしたのさ」

 

 「最近、父上の部屋から女の匂いがするんです」

 

 「……いや、そりゃ桔梗さんと……」

 「最近あの人ショタを囲んでますよ」

 「浮気だろ⁈」

 「キスで精気を吸い取ってるだけらしいですけど」

 「新手の妖怪だろ……」

 「まぁ、にしても……母上はともかく、父上がそんなことをしていると考えたら、私……」

 「紫陽花……」


 「笑っちゃうんすよね」


 「泣けよ!」

 

 そんなこんなで学校に着いた。

 にしてもほんとに久しぶりだな⁈これまで全く学校でなんかしてなかったからな。

 これで学園ラブコメを名乗れるのか⁈

 わからん!

 「桐野くん、どうしたのそんな顔して」

 「藤崎……」

 「何その顔……そんな涙ぐんで……」

 何話ぶりだろうか!

 ああ!感動だ!

 「藤崎ぃ!」

 俺は藤崎に抱きついた!

 「わぁ!やめてよ!鼻水出てるよ!」

 「……最近辛くて……」

 「花粉症?」

 「それもある」

 「だいぶ辛い人生だね……」

 「……にしても遅いな」

 もうすでにホームルームのチャイムは鳴っている。

 そのはずなのに全く先生がやってくる気配がない。 

 うちの先生は時間を厳守するハゲ親父である……厳しい人だが頑張ればその分褒めてくれる。だから嫌われているわけではない。

 そんな先生が、こんなことするはずがないのだ……ならば……なにが、どうした?


 ———まさか⁈


 「まずい!」

 俺はガタッと席から立ち上がって廊下に向かう!

 「桐野くん、どうしたの!」

 そのまま藤崎もついてくる。

 「お前はついてくるな!」

 「そんな顔してたら、ほっとけるわけないじゃないか!」

 それはそうだろうけど!

 そうだろうけど!!!

 

 ———廊下に出ると、そこには異様な状況が広がっていた。


 「あ、あぁ……」

 そこにいたのは中年女性だった。

 倒れていて、頭部がよくわかる。

 だがしかし———その服装、そして何より頭が普段ほどでないにしろ少し禿げていたのだ。


 ———ということは、まさか!


 「———神⁈」

 「ど、どういうことなの桐野くん!あれ、先生に似てるけど!」

 

 「———出てきたでござるな、桐野真一」


 ———何者かが、影を縫うように、ぬるり、とその場に現れた。


 ———長い青髪の癖毛を短髪にまとめた、ジャージ姿の女性だ。


 ———だが問題は。


 ———その手には、真剣があった。


 「———暮田の差金が?」

 「———左様、しかし拙者の主たる目的はそれではないでござる」

 「なんだと?」

 「もう既に———始まっているはずでござる」

 

 ———するとそこに来たのは小さな影———よりも前に何やら別の影がある!


 ———紫陽花と同等の動きができると考えれば———まさかあれは!


 そのとき、二つの剣が火花を散らした。

 

 ———真剣を携えてやってきた、笹由さんその人だった。

 「笹由さん!」

 「———盗聴器を仕掛けていれば、まさかこうなるとはな……」

 「ねぇさらっとやばいこと言ってない?」

 「まぁ……うん……そういう人だから……」

 「えぇ⁈」

 あっしまった!

 中身がメスってこと知らないんだ!

 そして紫陽花が急ブレーキをかけながら止まった。

 「———父上、やはりそうでしたか」

 「し、知ってたのか⁈」

 「まぁ、はい、えぇ」

 「なんだそのよそよそしい返事」

 「普段からこんなんだよ桐野くんは」

 「マジかよ……」

 というかそんな会話をしている場合ではない。

 二人の剣客が、剣を交わらせている!

 「———ようやく会えたでござるな、桐野笹由」

 「———何者だ、貴様」

 「この技を見せれば、わかるはずでござる!」


 刀女はいったん下がって、何やら構えをとる!


 「———なんだ、この妖気は」

 笹由さんが怯えている———まさか!

 「真一!避けろ!」

 影から大声が聞こえる!

 「紫陽花!」

 「わかってますとも」

 そんなわけで紫陽花が俺と藤崎を抱えて、そして退避する準備をする!


 「———月桂流奥義———〝帝肢好斬ていえすざん〟」


 ———その瞬間、まるで新幹線が通り過ぎたかのような爆音が高速で駆け抜ける!


