第十九話 娘じゃなくて私が好きだろ?

 《前回までのあらすじ》

 上スッカスカだけど下ムッチムチなのな。


 「鈴木真一。座れ」

 夜にメールが届いて、深夜部屋に来いと言われ、そしてまぁいつも通りなのかなとデイルドを持って参上したのだが。

 布団は敷かれておらず、笹由さんは座布団に正座しており、向かいにはもうひとつあった。

 多分これに座れとのことだろう。

 「座り方は何でもよい」

 そう言われたのであぐらをかくことにした。

 「……どうしてんです?」

 「まずは性転換させろ」

 桐野笹由は目つきは鋭く背丈は長く、刀が男として存在しているかのような男である。

 長い髪を一つに結んでいる変わった髪型をしている。

 声も低く落ち着いた、良い声をしている。

 だがここで俺がスイッチを入れると。

 全体の雰囲気自体はそんなに変わらない。

 だが背丈はグンと縮み、顔つきも凛としているもののあどけなさを持った少女のものとなる。

 変わった髪型も、こちらでは普通の一つ結びになる。

 声も女性のハスキーボイスとなる。

 補足として、彼は今年で三十二になる。

 ぱっと見、紫陽花と歳が変わらない。

 「……それでなんなんです?」

 「そのだな」

 

 「私とお前の関係を、ステップアップさせるべきだと思うのだ」


 ……何言ってんだこのオッサン!

 「え?何?どういうことっすか?」

 「わからんのか。私たちは身体で互いに幸福を分かち合ってきた……だがしかしそれには限界がある。さらなる快感を得るためには、心のつながり合いが必要だと思うのだ」

 本番したみたいに言うな!

 しゃぶってはもらったけど!

 「……何するんですか?」

 「それはお前の役割だろう。普段通りリードしてくれ」

 「えぇ……」

 「なっ……何だその反応は!」

 「だってぇ……そんな感じだから気楽な関係ってことになるんじゃないんすか」

 「……お前、最近会話してくれないだろう」

 そりゃああんな威圧感出していつもいるんだから、そんな話しかけられねぇし、むしろ普通に会話してたら不気味なレベルになってるよ。

 「はぁ……」

 「私だって!寂しいんだぞ!」

 ちょっと半泣きになっていた。

 端から見るとカップルみたいな会話だが、相手は男で三十二である。どういうことだ。

 「……でも忙しいんでしょう?」

 「私は今まで一度も有給をとっていなくてな。自営業でも休んだ方がいいと言われ続けていたのだ」

 「そうなんすか」

 おいおいおい。

 ちょっと待ってくれよ。

 「明日……行けるか?」

 「行けます」

 「やった❤︎」

 抱きつかれた。

 女の香りがする。

 安心。

 「……なぁ、キスしてくれないか」

 すごい潤んだ瞳で、子犬みたいに見上げられてお願いされた。

 「いいんすか」

 「もう私は、お前のものだ❤︎」

 口づけを交わす。舌も入れてしまった。

 こうなったのは俺の責任なのだ。

 つまり逃げられない。

 

 そんで添い寝していたが。

 「おいお前」

 影から珍しく一気に蛇神が出てきた。

 寝る二人を立って見下ろす形になる。

 「なんだよ」

 「いや、本当にやめておけ」

 「いやわかってます……わかってるんです……」

 

 翌日。

 土曜日。

 早朝。

 「笹由さん、裏口から外に待機しておいてください」

 「まったく……娘がこうも煩わしくなるとはな」

 もしも起きられたとき、それはとても面倒だ。

 そんでなんとか離れることに成功する。

 もしもバレたときのために、彼女(?)の服も洋服にしてもらった。

 ノースリーブの白シャツに柄のロングスカート。

 ぱっと見中学生の背伸びした少女にしか見えない。

 「……で、どこか行きたいとこあります?」

 「株主であるが、一度も行っていないところがあるのだ。是非お前と、初めてを体験したい」

 「その言い方やめろ」

 「言葉責め激しい❤︎」

 コイツ……無敵か?

 「何の店なんです?」

 「広く言うと本屋だな」

 「何か他にもいろいろあるんすか」

 「まぁ行ってからのお楽しみというとこだ」

 そんな中コンビニが見えた。

 「コンビニ寄っていいすか」

 「えぇ?買うには早すぎるぞ?」

 「何をだよ。朝食買うんだよ」

 

 買って出る。

 そんな腹減ってるわけでもないので、高菜おにぎりとカツサンドですます。

 一方笹由さんは。

 「じゅるっぽはーと……じゅるるる……じゅぽ……」

 バナナをしゃぶっていた。

 「やめてくださいよ店前で……」

 「とろけかかったのが美味いんだ。わかるな?」

 「聞きたかなかった」


 その後結構歩いた先。

 「あれだ!」

 左方向を指さして、笹由さんがそう言った。

 確認。

 過剰な本屋アピール。

 普通のガラス窓だが、どうやっても見えない店内。

 そして一本百円からという謎ののぼり。

 そして……。


 FU●K OFFという店名!


