第二三話 人外さんの婿

《前回までのあらすじ》

 おっぱいの感想みたいだ。


 桐野桔梗、帰郷!

 

 ……いやしょうもないギャグであることはわかっている。

 そんくらい追いつめられているのだ。

 「おっ……おっ……」

 牧田が怯えきっている。多分こいつは理解できないものに弱いのだ。

 「おばさん!」

 そこ?

 「ふふっ、そうね」

 逆にほほえむ桔梗さん。

 それはそれで何で?

 「別に私は若く見られたいわけでもないの」

 「……カモフラージュできているってわかるから……ですか?」

 「勘のいい若人ね。そんな好きじゃない」

 妙に雅なパロディだな。

 「……僕らをどうするつもりです?お義母さん」 

 「知れたこと。若人たちを血肉諸共絞る取るように……」

 緊張が走る。

 

 「犯す」


 「「なんでぇ?」」

 やっぱ駄目だこの一家は! 

 そりゃこの人あの変態のワイフだ!

 「……と思ったけど一方は……」

 「……遅漏なのか」

 「ちげーよ!」

 牧田が顔を真っ赤にしている。

 「遅漏のがいいんだぞ」

 「だからぁ!」

 「はやめなさいみっともない」

 「デキてないぞ!」

 「……それは……その」

 やたら照れ始める牧田。

 「やめろお前!」

 「ほな、いただきまーす」

 「ざけんな!蛇神!」

 しかし影から声も振動も伝わってこない。

 「蛇神?あぁその子なら……」

 そうすると桔梗さん、いきなり口の中に手を突っ込んだ。

 すると、縄で縛られボールギグまで丁寧に付けられた蛇神がぬるぬるの状態で出てきた。

 「……殺してぇ……」

 「何だ?何があったんだ?」

 「私の身体は人間とは違う。例えば内部はどの器官であろうと無数のヒダヒダで覆われている」

 「海牛女め!」

 牧田がキレて言う。

 「乳牛って言った?」

 「「言ってない」」

 「まぁどっちでもいい……見さらせ私のおっぱいジャングル大紀行!」

 「センス古くね?」

 「おばちゃんだし……」

 「身体は現役ってことをわからせてあげるぅぅ!」

 超スピードで飛びかかってきた!

 嫌だ!こんなエロ漫画みたいな童貞喪失は嫌だ!

 

 するとその瞬間。


 見覚えのある小さい影が、桔梗さんを吹っ飛ばした。


 桔梗さんは俺たちの間を勢いよく跳んでいく。

 そして後ろの倉庫に激突する。


 「あ、紫陽花!」

 「……まったくなんで……なんでこんな余計なことしたんですか!」

 珍しくぶち切れている。

 「牧田が!牧田がそうしようって!」

 「ふ、ふざけんな君!」

 「……誰です?この人」

 「えぇ……」

 「何も知らない相手を怒る気にはなれませんね。真一さん、あとでお仕置きですからね」

 「不公平だ!」

 姿をよく見ると、着物の着付けがあちこち乱れている。

 恐らくそれくらい急いできてくれたのだろう。

 「……ありがとう」

 「感謝はあとでたっぷりしてください」

 「あぁぁぁぁぁじさい!」

 まさに化け物らしく、彼女は諸々乱れた姿で起きあがる。

 「成長したのね……母さん嬉しいわ」

 くっくっく、と笑って見せた。

 家族愛というのがこの人にも存在するんだなぁ、と素直に関心した。

 「母さん……」

 そういうと、いきなり紫陽花は地面に手を突いて、あの服従を示す姿勢をとった。

 「私が責任を負ってどんな罰でも受けます……なのでどうか真一さんには……」

 「僕は?」

 「黙ってろ」

 謝らせてしまった。

 屈服させると決めた相手だが……だが……。

 申し訳ないという気持ちでいっぱいになる。

 「……紫陽花。この際だから伝えて上げましょう」

 「……な、何を……」

 「何で私が笹由さんと結婚したと思う?」

 「そ、それは……あの当主を務めるような責任感のある……「顔よ!」

 

 「え?」

 「あの人、少年の頃は本当に可愛らしくて、食べちゃいたいくらいだったのね」

 「で、食べたわけだ」

 「そ。そして毎日毎日情事に励んでいたわ……」

 「ぐふっ!」

 紫陽花が吐血した。

 「そ、そんな!何で!」

 「実の親のエッチ事情なんて聞いたらな!脳で処理しきれなくてダメージが入るんだ!」

 「う、嘘だろ……」

 「そんである日、ゴムが切れたんで一発くらいナマでいけっかと思ったのね」

 ……まさか!