 俺たちは紫陽花が避けたことにより大丈夫だったが———。


 ———何やら吹っ飛んで壁に激突する音が聞こえた!

 

 「さ、笹由さん!」

 ———煙がだんだんと晴れていき———やがて、なんとか刀で防いでいた笹由さんが見えた。

 しかし壁にめり込んでいる。ダメージを無効にすることはできなかったのだろう。


 「———貴様、月桂流!」

 「そうだ……拙者は月桂流三十二代目当主、月枝孕つきえだはらみ!」

 「「ひどい名前だ」」

 「———まだ残っていたか」

 すると、月枝さんは何やら震え始めた。


 「貴様さえ、貴様さえいなければ、拙者たちは!」

 「父上!!!何が!!!」

 必死に目を背けようとする笹由さん。

 まぁあんな人だ、過去に何かしらやってるだろう。

 全く信用してない!俺!


 「———あれは十五年前———月桂流は剣術道場として栄え、そして門下生たちも各地で活躍していた———だがある日、謎の高校生が現れ片っ端から関係者を叩きのめし———そして月桂流の評判を地に落とした!それが貴様だ!桐野笹由!!!」


 「———そんなことしてたんですか」

 「……腕試しくらいの気持ちで……」

 「若気の至りが過ぎますよ流石に……」

 「……結局三人はどういう関係なの……?」


 「———あの日、道場が面影もなく破壊さたあの日から、お前を斬ることばかり考えてきた……今ここで!それを果たす!」

 「くぅっ!ごめんなさい!」

 謝ってんじゃねぇか!

 しかしそんなこんなで戦いはますますヒートアップする。

 ———というか、さっき新幹線みたいに通り過ぎたが、教室は大丈夫なのか?と思って後ろを見てみた。


 ———めっちゃボロボロだった!ガラス窓は割れ、なんかあちこちに人が転がっている!


 ひどい状況だ!

 これも全て、俺のせいなのか……?

 

 「桐野くん!」

 「真一さん!」


 ———な⁈

 

 ———目の前に———月枝さんが!!!


 「———それはそうとして大金は頂くでござるよぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ⁈」

 「道場再建!」

 「あ!確かにそうか!」

 そんなこと言いながら刀は俺の方に向けられている!

 あぁ!死ぬわ俺!みんなこれまでありがとう!


 ———だがそれは、全く別の形で終わることになる。


 ———なぜなら、俺の前には笹由さんがいたからだ。


 笹由さんの腹に、深々と刀が突き刺さる。


 「———馬鹿な」

 「さ、笹由さん!」

 そのまま仰向けに倒れる笹由さん。

 「……好きな男のために死ねるなら、この身体、惜しくない……」

 「そんな、笹由さん!しっかりしてください!」

 「……次生まれ変わるなら、天使のような女の子に……」


 ———そしてそのまま、笹由さんは目を閉じた———。


 「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 「ち、父上!」

 「あ、あぁ……」


 しかし何故だか取り乱す気配のない月枝さん。

 むしろなんかやっちまったって顔だ。

 「お前!なんだその反応は!人が死んでるんだぞ!てかお前が殺したんだぞ!」

 「……いや、何かある顔です」

 「何⁈」


 「……やってしまった……」


 なんかがっくしと膝を落とす月枝さん。


 ———なんだ?どういうことだ?


 ———すると、笹由さんの体から流れ出た血が、だんだんと彼の体に戻っていく———てかなんだ———だんだん体そのものも華奢になり縮んでいく———まさか!


 「———月桂流奥義、〝帝肢好斬・極〟———まさかこんなところで尽きるとは」


 「ん、んん……」

 「さ、笹由さん!」

 ———やがて、傷が塞がり、さらに刀も自然と元から無かったように、そこから抜けた。


 「———でも、直さなきゃ……」

 この姿でむやみやたら外にいてはいけない。

 今すぐ……あれ?



 ———


 「———まさか!!!」

 「「え?何?どういうこと?」」

 「———それは———」

 すると、うなだれてた月枝さんが口を開いた。


 「我が月桂流の奥義〝帝肢好斬〟———ある程度の傷がついた人間は、二度と性別は元に戻らない」


 「な、なんだってー⁈」


 「そ、そんな……」

 ショックを受ける笹由さん。


 「花嫁修行を始めねば……」

 「「「「ポジティブ」」」」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る