 「これ……アレなショップじゃねーか!」

 「ふふ」

 そう笹由さんが久し振りに年齢相応の、一定の年齢を過ぎた人特有の笑い方をした。

 「本屋と言えばそうであろう。隠語もわからないお子さまってわけだ」

 「犯すぞジジイ」

 「じゃあ草むらに行くか」

 「やっぱいいです」

 「にしても知らんとはな。『腰を振るならF●CK OFF♪』で有名なんだが」

 「本がないより羞恥心がまずないよ」

 「最近カラダ売るならF●CK OFFに変えようと言う声が」

 「もうそこまでいくと引っかかるだろ」

 「ちなみにこちらの宣伝はグラドル寺山こころ(二八)だ」

 「生々しい年齢……」

 「今デビューが待たれる新人」

 「待つな!今応援してやれ!」

 「さて、じゃ行くか」

 「いいのかな俺」

 

 すんなり通れてしまった。

 逆に彼女が三二であることを証明する方がめんどくさかった。

 最終的にあるエピソードを聞かせて何とかなった。

 そのエピソードが聞きたい?

 載せたらBANされる。

 そんな店内は思っていたよりも綺麗で、各コーナーの案内も親切だ。

 AVからエロマンガ、デイルドやローター、SMグッズまで幅広いものが売っている。

 「オスカー・ワイルドやマルキ・ド・サドの全集も置いてあるのだ」

 みんなも検索してみよう。自己責任だけど。

 そして進むと、なんか小さな浴室を模したコーナーがあった。

 「おい見ろ!お風呂グッズのコーナーもあるぞ!マットが安い!」

 「そこまで行くな!そこまで!」

 そしてさらにその先には、あみあみで仕切られた子供用にわざと作ってるっぽいスペースがある。

 先客の女性が水着姿で嬌声をあげていた。

 「あそこに遊び場がある!アクメ三輪車!アナルビーズプール!M字開脚ブランコもある!」

 「M字開脚ブランコってなんだよ!」

 「足を引っかけるところが斜めに椅子部分から延びていて、そこに足を引っかけてアヘ顔ダブルピースして、行ったり戻ってきたりする」

 「企画ものかな」

 その横には、フードコートのようなスペースも見られる!

 「さらに飲食スペースも充実!ファ●クドナルド、丸亀頭製麺、ぬき屋、ゴムの樹!」

 「食欲なくすわ!」

 「足りないときは延長料金で個室サービスに!」

 「それもう別の食欲だろ!」 

 「映画館としてKEIHOUシネマズもある!」

 「やめろ悲しい!」

 「本日の午前七時二十一分の映画祭は『愛のコリーダ』」

 「なんでそこはちゃんと名作なんだよ!」

 「終わった後の落ち着けるカフェも他にある。(ポルノ)スターバックファッ●ス」

 「欲張るな!てかあんた絶対初めてじゃないだろ!」

 その後も生鮮野菜(開発用)や三角メリーゴーランドなどを見たり体験して。

 あっという間に昼になってしまった。

 「そろそろ帰るか」

 「あー、結局楽しんでしまった」

 「遅漏だなまったく」

 「なんかもうそういう前頭葉なんですか?」


 そして家に着いたのだが。

 なんか妙に眠たくなってきた。

 ダメだ!多分そういう薬を盛られた!

 抗おうとしたが、しかしどうしようもなかった。

 

 起きると、笹由さんの部屋に寝かされていた。

 目の前には着物をはだかせた彼女がいた。

 手錠で手がつながれている。

 足もそうだ。

 ……割とやばい?

 「……なんで全裸に剥いてないんです?」

 「その方が、楽しいだろう?」

 「それに今は昼ですよ!」

 「昼顔だよ。お前の昼顔を見せてくれ」

 そんな妄言をのたまいつつ、笹由さんがだんだんこちらに近づいてくる。

 顔は完全に雌の顔だった。

 「お前の子供を産ませてくれ……❤︎」

 「う……うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 数分後。

 「ごめんなひゃい……❤︎もうひまへん……❤︎」

 寝ころび全裸で全身を濡らし、アヘ顔ダブルピースする彼女がそこにいた。

 「舌だけに負けんなよ!」 

 「下品すぎるじゃろ今回!」

 気づいたら口枷を付けた蛇神が出てきていた。

 「アクセサリーじゃねぇからそれ!」

 即オチ?

 そんなもんはねぇ!

  

 

 

 

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