 「おいやめろ桔梗さん!」


 「そのせいでデキちゃったのがアンタなのよ!桐野紫陽花!」

 

 「がはぁぁぁぁぁ!」

 紫陽花がそのまま血を流して突っ伏した!

 「偶然デキたけど、生まれてくれてありがとね!」

 「ダメージと愛を同時に伝えんな!」

 「……ごめんね紫陽花。母さん未成年を食わないと死ぬの」

 「一生忘れん呪詛だろこれ」

 「さて仕切り直しといきましょうか……」

 「アーッ!」

 「ホモじゃないんだけど」

 

 するとその瞬間。


 とんでもない熱と光が、紫陽花から放たれた。

 

 「おあちゃあああ!」

 「な、何だ!何が起こってるんだ!」

 「紫陽花……」


 紫陽花がゆっくりと立ち上がる。

 

 髪が真っ赤に光り、揺らめいている。


 目つきは獣のように、獲物しか向いていない。


 「あっ……そうだそうだ大変なこと忘れてた……」

 「……何を?」

 「この子『半妖』だった……」


 瞬間また吹っ飛ばされる桔梗さん。


 そのまんままた倉庫に飛ばされる。


 しかしそこで終わらないのが、完全に先ほどとは違うところだ。


 瞬時に飛ばされた先に移動し、桔梗さんの胸ぐらを掴んで持ち上げる。

 そしてうつ伏せになるように勢いよく叩きつける。

 その状態で、顔が必ず地面に叩きつけられるような形で、何度も叩きつけた。

 「お……おい!落ち着け!」

 紫陽花からの返事はない。

 あの俺の発言ならなんでも返してくる紫陽花が。

 これはさすがの桔梗さんも……。

 「やっ……やめっ……おっぱい千切れるぅ!」

 「そういう体勢ではなくないか?」

 割と余裕そうだった。

 

 「……まさか……そうだったとは……」


 後ろを振り向くと、芋虫みたいに蛇神が這ってきていた。

 「蛇神……半妖ってなんなんだよ!」

 「半妖は我らのような人外と人間の子……天文学的な確率でしか生まれんが、絶大な潜在能力を持つ……」

 「じゃあ皆あんな感じなのかよ!」

 「いやそうではない……恐らく初めてその力を用いているが故、制御できていない!」

 「……どうにかできないのかよ!」

 「方法ならある」

 蛇神は注射器を影から取り出した。

 「『暴走トマールa』じゃ」

 「雑ッ!」

 「そしてそこから薬剤を口に含め!」

 ……ん?

 「おいまさか!」

 

 「そうじゃ!口移しじゃ!」


 「……嫌なんで本当にそんなことに?」

 「肌が恐らく覚醒しておる。銃弾でさえも弾かれるじゃろう」

 「……そもそも薬も効かないんじゃねぇの?」

 「無礼な!製造元は三千年続く老舗じゃぞ!」

 「老舗のネーミングじゃねぇよこれ」

 「こんなこと言っとる場合じゃないぞ!」

 桔梗さんがこちらを叩きつけられつつ見てくる。

 顔の中心だけめり込んでいた。

 「ジャイ○ン?」

 「あのまんまくたばらんかのう……」

 「とにかく行くしかねぇ!」

 注射器を押し出す部分と針部分に分離して、その薬剤を口にため込む!

 なぜかイチゴの味!なんで口にするの前提みたいなんだろう。

 そのまんま紫陽花の元に突っ込む!

 彼女の肩を掴む!

 

 紫陽花は、まるで普通に驚いたかのような素振りで、俺の方を見る。

 

 瞬間唇を唇で塞いだ。


 「ん〜っ!んっ!んっ!」

 数秒後、髪の色が元に戻り、苦しいと言わんばかりに身体を震わせたので、唇を離した。


 「はー……はーっ……何なんですいきなり……」

 「早急だった」

 「そんな欲しいんですか」

 「いやそうじゃない」

 「私わかりづらいけど安産型なんですよ」

 「そうじゃないって」

 「……母さんが悪かったわ!ごめんね!」

 いきなり桔梗さんが紫陽花に抱きつく。

 「馬鹿!死んだらどうするつもりだったんだ!」

 牧田も俺に抱きつく。

 

 いや、諸々何で?

 

  

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