第十一話 私を襲ってヤクソクヨー
《前回までのあらすじ》
友達だ!!!!!!!!!!(×10)
「なんだあれ」
あれから翌日、登校してみると正門の前に人だかりができていた。
ほぼ全員女子生徒。
そしてその中心には……例の生徒会長がいた。
その証である学帽を被った、銀髪の美男子。
牧田光。
俺のお友達に当たる。
「初めて見たぞあんなもん」
「普段はもっと早いですからね。普通の登校時間だとこう、ということです」
そうあくびをしながら紫陽花が言う。
「一晩中ポーカーすると疲れますね」
「ほんとになんであんなことしたんだよ……」
なので俺もアホみたいに眠たい。
できればさっさと机に座って寝たい。
しかしその人だかりが途端に開き、例の男の姿がはっきりとわかるようになった。
そんで。奴は。
投げキッスをこちらに寄越してきた。
多分俺はすごい顔していたと思うが。
直後紫陽花は痰を吐き捨てた。
「バカお前!」
さっさと彼女を連れだして校舎まで急ぐ。
「仕方ないでしょう?あんなのに関わると反吐が出る」
「もう出てるよ!」
「もっと出るということです」
「やだなぁ!」
そして昼が来た。
普段俺が昼食をどうとっているかいうと、食堂である。
白樺高校の食堂は某飲食チェーン企業が関わっているため、多分そこらの高校よりも美味いのでは、と個人的には思っている。
メニューもそのためか百以上あるし。
そのため未だローテーションを一周してもいないので、割と楽しみの一つでもある。
紫陽花は自分の飯に興味がないのか、いつもバナナ一房で済ませている。
そんで食堂に向かうとき、いつも背中で何か語りかけてくる。
無視している。
まぁそんな風にいつも通り藤崎と一緒に一回に降りようとしていたそのとき。
『生徒会より連絡です』
「あの野郎!」
「えっ何、昨日やっぱりなんか……」
「いや……その……」
『桐野真一、桐野真一、至急生徒会室まで……』
「先行っといてくれ!」
「ちょ……また?」
階段をとっとと上る。
四階に着くと紫陽花が先回りしていた。
なんかあの刀を持っている。
「試し斬り」
「やめなさい。帰れ」
また頬を膨らませながら降りていった。
さて。
立派な生徒会室に着く。
なんかもうノックもめんどくさいのでそのまんま開けた。
直後頭を何かでぶっ叩かれた。
横を見るとニヤニヤした銀髪の男が何かを手に立っていた。
ハリセン。
「やぁ」
「……」
「ん?」
「……叩かれた衝撃の割に痛くないから怒るにも怒れねぇ!」
「ははは!」
うぜぇ!
なんだコイツ!
「……で?なんで呼んだんだよ。今朝の仕返しかよ」
「あれは君へのサービスさ」
「ハリセン寄越せ」
「まぁまぁ怒るなよ。理由を聞きたいんだろ?」
「はいそうですね」
「昼食を共にしたいと思ってね」
「そう……」
「待て待てドアに手をかけるな。君のハメ撮りがばばばばらまかれてもいいのかい?」
「焦るな!余裕を保て!」
「……特別なメニューを用意しようじゃないか」
「……いいだろう」
「よーし!持ってこい!」
そう言うと、なんかそれっぽいウェイターがテーブルとイスを用意して、そして料理を持ってきた。
銀の皿にまた銀の小さな容器がたくさん乗っかっている。中にはサラダのようなものやルーのようなものが入っている。極めつけにうっすい白いパンのようなものが目立つように置いてあった。
「……なんでインドカレー?」
「いいだろう?本国の人間が作ったんだぜ?」
「そんな珍しくなくないか」
「細かいとこは置いておこう」
「お前は置き過ぎなんだよ」
とりあえず席に座る。
ここで気が付いた。
「スプーンないの?」
「ないとも」
「えっ……どうしろと」
「こう食べるんだよ」
そういって牧田は右手でサラダをすくって食べた。
「……本格派」
「君も本格派になればいい」
「半ば強制なんだけど」
「なれ!!!!!!!!!!(×10)」
「持ちネタなのそれ⁈」
仕方がないので俺も右手でサラダをすくってみる。ひよこ豆のサラダだ。中東とかのあっちの方でよく使われる。
感触は生ぬるい。しかしそんなこと気にしても仕方がない気がしてきた。
「うん、おいしい」
「……」
「なんでそんな凝視してくるの」
「いやァ、別にィ……」
「怪しさしかない語尾!」
そして奴も同じようにまた食べ始めた。
それから五分くらいは黙々と互いに食べていた。
が。
「なんかおもしろい話してよ」
そう牧田がさも当たり前かのように言ってきた。
「……うーん……」
「そこまででもなくていいからさ」
「……親友だと思ってた奴がみんな身体目当てのゲイだった話?」
牧田が盛大に吹き出した。
「君ッ……変な嘘で話を濁すな!」
「……嘘じゃないんだよ……」
「……涙が……」
あの日のことを忘れたことはない。
誰もいないとき部屋で押し倒された日。
プールのトイレでしゃぶられた日。
耳元にキスをされた日……。
そして……無理だとわかったら平気で縁を切ってきた日……。
さらに同じことが三回あったという事実……。
「なんでッ……普通に友達じゃ……駄目なのかよッ……!」
「僕は!ずっと友達だから!ね!」
「……そうか……」
「冷めちゃうよ」
「そうだな」
すると、いきなり牧田が指を舐め始めた。
「おい!」
「えつにいいらろ」
細い指が、妙になまめかしい舌遣いで、付き物を落とされていく。
彼の美貌がそれを単なる下品な行為に留まらせなかった。
長い舌。そして白く細長い指。
彼の顔つきもだんだん普段のニヤケ面からどこか陶酔した表情に変わっていく。
「やめろ!おい!」
彼はそんなこと聞く耳も持たずそれを続け、さらにはしゃぶり始めた。
それも音を立てて。
一気に下品になってしまったが、しかし先ほどの行為があったのか、その緩急がそれもまた艶めかしい行為に昇華させていた。
何だ!コイツの目的は何だ!
