第47話 突撃!隣の寝室!


拝啓、前世の両親へ。このたびは 幣も取りあへず 手向山 紅葉の錦 神のまにまに 百人一首の有名な詩ですよね。この神のまにまにという言葉、神の思うがままという意味らしいです。

それは果たしてこの世界でも通用するのでしょうか。この世界はマルトレーゼの思うがままかもしれませんね。





              敬具

              フルール・ヤマト・ジャポニカ




 え?鈴?…な、なんで。どうしてこの場にいるの?…まさかカーミンのせいか!!?おい!カーミン!!返事しろ!!


 『………』


 ッ!応答しない。もうこうなったら戦争ですよ。後で問い詰めて、ギタギタに引き裂いてやる!…とりあえずこの場を納めますか。



 「ハロー、鈴華さんあれ?、アストライヤさん?まあいいか。ところであなたにはお姉さんがいるかな?」


 よくよく見たら顔は鈴だけど、まだ同姓同名の他人の可能性が完全に捨てきれないんで、ここは探りを入れます。


 「ッ!姉を知っているのですか!?もしかしてあなたも転移者ですか?」


 転移者?それは分からないけど…後でカーミンを問い詰めればわかるか。


 「そうね、片山家の掟その3!女の子を泣かしていいのは嬉し涙だけ!この言葉で全てが分かるんじゃない?ねえ、鈴」


 「え…お…お姉ちゃん?まさかあなたは片山瑞希ですか!?」


 「正解。お姉ちゃんだよ。久しぶり…かなお姉ちゃんは元気でやってるよ。」


 「お姉ちゃん!!!」


 そう言って鈴は目にも止まらぬ速さで私の胸に抱き着いてきた。その衝撃が強すぎて背中から倒れそうになったがなんとか持ち直した。

鈴の顔は泣きすぎてよくわからないほどグチャグチャになっていた。



 「おうおう、しばらく見ないうちに甘えん坊になっちゃって。まさかこっちの世界にいるとは思わなったよ。」


 「うん、半ばあのくそ女神に騙せれかけたけどなんとかお姉ちゃんに会えたよ」


 「もしかして、くそ女神とやらはマルトレーゼという名前かい?後でお姉ちゃんが文句言っといてやるからね」


 「うん、私も沢山言いたいことあるから。」


 

 「ちょっといい?その人って前にフルールが言っていた前世の妹さん?」


 今まで空気を読んでいたのか、全く会話に混ざってこなかったアメリアが口を開いた。空気になるスキルはメイドには必須スキルだから、ぜひとも欲しいものだ。


 「ええ、そうよ。私の可愛いい可愛い目に入れてもも痛くない、世界で一番可愛い私の妹の鈴華よ!!」


 「どうも、瑞希の前世の妹である片山鈴華です。こっちではアストライヤと名乗っています。」


 「こちらこそ初めまして、フルール…貴女の姉の同僚のアメリアよ。今は作戦中のためAと呼ばれているわ」


 「私はFだよ!鈴。…ハッ!そうだ、お姉ちゃんと一緒の職場で働かない?今なら、第二皇女の地位つきだよ。」


 「ええ(困惑)お姉ちゃん何やったの?」」


 「気に入らない貴族にタイマンしてやばくなったから皇女になった。」


 「…そうだね、お姉ちゃんはこういう人だったね。」


 こういうとはなんじゃい。そこまで私はおかしくない自信があるぞ。


 「流石にそれはひどいわ。妹に嫌われたらお姉ちゃん泣いちゃう。」


 「心配しないでお姉ちゃん!私はお姉ちゃんがどんなことしても嫌わない自信あるから。」


 「それはそうと、さっさとさっきの話に戻りましょう。それで鈴華さん?いえ、アストライヤさん?結局うちの職場に来るのかしら?今なら好待遇って条件はさっきFが話したでしょう。この話のる?」


 「乗るしかないでしょう、このビックウェーブに。この私アストライヤが力になって見せましょう。」


 おお、鈴がいれば百人力じゃあ!


 「うっし!暫定勇者ゲット。」


 「ふえ?暫定勇者?」


 鈴華は、ある出他人事かの様に聞いてきた。


 「あー、いい?鈴、あなたはジャポニカ帝国第二皇女、そして女神マルトレーゼ公認の勇者なの。前にマルトレーゼが教会に対して『神剣を持つ者を遣わせた、その人物をどう扱うかは汝ら次第だと』神託しまして…その剣を持ってるってことは自分で勇者って言ってるようなものなの…」


 「ッスー、一ついいですか?」


 「「どうぞ」」


 「ちょっとシバいても問題ないっすよね?」


 「「大丈夫だ、問題ない」


 あいつは色々とやりすぎた。ここらで一つ制裁が必要なようだな。


 その時、扉の外からカツカツという足音が聞こえた。とっさに私はAと鈴に目配せをして鈴を抱き寄せ、スカートの下から取り出したナイフを鈴の首元に近づけた。扉がギィと開き、外から守衛らしき人物が入ってきた。


 「動くな!貴様ら!そこで何をしている!」


 「おっと、これ以上近づくとこのメイドの命はないぞ。」


 出来るだけ私は声を低くした。さながら悪の組織にのような状況だ。怪しい恰好をした二人組がメイドを人質にしている状況は犯罪以外何物でもないだろう。


 「くっ、貴様ら何が目的だ?」


 「話が早い奴は助かるぞ。こちらの要求はこの場を見逃してくれるだけでいい。そうすればこのメイドの命は助けるし、何より、お前たちがまんまと侵入を許したことがバレないぞ」


 「…卑怯だぞ、あー人質を助けるためなら仕方ないーここは見逃すかあー(棒)」

 

 いや忠誠心低すぎでしょう。それにもうちょい演技上手くしろよ。


 「では、交渉成立だな5秒後このメイドを離す」


 私は小声で鈴に『明日もし来れるなら12~1時の間南区の噴水広場前に集合。もし来れなかったら次の日、1週間以内に子なったら救出に行くから』と伝えた。鈴は守衛には分からないように小さくうなずいた。


 「5、4、3、2、1、ほれ。」


 時間になったら私たちは窓へと一目散に走った。そして窓を開け3階から飛び降りた。この高さなら防御魔法で何とかなる。無事着地した私たちは念のため二手に分かれ、ガブリエル伯爵邸に向かった。ごめんよ鈴、これは戦略的撤退だ。





 次の日、だけど超朝!えー、ただいま午前3:35。むしろ全く寝てません。侵入から帰ってきてカーミンに文句を言おうと思っていたら寝てる始末。ここは突撃!寝起きを突撃!あの人の寝顔を激写せよ!をするしかねぇ。


 では、早速部屋に突撃していきましょう。お邪魔しまーす。お?ぐっすりおねんねしてますね。神だから寝る必要あるの?と思ったそこの君。カーミンはマルトレーゼの分身をこの世界に送ってきていて、人間より少しいい性能しか持ってません。だから堂々と突撃できるのです。


 さあ、ベットわきに移動完了。神様のお目覚めのモーニングコールはもちろんこれ。これ以外ありえない。


 「目を醒ませ僕らの世界は何者かに侵略されてるぞ、これは訓練でもリハーサルでもない」

 

 「私、訓練とかリハーサルってやったことないんですよね。これを機にやってみますかね?」


 「いや急に喋んなよ。なんで寝起きで喋れるんだよ」


 「まあ、貴女が入ってきたときに起きましたし…律儀に待っていた自分を褒めてほしいですね」


 ハイくそ。ドッキリって分かっていたらほぼおままごとじゃん。


 「それはそうとカーミン!いやマルトレーゼ!貴様どういうつもりだ!返答次第ではその首を叩き切るぞ!」


 「いいサプライズだったでしょう。異世界で寂しい思いしてると思って送ったんだよ。もちろん本人の了承は取ったよ。」


 「それでいいと思っているのですか!?いくら本人の了承を取ったとしても限度はあるでしょう。」


 「この世界は私こそが法であるぞ、故に何も問題はぬぁぁぁい!」


 「うるせぇぇぇぇぇ!急に大声で叫ぶな!控えめに言ってクソ以外の言葉が出てこないな。」


 「まあまあ、お使いのご褒美みたいな感覚だったからね。内容は内緒だけどね。」


 一体全体どんな内容なんだ?まあどうせ教えてくれないでしょうけど…


 「そうね、こればっかりは言えないわね。守秘義務ってやつね。まあ、アストライヤが喋りたければ聞いてもいいんじゃない?本人は言うはずはないけど…」


 あとで鈴が来たら聞いてみようか…




 この時、フルールはこの考えを持たなかった方がよかったと、後に語ったという(大嘘)



 ちゃんちゃん


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