第五話 調教!お義父さん
《前回までのあらすじ》
おえぇぇぇぇぇ!
六時半に家に着いた。
律儀に玄関には彼女が正座で待っていた。
「よほど嬉しいことがあったのですね」
「あぁ……本当にな」
とっとと風呂に入る。この家の風呂はやたら広い。興味のある人にとっては嬉しいのではなかろうか。生憎俺にとっては風呂なんぞシャワーで済ませるので意味もない。
相変わらずやたら広い食堂での夕食になった。
「フン……」
お義父さんは相変わらずふんぞり返っていた。
食事を口に運びながら考える。
俺は
しかしそのアイテムに何かしら面倒な手順が必要であったりしたら、紫陽花に見つからないよう外で仕込む必要があるだろう。
つまり、単独でいられる時間を増やす……即ち門限をなくさねばならない。
しかしそれを伝えなければならないのがお義父さんだというのが問題だ。
伝えることさえろくにできやしない。
まったくどうしたものか。
「お父様、いい加減真一さんを認める気になりましたか」
「オアー!」
衝撃の発言。
おいおいおいおい。
どうする?どうなる?
「……ならば条件を課そう」
「条件?」
「鈴木真一、明日より貴様に修行と称しあらゆる武道の稽古を桐野家の者からつけさせてもらう。日時は帰宅してすぐの五時から十二時まで、休日は九時から十二時まで。それを三年間続け、私が認めるほど育ったら認めてやろう」
「本当ですか!お父様!」
「オッ……オアァァァァァァァァァァァァァァァ!」
まさかまさかの、計画破綻。
飯が終わって即座に便所に駆け込んだ。
面倒なことになってしまった。
これでは屈服させることなんて出来やしない!
いや条件出してくれたことは優しさではあるんだろうけど!
それでは俺のカス両親も心も報われない!
紫陽花め、余計なことをしやがって!
「外に抜け出すぞ」
影の方から声が聞こえた。
「蛇神か!」
「違う!わしの名は
「忘れられてたら意味ねーよ!」
「あーもうとにかく外に出ろ!」
桐野家の屋敷には裏山がある。無論そこも桐野家の敷地である。
そこのまだ平地であるところに腰掛けた。
「……面倒なことになったのぉ」
蛇神が影から出てきた。
気のせいか昨日よりも姿勢がいい気がした。
「本当にな。こうなったら俺は何もできない」
「五体不満足一本満足、じゃな」
「女をあいつ一人で全部まかなうと?」
「そうせんといけん状態になるじゃろう」
「嫌だ!!!」
「そうか……そんなに嫌か……じゃああの父親と……」
「せめて召使いの人とか言えよ……ん?」
「どうした?」
「今父親と言ったよな」
「なんじゃ、尻の穴を洗浄するのか?」
「いや……違う……もしかしたらいけるかもしれないぞ、これは」
「なんじゃなんじゃそれは!」
★
「……なるほど……悪趣味すぎて気がつかんかったわ」
「仕方がないさ」
「だが……不可能かもしれんぞ。よほど周到な準備が必要とみえる」
「やってやるさ……何だってな」
●●●
深夜一時。
桐野笹由はデスクライトのみを付け、寝室で一人手紙を書いていた。
現在全国各地の支部の視察に赴いている妻、桔梗に向けてのものである。
あの娘が許婚と言い張って聞かない、鈴木真一に試練を課したこと。
それを果たしたら結婚を認めること。
しかし大部分は娘、紫陽花についてのことであった。
彼はこれまでの紫陽花の所行を止めることもできた。しかし彼は止めず、さらに道も示した。
彼はよっぽどの子煩悩だったのだ。
しかし彼は個人的に真一のことを少し見直してもいた。
自分に表立って反抗し、彼女に対してもただ従っているわけでもなく、しっかりと意見する。
こんな訳わかんない状態にあろうと頑張ろうとする根性を、認めていた。
三年といったが二年に減らすことも考えていた。
しかしその威圧感を与える無愛想な態度は、いつか必ず不和を生み出す。
突然扉が勢いよく開かれる。
月明かりに照らされていたのは、例の少年と幼女……鈴木真一と蛇神だった。
●●●
お義父さんの瞳は揺れていた。本当に困惑しているのだろう。
紫陽花はこんな目立つ行動したら飛んでくるんじゃないかと思うだろう。
しかし彼女はいっぺん寝ると全く起きない。
でも夜這いしてやろうとか思わない。喜ぶだけだからだ。
「貴様……何が目的だ……」
「別に殺しにきたとかじゃないですよ。ただ笹由さん、貴方は少し俺の計画の障害になる」
「紫陽花に何をするつもりだ!」
「残念!貴方が今からどうにかなるんですよ」
「な……何だと……男色か!」
「それはさすがにキツいんです。なので」
俺は鎖を取り出した。
鎖を笹由さんに向かって放つ。自動的に鎖が笹由さんを縛る。足先と首以外は動かせない体制になった。
「貴様ァ!」
「『
俺は続いて首輪を取り出した。
「……それで首を絞める魂胆か!」
「殺さないって言ってるじゃないですか。もっといいことですよ。いいこと」
暴れる笹由さんを押さえながら首輪を巻いた。
するとだんだん体中のあらゆる部分が細くなり、逆に尻は大きくなっていき、顔はやがて少女のようになっていった。
「これは……貴様!何をした!」
「そんな可愛い声で吠えないでくださいよ。簡単なことです。この『偏愛の首輪』で貴方の性別を反転させました」
「ふざけるな!」
性転換した笹由さんは少女のような見た目になっていた。娘よりもつり目。全体的に凛としている。変な髪型としか思えなかった一つ結びも可愛らしい。しかし胸は全くなかった。そういえば桔梗さんは巨乳だったな。こいつの遺伝子か。
「へぇ……ぱっと見娘と同い年って言っても通用しますよ。今年でいくつですか?」
「ッ……32……」
「よほど早くにお子さん作ったんですねぇ!いいですよ!若ければ若いほど楽しいってもんです」
「……何を……」
「貴方を快楽で堕とします。なに、ものの数時間で終わりますよ」
「きっ……貴様ァァァ!」
「そんな女騎士みたいにさっきから……もっと可愛く吠えてくださいよ。ねぇ」
俺は花を取り出した。
「なっ……」
「『
「やめっ……んっ……」
「鎖の感覚さえも気持ちよくなってくるでしょう?いっぺん隣のコイツで試してみたら何とは言いませんが、辺りにまきちらして大変でしたよ」
「言うな……」
「さて……俺がこれを行う上で何が一番大変だったと思います?」
「そっ……んなことっ!しるかぁ……」
「YouTubeでの女の悦ばせ方の研究ですよ。コイツで試すの大変だったんですから。元々敏感で」
「もういいじゃろう!」
「はぁっ……はぁっ……」
「もっと楽しみましょうよ。気持ちいいことなんですから……」
「あっ……あっ……あぁぁぁぁ……」
「あひっ……あひぃ……しあわせぇ……」
数時間後。
素っ裸で体中を濡らしながら、昇天した顔でだらしなく仰向けで寝転がる笹由さんがそこにあった。
一言いうと、本番は、していません。
「笹由さん」
「ひゃい……」
「条件、取り消していただけますね……」
「とりけひまひゅ……」
目標達成。
クソ眠いけどね。
そして朝。
いつも通りのただっぴろい食堂の朝食。
「あの……お父様……」
「わかっている。あのようなことをせずと相応しい男かどうかは生活の中でわかろう」
笹由さんは元に戻っている。なぜなら……
「……お父様!」
「やったぁ!」
「フン……」
そんなこんなで二人の共同の部屋にて。
「やりましたよ真一さん!これで二人で遊びに行けます!」
「ははっ、そうだな!」
「……随分と機嫌がよろしいのですね」
「あぁ、本当にな……」
「……ヤクでも決めました……?」
「そーかもなぁ!あははははは!」
「幸せで旦那が壊れた……?」
玄関で紫陽花が途端にトイレに駆け込んでいった。ヨーグルトを一回の食事で一箱食べたからだろう。
彼女がトイレに行っている間、笹由さんと向かい合う。
俺は手元のスイッチを押して性転換させた。
「……すまない、今夜も……」
「えぇ……いいですとも」
着実に、ステージを進めている実感。
今までにない充実感に満たされていた。
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