そこで、股間の膨らみに気が付いた。
まさか?嘘だ?
俺は……。
俺は…………。
「う……うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
ドアを開けて逃げ出した。
忠告があったが。
そんなことよりもっと恐ろしい気がしたのだ。
●
「計画通り……」
牧田光は途端に行為をやめ、手をナプキンで拭き始めた。
彼を誘惑し、自分に悶々とした感情を抱かせる。
牧田光は、牧田家の総帥の一人娘に当たる。
だがしかし、時代が進んだ今でさえ女の当主なぞ立てられないほどに、牧田家は巨大すぎた。
それに彼女がそんな大きな存在だったかというと……そんなことはない。分家の者に男はいくらでもいる。ただ、彼女に権力を握らせるチャンスをやったのだ。
彼女に対し牧田家は「最も巨大な男」を探すことを命じた。
そのためには女の前で虚勢を張らせてはならない。
友人として近づかねば、男としての本性はわからない。
生憎彼女は胸はほとんどなく、背は170近くあったため、都合がよかった。
なので彼女は高校三年間だけ男装することになった。
元の性別を知っている人間には、記憶処理を施して。
何にも動じない度胸を持つ男。
しかし彼女の思うような人材はどこにもいやしなかった。
どの者も、似たような家柄に、似たような財力、似たような経営。彼女に見分けはつかなかった。
むしろそこで妥協していた方がよかったのかもしれなかった。
白樺高校に入学した彼女はある日、変わった話を部下から聞いた。
桐野家と許嫁にあり。
謎の存在を影に隠し。
聖護院家を奴隷とする者。
さらにそこには、何のバックボーンも存在しない、その辺の血筋。
……彼女は、その男に会いたいと思った。
なにゆえに、そのようなものを築いているのか?
……そんなこと行うというのは、『人として大きい』のではないのか?
即座に生徒会長となり、彼を呼び寄せた。
期待通りだった。
権力と証拠を突きつけても、彼は一貫して冷静に対処していた。
この男なら、次期総帥になりうるかもしれない。
だが彼女は独自の強硬策を取ろうとしていた。
牧田家の指示してきたのは友人として仲を深め、ある日カミングアウトするというものだが。
彼女の考えたプランはこうである。
①彼を性的に誘惑する。
②悶々とした彼に襲わせる。
③女だとバレる。
④その怒りで無理矢理に犯される。
⑤責任を取らせる。
というものである。
もしかしたら牧田光という人間は、牧田家の人間よりもさらに悪どいのかもしれなかった。
そんなこと考えているためか、彼女は彼に対しどこか愛しい感情を持っていた。
鳥籠の中の鳥。
実験室の中のネズミ。
それに向けられるような、愛情。
「……これで襲ってきてくれるよね?ね、桐野くん❤︎」
彼女はそう倒錯したようにつぶやいた。
そんな彼はというと。
性癖をぶっ壊されていた。
●
あのまま学校を出た。
「おい!戻れ!」
影が激しく揺れる。
「うるさい!」
そして道に出る。
何で俺は……興奮してしまったんだ?
男に。
あのひどい目に遭わされ続けた、あいつらと、同じじゃないか!
まさか……嘘だ……。
あいつ等と付き合うことで、俺もゲイになっていたんだ……。
じゃあ……俺はどこに興奮したんだ?
……指?
ふと通行人の指を見る。
チ●コに見えた。
……嘘だッ!嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ……!
しかし道行く人の指がどんどんチ●コと化していく!
何でみんな、何でみんな……。
手に10本チ●コをぶら下げて歩いてるんだ……?
……きっと俺が正常なんだ。
そう思わないとまともじゃいられない。
瞬間何かが目の前を横切る。
目に入ったチン●コは……。
何個も輪っかを付けられていた……!
「うわあッ!わぁッ……やめろ……やめろ……なんで……なんでそんな……うわぁぁぁぁぁぁぁ!」
意識が飛んでいく気がした。
影がしっかりしろと声を上げたが。
俺にはもう、何も、感じられやしなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます